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小ブームの「サイゼリヤで一人飲み」をやってみたら天国だった…やや難点も

取材・文=文月/A4studio、協力=重盛高雄/フードアナリスト
小ブームの「サイゼリヤで一人飲み」をやってみたら天国だった…やや難点もの画像1
贅沢に「サイゼリヤ」のイタリアンを独り占め

 ファミレスのなかでもひときわ人気が高いイタリアンチェーンの「サイゼリヤ」で現在、一人飲みをする人が増えているという。「サイゼリヤでお酒を飲む?」と思う人もいるかもしれないが、利用者によればサイゼリヤの料理、お酒は安いけれど満足できるクオリティであり、コストパフォーマンス最強だというのだ。実際、SNSではイタリアンをつまみにワインやビールを嗜む投稿がしばしば見受けられる。普段サイゼリヤを利用しない人や複数人で訪れることが当たり前の人にとっては、一人飲みはハードルが高そうだが、実際に体験してみるとどうなのか。今回は筆者がサイゼリヤで一人飲みを体験し、レポートしていきたい。

 サイゼリヤは、ピザ、パスタはもちろん、生ハム、チキンなどのライトミールや、サラダ、デザートといった豊富なメニューをリーズナブルな価格で楽しめる「安くてウマい」チェーンとして支持を集めるファミレスだ。友人や家族連れで訪れたことがある人も多いだろう。

 コロナ禍による外出制限や営業自粛で打撃を受けたサイゼリヤだが、2023年8月期の決算では、前年同期比で売上高が27%増の約1832億円、営業利益が約17倍の約72億円にも及ぶV字回復を見せた。しかし国内では、物価高や為替変動の影響で約15億円の赤字を計上しており、課題が残る結果に。これを受けて、今後も低価格路線を保てるのか、疑問の声も少なくはない。

 そんなサイゼリヤで一人飲みする客が増えている背景について、フードアナリスト・重盛高雄氏に解説してもらった。

※以下、商品の価格はすべて税込表記

酒は種類豊富 しょっぱい、油っぽいものを注文

 今回訪れた店舗は「サイゼリヤ イトーヨーカドー国領店」。京王線国領駅から徒歩5分ほどの場所にあるイトーヨーカドー国領店の3階にある店舗だ(価格やメニュー内容は店舗・時期によって異なる)。

 はじめに飲み物を注文していこう。ドリンクメニューには、キリンの「一番搾り(グラスビール)」(300円、税込。以下同)、「氷結シチリア産レモン」(350円)をはじめ、グラスワイン(100円)、デカンタ(200円)といったワインのラインナップが並ぶ。特にグラスワインの100円という安さに驚く。そして、ボトルワインは全6種類と気合を感じられる充実ぶりであり、そのほとんどが1100円という安さであることも特徴だ。白、赤はもちろん、甘口から辛口までさまざまな嗜好に合わせたボトルワインが常備されているので、酒好きにとってはたまらないだろう。今回は一番搾りとグラスワイン(赤)を注文。なお1~2時間ほどワインをちびちび飲みながら晩酌したい人ならば、ぜひボトルワインを試してみることをおすすめする。

 次に料理だが、お酒のあてということもあって塩気があり、油っぽいメニューをチョイス。「生ハム(ハモン・セラーノ)」(320円)、「柔らか青豆の温サラダ」(200円)、「辛味チキン」(300円)、「ポップコーンシュリンプ」(300円)、「ソーセージピザ」(400円)の5品を肴とさせてもらった。並べてみるとかなり壮観で期待が高まる。果たしてお酒との相性はいかに……。

一人飲みするには十分なメニューラインナップ

 ワインは、特有の渋みと鼻を突き抜ける香りが心地よく、飲みやすい仕上がり。若干香りが薄く感じたものの、100円で飲めるのであれば申し分ないクオリティだった。

 ほんのり肉の厚みを感じられる薄さにカットされた生ハムは、ソフトな口当たりで舌触りもなめらか。サイゼリヤでは、熟成期間が9カ月と短めで軽い食感の生ハムを採用しているため、食感がよく非常に食べやすかった。味はやや強めに塩気を感じ、ワインとぴったりよく合う。オリーブオイルを回しがけすると、フレッシュな口当たりに変化するので、より肉の旨みを堪能できた。

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甘味のある青豆と卵とチーズのコクがよい

 柔らか青豆の温サラダは、豆にくさみや苦みはなく、甘味としっかりと味わえる仕上がり。そしてペコリーノチーズと半熟卵が絡むことで、塩気とコクのあるバランスの取れた味を楽しめる。豆の食感も噛めばプチッとはじける絶妙なゆで具合であり、たまらなかった。

 続く辛味チキンは、一口食べるとジューシーな肉汁がジュワっと口の中に広がり、ワインとの相性は抜群。ほんのり辛さがピリッとくるが、刺激自体はあくまで優しめで子どもでも食べられそうな味わいだった。また噛むと肉がすっとほぐれ、食べやすかったので、手軽に味わえる晩酌のお供としては最適かもしれない。

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プリッとしたエビの食感がたまらない
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店内調味料はオリーブオイル、ホットソース、塩、こしょうが置いてある

 小さめのエビフライが数本入ったポップコーンシュリンプは、揚げたての衣のサクッとした食感がクセになる逸品。ほどよい酸味が効いたサイゼリヤドレッシングにディップすることで、まろやかな辛みかつコクの感じられる味わいに変化。店内にある「ホットソース」をかけるとさらに刺激的な辛みが楽しめ、お酒が進むのでおすすめである。

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ジャンク感、ボリューム感よしのピザ!

 最後のソーセージピザだが、とろりと伸びる濃厚なチーズと薄くカットされたソーセージの旨みがガツンとくる味わいで美味。トマトペーストは薄めで、トマト自体の味が微妙だったのは残念だったが、肉々しいジャンクなピザを食べたい人にはもってこいの一品だと感じた。何よりこのクオリティを400円という価格で提供できる、コストパフォーマンスの高さには感嘆するばかりだ。

 気になる総額だがお会計は2020円という破格の安さ。これだけの量を頼んでこの安さなので、同じぐらいのボリュームを頼むのならば、普通の居酒屋に行くよりも安く済むと感じた。サイゼリヤのメニューは、一品一品のボリュームがそこまでないので、ちびちび飲みながら食べるには十分だと思われる。それこそボトルワインを頼んで、料理を少しずつ嗜む、といったスタイルだと長い時間一人飲みを堪能できそうだ。

 そして居心地についてだが、時間帯と案内される席によって、かなりの好みが分かれそうだ。今回は夕方17時頃に入店し、ボックス席に案内されたが、そこまで混雑しておらず、一人飲みをしていても特に周りに見られている感覚はなかった。だがピーク時となる18~20時の間になるとより客は増えるだろうし、周囲の目も気になるかもしれない。またサイゼリヤには、1~2人用の座席がない店舗もあるので、筆者のようにボックス席を一人で過ごすこととなると、気恥ずかしく感じる人もいるだろう。

 感想としては、一人飲みするには十分なお酒と料理のラインナップが揃っており、価格も安いのでリピートしたくなる気持ちもわかる、といったところだ。時間帯や席にも左右されるものの、総合的な満足度では下手な居酒屋よりも断然高かった印象だ。

一人客を呼び込んで客数・客単価アップが狙い?

 サイゼリヤの一人飲み客は増えているのだろうか。重盛氏はいう。

「たしかに増えてきた印象はありますね。サイゼリヤはメニューが安く、一人飲みをしたとしても1回のお会計が1500~2000円ほどとコスパよく飲めるのが利点なので、気軽に来店しやすいのでしょう。おまけにすべてのメニューは、キリのいい価格に設定されているので1円玉、5円玉を出さずに会計しやすいというメリットまであります。客層は家族連れや学生だけでなく、仕事終わりの男性や二人連れの女性など、意外と幅広いです」(重盛氏)

 サイゼリヤはコロナ禍による業績悪化を踏まえ、一人客を呼び込もうとする戦略に舵を切っているという。

「ファミリーや友人連れといった従来のターゲット層を、一人客にまで広げることで客数と客単価を上げようとしている狙いがうかがえます。そして、一人客に来てもらうために、サイゼリヤ自慢の低価格イタリアンのみならず、プラスアルファでお酒を提供することで、来店動機を作っているのでしょう。店舗でも、一人、ないしは二人用席も用意するところが増えていき、少ない人数でも利用してもらえるように配慮しているのだと考えられます。

 またサイゼリヤのメニューは、老若男女さまざまな客が食べやすいものが並んでいますよね。おつまみというよりも一料理として客に提供できるという特徴は、やはりファミレスならではのパフォーマンスの高さなので、居酒屋と競合できるだけのポテンシャルもあるでしょう」(同)

 ちなみにサイゼリヤには、一部店舗の限定としてメニュー表にはないワインを多く取りそろえているところも存在し、ワイン好きの舌をうならせているという。気になる方は、店舗まで問い合わせてみるべし。

 では最後に重盛氏にサイゼリヤで一人飲みをする際のアドバイスを聞いてみた。

「ピザ類は全般的にクオリティが高く、一人でも簡単に完食できるボリュームとなっています。まずは基本メニューの『マルゲリータピザ』(400円)を試してみてはいかがでしょうか? そして箸休めにサラダ類もおすすめ。サイゼリヤでは、自社農場で野菜を栽培しており、フレッシュな生野菜を楽しむことができるんです。バッファローモッツァレラ、ルーコラが入った『モッツァレラのサラダ』(400円)に生ハムを巻いて食べてみると美味しいです。値段が安い分、さまざまなメニューを頼んだり、アレンジしたりできるので、一人飲みをする際に頭に入れておくと素敵な晩酌ができるでしょう」(同)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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