夢のマイホームを建てたはいいものの、実際に住み始めてみると、当初の理想として描いていた間取りやプランとはほど遠かったり、後悔する出来になってしまったりというケースは少なくない。特に「エアコンの隠蔽配管」「ジェットバス」など一見するとスタイリッシュに見える設備・工事は、数年後に後悔する人が多いのだとか。たとえば6月にTwitter(現X)に「かわちゃん@エアコン人間」が投稿した以下のツイートは4500件近くのいいね(7月24日現在)を集めて話題となった。
<さんざん注文住宅の失敗談をお客様から聞かされたので伝えたい。かっこいいけどデメリットも知って欲しいのでつける前に調べて。
「外壁に無垢材」
「西に窓」
「エアコンの隠蔽配管」
「ジェットバス」
「一体型トイレ」
「廊下に窓」
エアコンの隠蔽配管はマジで辞めて!20年後きっと後悔するから>
かわちゃん氏は、埼玉県にある住宅設備会社イナセを経営している人物。TwitterやInstagramで生活に役立つ情報を日々発信しており、総フォロワー数は3万人を超えるインフルエンサーでもある。かわちゃん氏は、上記6点に関して警鐘を鳴らし、特にエアコンの隠蔽配管に関しては「20年後きっと後悔するから」と強いメッセージを発している。このツイートを受け、リプライ欄でも注文住宅に関するさまざまな意見が寄せられていた。
注文住宅は一生の買い物なので、できれば満足いくマイホームに仕上げたい。そこで今回は、かわちゃん氏に上記ツイートで言及されている設備・工事のどこが問題なのかを聞いてみた。
エアコンの「隠蔽配管」は最悪の場合、壁を取り壊さなくてはいけない
まずは「外壁に無垢材」についてだが、そもそも無垢材とはどのような資材で、なぜ外壁に使ってはいけないのか。
「無垢材は、天然の木材のことを指し、木本来のぬくもりを感じられる資材です。木目調の柔らかさ、かつデザイン性の高さから人気を集めていますが、水に濡れてしまうとすぐに変色したり、経年劣化したり、腐食したりしてしまうなどデメリットも多いのです。下手すれば、木が反り返ってしまい、壁から剥がれてしまうことも。基本的には7年ぐらい経過したら、木材の変色が進んでいると思われるので、率先してメンテナンスを行ったほうがいいでしょう。いずれにしても、メンテナンス代が非常に高額になってしまうケースが多いです」(かわちゃん氏)
次に「西に窓」は、なぜ設置してはいけないのか。
「午前中に日の光が入らず、逆に夕方に強い日差しが入ってきてしまうからです。日の光が入ってこないため、自然光を浴びながら起きることができないばかりか、午後は室内の温度が高くなりすぎてとてもじゃないが快適に過ごせなくなってしまいます。夏場はエアコンをガンガンに効かせなくてはいけなくなって、電気代がバカにならないほど跳ね上がるといったことも。窓に発泡スチロールを詰めるなどの対策を施せば、エアコンの効きも格段に上がりますが、そんなことをするぐらいなら、できれば注文時のメーカーとの打ち合わせの段階でナシにしておいたほうがいいでしょう」(同)
続いて、「20年後きっと後悔するから」と警告された「エアコンの隠蔽配管」について。
「エアコンの隠蔽配管とは、室内機と室外機をつなぐ配管を壁の中など建物の内部に埋め込み、外から見えなくするような工事を指します。配管を外に出す露出配管とは異なり、建物の外観を損なわないというメリットがありますが、それ以上にデメリットが多い工事でもあるのです。エアコンで結露が起きてしまった場合は、配管の工事に問題があることが多いのですが、隠蔽配管となるとどこに問題があるのか、見つけ出すのが相当難しい。最悪の場合、壁を取り壊してから修理を施さなければいけないので、より修理費がかさんでしまいます。
また私が『20年後きっと後悔するから』と申し上げたのは、エアコンの買い替え年数が約20年といわれていることに起因しています。隠蔽配管の場合、買い替え時期になると、検討しているエアコンが対応していなかったり、家電量販店のスタッフが工事できなかったりすることが非常に多いです。ですので私としては、なるべく従来どおりの露出配管をおすすめしています」(同)
「一体型トイレ」は故障した際の交換パーツがかなり高額になることも
「ジェットバス」は、泡の刺激が心地よく快適なバスライフを送ることができそうだが、住み始めて汚れが気になる人が少なくないという。
「浴槽の縁がかなり汚れやすいという話をよく聞きます。ジェットバスの配管は汚れがたまりやすい構造になっていることから、湯垢や輪染みが発生しやすくなり、浴槽にこびりついてしまうんです。これがまだ人造大理石の浴槽ならば汚れは落としやすいのですが、FRP浴槽(ガラス繊維強化プラスチック)のようにプラスチック製のものだと、こびりつきやすく少々厄介です。ジェットバスを作った方は10人中8人ぐらいの割合で『シャワーでいいや』となって結局、ジェットバスを使わなくなってしまいます。よほどのお風呂好きで毎日使わない人でないかぎり、ジェットバスはおすすめできませんね」(同)
便器、便座、貯水タンクなどが一体となった「一体型トイレ」も人気だが、どういった部分が後悔するポイントになってくるのか。
「一体型トイレは、見栄えがよく人気のある設備ですが、一部のパーツが壊れてしまうと、まるごと買い替えたほうが手っ取り早いというケースが多いのです。一体型トイレの価格は、12万円から35万円ほどなのですが、壊れたパーツの費用は、ものによっては何十万円もすることも。そうなると、修理するよりも買い替えたほうがいいと考える人が少なくないのです。
また便器と便座を自由に組み合わせることができる組み合わせトイレに比べ、節水効果もあるといわれていますが、実はそこまでの大差はありません。やはりリーズナブルで、故障時のことまで考えると、組み合わせトイレのほうが無難ではないでしょうか」(同)
では最後に「廊下に窓」が避けたほうがいい理由について。
「日の光が入りやすくなってしまうので、室内の温度が上がってしまうのと、室外と室内で温度差が発生してしまい、結露しやすくなってしまうことが難点。また夜間は暗くなりやすく、トイレに行くときなどは注意が必要でしょう。ちなみに天井に窓を付けることも推奨はできません。結露はもちろん、雨のときは雨漏りの可能性もあるので、まわりのクロスが剥がれやすくなります。そして開閉式の天窓の数によって固定資産税も上がってしまうので、そういった意味でも窓を増やすことはおすすめできないです」(同)
何十年という長期的視野を持ち、メンテナンス代が高くなる設備は避ける
さて、ツイートに書かれたポイント以外にも注意すべき設備はあるのだろうか。
「2階建ての物件でよく2階にキッチンやお風呂をつくりたいと希望するお客様がいらっしゃいますが、水漏れの危険性があるので、推奨できませんね。また木製のドアは重いので、経年劣化で歪みやすく、使いづらい。そして地下室を作る場合も注意が必要です。湿気がたまりやすく、カビも発生しやすいだけではなく、地震が起きたときに地下水が漏れ出る可能性もあります」(同)
マイホームは、終の棲家として何十年と住むことを想定していることが多いだろう。失敗なく満足のいく物件を手に入れるために、専門家視点で注意すべきことは何か。
「まず前提として、メンテナンス代が高くつくような設備は極力避けたほうがいいと思います。一例ですが、長期的に考えるとキッチンは手間のかかる木製よりも長く使えるステンレス製にしたほうがいいでしょう。特に共働きのご家庭の場合、毎日掃除することは難しいかもしれませんので、そういった視点は重要です。
また実際に注文住宅に住んでいる友人・知人たちから、情報収集をすることもとても有効だと思います。やはり施工業者からだけでは入手できない情報もありますし、『この提案は業者にどんな反応されますか』といった、経験者ではないとわからない質問もぶつけられます。また、そもそも『どういった業者を選んだらいいのか』といった話題は、業者の方には聞けないですからね」(同)
(取材・文=A4studio、協力=かわちゃん/株式会社イナセ代表取締役)