「佐川急便で午前中に時間指定配達を頼んでいたのに12時を過ぎても荷物が届かない」との声がSNS上に投稿され、「午前中指定したのが悪い」「今はどこでも遅配する」など、さまざまな反応が寄せられている。ドライバー不足が取り沙汰されて久しいが、現状の物流事情はどうなっているのか。佐川急便に聞いてみると、大きな混乱は起きていないという。
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用された。その結果、一人当たりの労働時間が短くなり、輸送能力が不足し、物流が停滞することが懸念されてきた。これは数年前から「物流の2024年問題」といわれ、多くの分野に甚大な影響が考えられることから、ロボットやAIを使うなど、さまざまな対策が練られてきた。
しかし、状況は改善される気配がみられず、それどころかトラック以外にもタクシーやバスなど、ドライバー不足は加速する傾向にある。
そのため、たびたびネット上には宅配便の荷物が、指定時間通りに配達されない、といった不満の声があがる。特に7月上旬、「佐川急便で午前中指定した荷物が届かないから出かけられない」とSNSに投稿されると、「午前中指定するのが悪い」「置き配にしろ」「宅配ボックスを用意するべき」など、同情するよりも午前中指定した注文者側の非を指摘する向きが少なくなかった。
だが、実際のところ、宅配便は時間指定のとおりに配達できていないのだろうか。今や宅配便の業者はAIと使って最適な配達ルートを導き出したり、不在票を素早く出せるシステムを導入するなど、ドライバーの負担軽減や配達の効率化が図られている。そんな対策によって、ドライバー不足はどの程度までカバーできているのだろうか。
そこでBusiness Journal編集部は、佐川急便広報部に現時点での配送事情を聞いた。
――4月以降、物流業界では残業規制等の影響によりドライバー不足が懸案事項となっておりますが、現時点における貴社の配送状況はいかがでしょうか。
佐川急便「特に問題は生じておりません」
――貴社では置き配が選択できるようになると発表がありましたが、荷受人側でできるドライバーへの負担軽減策はほかにもありますか。
佐川急便「置き配サービスの開始時期は9月2日を予定しております。また、『指定場所配送サービス』は2020年5月より開始しております(https://www2.sagawa-exp.co.jp/newsrelease/detail/2020/0515_1570.html)。
無料会員制Webサービス『スマートクラブ』や『佐川急便LINE公式アカウント』を展開し、お客さまに事前に配達日時をお知らせしたり、ご希望の配達日時をご指定いただける取り組みを通じ、お客さまの利便性向上および従業員の負担低減を目指しています。
お客さまのご要望により営業所でのお荷物の受け取りが可能な“営業所受取サービス”や通販サイトで商品を購入される際に、受取場所を『コンビニ』とご指定いただくと、24時間いつでも・ご希望のコンビニで受け取り可能な“コンビニ受取サービス”も展開しております(コンビニ受取サービスは本サービスを導入している通販サイトのみ対応しております。全国のローソン、ミニストップで受け取りが可能です。一部で対象外や営業時間が短い店舗がございます)。
また、ご自宅やマンションに宅配ボックス(バッグ)を設置いただくことの他に、一度ご不在で受け取れなかったお荷物に関しては、お届け先を当社が指定する受取場所(営業所および、サービスセンター、宅配ロッカー、店頭受取店舗)に変更して、お荷物を受け取りいただくことも可能です」
――配達希望が多く遅配が生じやすい時間帯などはありますか。また、その場合、最大でどのくらいの遅配の可能性があるのでしょうか。
佐川急便「遅配が生じやすい時間帯については特にございませんが、午前中や18時以降の配達を希望されるお客さまが多いです。また、お盆や年末年始などの時期によっては、交通渋滞の影響からお荷物のお届けに遅れが生じる可能性が見込まれることから、日時に余裕を持った出荷にご協力いただいております」
――差し支えなければ、時間指定配達における、時間通りの配達割合(または遅配割合)など、お教えいただけますでしょうか。
佐川急便「恐れ入りますが、回答は差し控えさせていただきます」
現時点では、懸念されていたほど2024年問題の影響は出ていないようだ。これからお盆の時期に突入するわけだが、配達を頼む際は遅れが生じる可能性も念頭に置いておく必要があるといえる。
(文=Business Journal編集部)