顧客満足度調査を実施する株式会社oricon MEが行った、クレジットカードの満足度ランキングが話題を呼んでいる。ランキングで総合1位となったのは「楽天カード」だったが、2位につけたのは「エポスカード」、そして3位につけたのが「リクルートカード」だった。楽天カードはよく知られているが、エポスカードとリクルートカードは、楽天カードには認知度が及ばない印象があったためか、注目が集まっている。
そこで今回は、なぜ今、エポスカードとリクルートカードが人気を集めているのかについて、業界動向に詳しいトータルマネーコンサルタントの新井智美氏に話を聞いた。
“楽天経済圏”に取り込む戦略で不動の1位を築く「楽天カード」
今回の満足度ランキングで1位だった楽天カードへの高い満足度の秘密について教えてもらおう。
「これは、近年人気のカードに共通する部分ですが、基本的に満18歳以上の高校生以外の方であれば申し込めるので、誰でも利用しやすいという点でしょう。あとは、2枚目のカードがつくれるという特徴もあります。例えば、同じ楽天カードでVISAとJCBというように、国際ブランドを分けてカードが持てるわけです。同じカードでポイントを貯めながら国際ブランドを使い分けできるのは利用者にとっては嬉しい特徴でしょう」(新井氏)
oricon MEの調査によると楽天カードは、「主婦・主夫」部門、「シニア」部門のランキングでも1位を記録していた。こうした層に受けているのはなぜなのか。
「家庭のことに専念している主婦(主夫)の方々は無収入というケースも多いですが、楽天カードの申込条件は、先ほどお伝えしたとおり“満18歳以上の高校生以外の方”ということくらいなので、無収入でも配偶者に収入があれば審査が通りやすいといった点は大きいでしょう。また、いわゆる“楽天経済圏”で広く活用できるので、ポイントがたまりやすいというのも人気の秘密ですね。
この楽天経済圏についてもう少し加えるなら、楽天証券を利用する人がシニア層を含めて増えてきているという要素も関係しているでしょう。投資信託を月々一定額ずつ積立てる投信積立が近年人気ですが、これらの引き落としにも楽天カードが利用できます。さらに積立額に楽天ポイントを利用できる点もメリットと感じる方は多いでしょうから、やはり金融分野をおさえているのは大きいと思います」(同)
クールなデザインとキャッシュレスの波をつかんだ「エポスカード」
そんな王者の楽天カードに迫る勢いで2位につけたのがエポスカードだ。この順位を獲得したのはどのような理由なのだろう。
「エポスカードは丸井グループの関連会社エポスカードが発行しているクレジットカードで、VISAの加盟店であればどこでも使えます。エポスカードは一言でいうなら“若者に人気があるカード”。楽天カードのように、審査基準が“日本国内在住の満18歳以上の方”となっているので、クレカデビューをしたい学生たちに人気がある印象です。
そして、自社アプリの『EPOS PAY』はもちろんのこと、『Apple Pay』や『PayPay』『モバイルSuica』といった決済アプリとの連携が強く、カードを登録するだけでスマホ会計ができるのも若者に受けている部分でしょう。
また、エポスカードはデザインがクールな印象がありますね。余計なロゴや文字を省いたシンプルなデザインで、マットかつメタリックなカラーリングが印象的です。その形状も、2020年ごろから流行り始めた“縦向きデザイン”を採用しており、インパクトがあります。加えて、横向きデザインのカード限定にはなりますが、人気漫画『ちいかわ』やゲーム『モンスターハンター』などがデザインされたカードも多く、これも若者を惹きつけている要因でしょう」(同)
エポスカードは大型商業チェーンの「マルイ」で買い物をしてもポイントが貯まるのも魅力だ。
「マルイでのショッピングにおけるポイント付与は、店頭決済に限らずネット通販にも対応しています。ですから店舗が近くにない人でもサービスを受けられますし、配送料が0円になるのも魅力的ですね」(同)
“常時1.2%”の高い還元率で躍進を見せた「リクルートカード」
続いて、3位のリクルートカードの人気の秘密について解説してもらおう。
「リクルートカードは、リクルートホールディングスが2013年にJCB・三菱UFJニコスと提携したことで誕生したクレジットカードです。リクルートカードの最大の特徴は、なんといっても常時1.2%という高い還元率でしょう。最大値でいえば『JCB W』など10%の還元率を持つカードはありますが、常時これだけもらえるのはリクルートカードだけですので、断トツに高い数値だと思います。
高い還元率が実現できる理由を推測するに、関連会社の利益がかなり高いことが関係しているかもしれません。旅行情報サイトの『じゃらんnet』や、ネット予約可能店舗数でNo.1を誇る『ホットペッパーグルメ』『ホットペッパービューティー』といった予約サイトは、多くの方が利用していますよね。その恩恵がカード事業に降りてきていることが予想されます。
これらのサイトとの連携も密で、リクルートカードで『ホットペッパーグルメ』を利用すれば最大1.2%、『ホットペッパービューティー』では最大3.2%のポイントが還元されます。『じゃらんnet』も同じく3.2%のポイントが還元されますし、オンラインショッピングサイトの『ポンパレモール』の場合は、カード決済で最大4.2%のポイントが還元されます」(同)
またリクルートカードは、エポスカードと同じく決済アプリとの連携が強いのも特徴。「PayPay」や「d払い」といった決済アプリに加え、「モバイルSuica」などの電子マネーにチャージしたときも、1.2%のポイント還元が適用されるという。
「キャッシュレスの時代に突入したことで、今までクレジットカードをつくっていなかった層もつくり始めたのが、これらのカード躍進の理由とも考えられます。キャッシュレス決済が増え、決済アプリとの連携が強いエポスカードやリクルートカードが伸びるのは自然な流れかもしれません。
決済アプリやネットショッピングとの連携が強いというのは、エポスカードやリクルートカードを筆頭に、昨今のクレジットカード業界全体で顕著になってきた傾向ですね。今後は実店舗でのサービスがメインのカードは徐々に廃れていくかもしれません」(同)
時代の流れをキャッチしたものが制する、クレカ競争の今後とは?
最後に、今後のクレカの人気度ランキングはどう変化をしていくのかについて聞いた。
「私が独自に調べているクレジットカード業界の顧客満足度指数のリストがあるのですが、これで見ると楽天カードは13年連続でNo.1を獲得しているので、今後もこの牙城は堅いでしょう。エポスカードとリクルートカードも、キャッシュレス文化の流れが続く限り、比較的上位に食い込み続けるのではないでしょうか」(同)
新井氏はこのほかにも、メガバンクの三井住友フィナンシャルグループの子会社が出している三井住友カードなどが、高いセキュリティ性を誇る業界初のナンバーレスカードとして、その地位を高めるだろうと予測する。果たして、令和時代のクレカ戦国時代の行く末はどうなるのか、今後も注視していきたい。
(文=A4studio)