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大塚商会・サイゼリヤ決算説明資料、無駄なことに労力使わない感は経営的正義

文=Business Journal編集部
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大塚商会のHP上に掲載されている「23年12月期 決算説明資料」

 デザインや説明文章の多さなど各社が決算説明資料の“コンテンツのリッチぶり”を競うなか、大塚商会とサイゼリヤのそれが“まったく凝っておらずシンプルすぎる”として、「金にならないものには絶対経費を使わない」姿勢が感じられると一部SNS上で話題を呼んでいる。両者の決算説明資料をどう評価すべきか。そして、そこから読み取れる両者の経営方針とはどのようなものなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 1961年に複写機の販売などを主要事業として創業された大塚商会は、他社・自社のオフィス向け製品の販売などで成長を続け、2000年に東京証券取引所第1部に上場(現在はプライム市場上場)。2023年12月期の売上高は9774億円、純利益は474億円とともに前期比増収増益で業績は好調。自己資本比率は61.1%と財務体質も健全。正社員数は約9400人(連結/23年12月現在)、本社のほかに全国に計10の支社・支店を展開する大企業だ。

 現在の事業別売上高はSI関連商品が全体のうち59%、サプライが19%、保守等が17%、受託ソフト等が6%。自社の主力サービスとしては事業売上2000億円規模の、オフィス用品の通販サービス「たのめーる」がある。複合機や回線・ネットワークの導入、システム構築などオフィスに必要なIT・システム構築を一括で請け負える点を強みとする。 

 1973年に創業のイタリアンレストランチェーン・サイゼリヤは、圧倒的な低価格をウリに店舗網を拡大させ、大塚商会と同じく2000年に東証1部に上場(現在はプライム市場上場)。現在は国内に1055店舗、海外に485店舗(2023年8月期)を展開。300円(税込み/以下同)の「辛味チキン」や「ミラノ風ドリア」、400円の「ミートソースボロニア風」、200円の「フレッシュワイン(デカンタ250ml)」などが人気メニューとなっている。23年8月期連結決算は売上高が1832億円、純利益が52億円。営業利益ベースでは国内事業は赤字だが、好調なアジア事業の黒字がそれをカバーしている。純利益は前期比8.9%減となっているものの、売上高は増収、客数・客単価も伸びており、自己資本比率は63.5%と経営は安定しているといえる。

「パワポ綺麗に仕上げた所で1円にもならないという心意気」

 そんな両者のHP上に掲載されている決算説明資料が「古いフォーマット感がすごい」「パワポで綺麗に仕上げた所で1円にもならないという心意気」「『金にならないものには絶対経費を使わない』精神」「金かかるかからないじゃなくて『必要十分なパワポ』」「色合いが懐かしい」などと一部SNS上で話題を呼んでいる。

 まず、大塚商会の「23年12月期 決算説明資料」をみてみると、全体的なデザイン、色使い、文字フォントは一昔前のものという印象が強く、実際にテンプレートは20年12月期のものをそのまま流用しているとみられる。「今後について」の「スローガン」には「お客様に寄り添い、DXでお客様と共に成長する」と書かれているが、20年12月期資料の「今後の計画」の「2021年の方針と施策」にも「DXとドキュメントソリューションでお客様に寄り添い、お客様と共に成長する」と同じような表現がみられる。このほか、「オフィスまるごと大塚商会」など、20年12月期資料とほぼ同じ内容のスライドが使用されているページもある。

 また、サイゼリヤの「23年8月期 決算説明資料」も白地に緑と黒という非常に素っ気ないデザインで、ひたすら財務・経営データが羅列されている。16年8月期の資料のテンプレートがそのまま流用されているようで、「今後の取り組み」にいたっては、わずか1ページに「既存店対策(設備改善、店舗組織作り)」「店舗の作業改善(デジタル化による省人化)」「新たなフォーマット作りの継続」といった短い文章が箇条書きで並んでいるのみだ。

 メガバンク系のファンドマネージャーはいう。

「一見すると手抜きかと思われるが、最低限必要なことは書かれている。金融商品取引法で提出が義務付けられている有価証券報告書などとは異なり、決算説明資料は法律で作成が義務付けられているものでもないので、どの程度力を入れるのかは各企業の判断に委ねられている。

 両者に共通しているのは、主要株主が創業家もしくはその関連企業で、あとは安定株主である大手金融機関という点。株主構成も本業も安定しているので資本面の懸念は低い。また、サイゼリヤの顧客はレストランを利用してくれる個人客であり、低価格かつ高いクオリティの料理を提供することをウリにしているので、その実現や店舗オペレーションの効率化などには経営リソースを割く必要がある一方、いくら決算資料の充実に力を注いでも、その労力とコストに見合うリターンはない。大塚商会についても、顧客である中小企業との関係強化や自社サービスの開発、人材教育などへの投資には意味があるが、決算資料をブラッシュアップしたところで意味がないし、業績への影響があるとも思えず、無駄ともいえる。よって、両者が決算資料に労力を割かないというのは経営的には正しいということになる」

(文=Business Journal編集部)

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