ある飲食店で、スマホからリクルートIDでログインして注文する方式を採用しており、それがとても面倒くさかった、とお客がSNS上で不満を漏らしたところ、同調する意見が続出。今や“終わった方式”と話題になっている。
最近、人件費や設備投資費の削減のため、お客が自らのスマートフォンを用いて注文する方式を採用する飲食店が増えている。注文を取るスタッフの労力を減らし、タッチパネルなどの設備を導入する経費を削減できる一方、自らのスマホを使用することに抵抗があるお客も一定数いるため、客離れのリスクもはらんでいる手法といえる。
そんなスマホ注文で、さらにリクルートIDを使用してログインすることを求める店舗があると話題になっている。
「先日行ったお店、スマホからリクルートIDでログインしてメニュー注文とか終わった方式を採用しており、余りにもめんどくさかったので店員さんに『口頭注文出来ますか????』と尋ねて押し通った」
これは10月16日に投稿されたが、翌17日までに20万回読まれるほど瞬く間にX上で広まった。さらに続けて、こう投稿する。
「これはカスハラではないと自信を持って言えるけど、いずれこの感覚と世間とのズレが看過出来なくなるレベルで大きくなるタイミングが来るというの、怖過ぎる」
「そもそも紙のものと比べて画面小さいし、一覧性も無いし、悪いことづくめですよね。合計金額を参照しやすい程度しか利点が無いというか……」
リクルートIDでスマホ注文、店には便利で客には不便?
リクルートIDは、リクルートグループが提供する、旅行、美容、グルメ、通販、住まいから結婚準備などさまざまなオンラインサービスで利用できる会員IDで、メールアドレスを登録IDとする。衣食住に幅広く使えるIDで、リクルートポイントを貯めることができるが、その一方で「じゃらん」「ホットペッパーグルメ」「ホットペッパービューティー」「ゼクシィ内祝い」「リクルートカード」などオンラインに限定され、実店舗で使うには利用範囲は狭く、不便さが伴う。
リクルートIDでスマホ注文できるのは、「Airペイオンライン」に加入している店舗だけだ。Airペイはリクルートが提供している、さまざまな決済をiPadまたはiPhoneとカードリーダー1台で決済できるサービス。オダギリジョーが出演するテレビCMで一気に知名度を高めた。高額なレジやキャッシュレス決済システムを導入しなくとも済み、決済手数料が低額で月額固定費や振込手数料が無料なため、個人店などで導入が進んでいる。
省力化や低コスト化など、店側の負担軽減につながるものの、スマホ注文は客にとっては面倒だ。メニューを選び注文する前に、スマホを立ち上げなければならないという一手間は、客にとっては再訪のハードルを高める一因だ。さらに、特定のIDなどでログインさせる行為は、不満の種となりうる。実際に、「LINEでお友達登録して注文…とかいうやつだけでだいぶ厳しい気持ちになるというのに、リクルートIDからは流石に…」と、リクルートIDでログインさせる店など行きたくない、といった声が少なくない。
さらに、「これはセキュリティ的にめちゃくちゃ良くないな。 悪意のある客が盗聴WiFiと詐欺サイトのQRコードを設置すれば、リクルートID盗み放題になってしまう」と、セキュリティ上も問題があるとの指摘もある。
リクルートIDを持っていない人や、持っていても長らく使用していないなどでIDやパスワードを覚えていない人も少なくないと思われ、その場合はログインしなくても注文できる方法を店側は用意しているはずだが、それでもログインすることが原則となっている店舗は、再訪したくないと感じる人が多いのではないだろうか。そのようなマイナスを払拭するほどの味、おもてなし、珍しさ、安さなどの魅力があれば、リピーターはつくかもしれないが、相当厳しい印象を持たれることは覚悟すべきだろう。
(文=Business Journal編集部)