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コミックシーモア、初公表の売上高「812億円」が驚異的…巧みな有料戦略

文=Business Journal編集部
コミックシーモア
コミックシーモア公式サイトより

 コミックシーモアが初めて売上高を公表した。2024年3月期は812億円で、部門として11期連続の増収増益を継続中だという。なぜこれほどまでに高い収益を維持できるのか。他の電子コミックと何が違うのか。業界関係者の分析によって紐解いてみよう。

「コミックシーモア」を運営するNTTソルマーレは今年9月、電子書籍事業の決算を初めて公表した。シーモアはこれまで、業界内でも高いシェアを誇り、ユーザー数も最大級に多いことが知られていたが、経営の詳細については明かしてこなかった。だが、公開されたところによると、2024年3月期の売上高は812億円に上り、部門として11期連続で増収増益を継続しているという。

 シーモアは、他社発行の漫画を中心として、ライトノベル、小説など140万冊以上の作品を配信する電子書籍配信サイト。調査会社のニールセンが今年6月に公表した調査結果によると、モバイル機器を使った日本の電子コミックサービス利用者数は、「ピッコマ」と「LINEマンガ」の韓国系サービスが1位、2位で、日本のサービスでは「コミックシーモア」「めちゃコミック」がその後に続くが、「めちゃコミック」は10月に米投資会社に買収されており、日本企業はやや元気がないように受け止められてきた。そんななかで、シーモアの驚異的な売上高が判明し、驚きが広がっている。

 NTTソルマーレはNTT西日本の100%子会社で、スマートフォン、PC、タブレット向けに電子書籍や海外向け恋愛ゲームなどのコンテンツを配信している。2004年にiモード向けコミック配信サービスとして始まった「コミックi」がシーモアの前身となった。

コミックシーモアの巧みな読者獲得戦略

「コミック業界は漫画の発行部数が1995年をピークに右肩下がりとなりましたが、2014年頃から急速に電子コミックの売り上げが伸び始めました。そして2019年には紙媒体の売り上げを上回り、コロナ禍の巣ごもり需要もあってか電子コミックが急成長し、2023年には売り上げが紙媒体の2倍にまで伸びました。

 そのなかでももっとも成長したのはシーモアです。出版社が提供する『少年ジャンプ+(集英社)』『マガポケ(講談社)』『マンガワン(小学館)』といったサービスも一定の成長をみせていますが、シーモアや『LINEマンガ』『ピッコマ』などの電子書店型サービスは、幅広い作品が読めることから、課金するユーザーが多いと考えられます。

 また、『シーモア』『ピッコマ』『ebookjapan』『めちゃコミック』などはウェブブラウザでも作品を読めるところがポイントです。読者の多くはスマートフォンのアプリを経由していますが、パソコンの大きい画面で作品を読みたいというニーズも一定程度あります。電子書店型サービスとしては他に、『楽天ブックス』や『kindle』『DMM.com』などがありますが、コミック特化サービスとしてはシーモアがもっとも高いシェアを誇っています。

 ある調査によると、これらの競合サービスのなかでもシーモアはユーザー数がもっとも多く、男女比では女性のほうがやや多く、40代以下の若い世代が多い傾向があることがわかっています。

 シーモアとめちゃコミックは若い世代が多いのですが、両者に共通するのは無料で読める漫画の多さです。特にめちゃコミックは無料で読める作品の数が桁違いの多く、課金せずに読みたい層が集まっている印象です。一方で、入り口として無料漫画を提供しつつ、巧みに有料サービスに誘導しているのがシーモアです。なかでも『読み放題』のサービスが秀逸で、一部のジャンルが読み放題になる『読み放題ライト』が月額780円(税込み、以下同)、全ジャンルが読み放題になる『読み放題フル』が月額1480円で、無料作品を読んだ読者が『つい課金してしまう』というケースが多いようです。試し読みも他サービスが1話単位だったり、話の途中で途切れてしまうのに対し、シーモアは1巻単位で読めるケースが多く、読者の満足度は高い傾向にあります。

 そんな巧みな運営戦略が功を奏し、課金する利用客をうまく獲得できているといえます」(漫画編集者)

 シーモアが急成長した2020~2024年には俳優・竹内涼真と中条あやみのコンビがテレビCMに出演しており、好感度の高い2人が若い世代を引き付けた効果もあるといわれている。ちなみに現在は俳優・小芝風花、声優・木村昴、タレント・澤部佑(ハライチ)が出演している。

 不法に漫画をインターネット上に公開しているサイトも少なからずあるが、それらはいずれ淘汰され、漫画は“無料で読むもの”ではなく、“一定の対価を支払って読むもの”との認識が定着していくはずである。その時、覇権を握っているのは、どのサービスだろうか。

(文=Business Journal編集部)

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