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「エアコン設置業者は月収200万円を稼げる」は本当?意外に通年で仕事を獲得

文=Business Journal編集部
エアコン工事
エアコン設置工事(「Getty Images」より)

 個人事業主として活動しているエアコン設置業者が、「月収200万円超を稼いでいる」との情報がある。なかには、「夏場の数カ月の活動で1000万円以上稼いだ」と自慢する向きもある。これらは本当なのだろうか。実際にエアコンの設置をしている業者に、どれほど稼げるのか、聞いた。

 エアコンの取付工事は、一般的に1万円から2万円程度の費用がかかる。家電量販店でエアコンを購入すると、本体代金に加えて取付工事費が別途1万5000円程度かかる。インターネットで検索すると、最安値は6000円から出てくる。価格競争も厳しい世界のように見受けられるが、エアコン設置業者を名乗る人物がSNS上で「月収200万円を超えている」と投稿し、注目を浴びている。

 そこで、現役のエアコン工事業者に、月収200万円は可能なのか話を聞いた。

「個人で、エアコン設置だけで月収200万円は厳しいですね。たとえば、家電量販店などと提携して、毎月一定数の工事を回してもらうことができれば、まったく不可能な数字ではないと思いますが、ネットなどからの申し込みを中心にしていると200万円売り上げるだけでも難しいです。個人事業主ということで、仮に夏場の繁忙期を1カ月休みなしで働いたとして、1日当たり7万円売り上げれば、総売上は200万円を超えます。平均的に、1件当たりの工事費用は1万5000円くらいなので、1日に5件前後で7万円になります。1カ所の工事は1~2時間ですので、1日に5~7件くらいはこなせます」

 個人事業主が、休日返上で働き続ければ、月収200万円は不可能ではなさそうというのが現実的なところのようだ。だが、最近は工事の価格競争が激しいという。

「家電量販店などでは、エアコンを販売する際に、取付工事代金を1万5000円などと初めから設定しているので、購入するお客さんは言い値で払ってくれることがほとんどです。しかし、最近はネットで価格の安い業者を探して注文したり、複数社に相見積もりを取ってから依頼してくるお客さんが増えているので、個人事業主も価格競争に巻き込まれています。そのため、『基本工事料』を下げ、さまざまなオプション価格で工事代金を吊り上げている業者も増えています」

 具体的に、どのようなオプションがあるのだろうか。

「多いのは、室外機を設置する場所による価格設定です。2階以上の部屋にエアコンを設置する場合、『高所取付代』とか『危険場所設置代』などの名目で取り付けることもあります。また、ベランダなどに置くのではなく、天井から吊り下げる場合にも別途費用を取っているケースが多いですね。

 さらに、ホースの長さによって追加料金が発生することも多いのですが、その価格にも差があります。たとえば、一戸建てで2階の部屋にエアコンを設置するケースで、室外機は1階の地面に置きたいというお客さんが多いのですが、ホースが長く必要になるため、その分のホース代がかかります。ほかにも、壁に穴を開ける工事や、ホースに付ける化粧カバーなど、オプションが発生する項目は多岐にわたり、それで1件あたりの工事代を上げようとしている業者は少なくありません」

素人でもエアコン設置工事は可能か

 それらの工事代を浮かすために、自分で設置したいと考える人もいるかもしれないが、エアコンの設置工事は、素人ではできないのだろうか。

「実際に、エアコンを自分で設置しようとして失敗した人から、工事依頼が来ることも多いのですが、素人がするのは難しいですね。最近はYouTubeなどで取り付け方を説明している動画があるので、簡単にできそうに思うのかもしれませんが、失敗する方が非常に多いです。取付工事自体は資格がなくても可能なので、素人でもできると思われがちですが、やめたほうがいいですね」

 素人が工事して失敗するのは、どのようなことがあるのだろうか。

「一番多いのはガス漏れです。エアコンには空気を冷やすための冷媒ガスが充填されているのですが、配管ミスなどでガス漏れが起きやすいんです。引越しの際に、素人が取り外しをした場合にもよくあります。引越し先でエアコンを取り付けようとした際に、ガス漏れしていることに気付く、ということも珍しくありません。引越業者でも、専門知識がないと取り外しの際にガスが漏れていることがあります。

 また、エアコンを取り付ける壁に配管用の穴を開けようとして、壁を損傷したり、柱や筋交いなどを傷つけるケースも見かけます。ほかには、電気配線がわからなくなり、プロに依頼してくるケースもあります。特に電気配線については第2種電気工事士の資格がないと工事ができないので、配線だけは素人がやると危険です。

 エアコン取り付けの際に行う可能性のある配線工事としては、『電線の固定』『コンセントの新設・移設』『電気直結する配線工事』があります。また、エアコンの大きさによっては一般家庭に届いている100Ⅴから200Ⅴに切り替える工事をすることもあります。これらは素人ができないもので、失敗すると事故につながる恐れがあります」

 やはりエアコン設置はプロの業者に頼むべきだと感じるが、エアコン工事の事業者は、平均的にどの程度稼ぐことができるのだろうか。

「設置だけだと、初夏から真夏に依頼が殺到するので、この時期に稼ぐことになります。一般的には、設置以外のサービスも並行して請け負い、年間を通して仕事があるようにしていますね。たとえば、引越しなどに伴う移設工事や、エアコンのクリーニングです。移設工事は年間を通して依頼がありますし、クリーニングは業界としても春や秋に行うことをお勧めしているので、工事と合わせると平均して売り上げを確保することができます。

 一人で事業を行っている方の場合、100~150万円くらいの売上を出せればいいほうではないでしょうか。そこから諸経費を引いて、粗利は半分くらいかと思います。工事に使用する機材が高額なので、その設備費用がかかりますが、一度購入すると日常的にかかる固定経費や消耗材は少ないので、粗利は高めかと思います」

 では、1カ月に200万円、夏場だけで1000万円という数字は、あまり現実的ではないのだろうか。

「ネットに出回っている数字が、売上なのか所得なのかは不明ですが、売上としては不可能ではありません。所得としては、休日返上で朝から深夜まで働いた場合に、なんとか達成できるのではないか、と感じるところです」

 数字だけが一人歩きした感はあるが、まったく不可能ではないものの、現実的はかなり厳しい金額なのかもしれない。

(文=Business Journal編集部)

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