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楽天、AIで店舗の客離れの兆候を検知し改善提案…誰でも簡単に複雑な予測

2025.05.11 2025.05.11 13:43 企業
楽天ペイメントは「楽天ペイにおけるAI活用 勉強会」を実施した。写真は「楽天のAI基礎知識と楽天ペイにおけるAI活用」を説明する楽天ペイメント株式会社執行役員プロダクト開発本部副本部長坂本和彌氏。写真は広報提供
楽天ペイメントは「楽天ペイにおけるAI活用 勉強会」を実施した。写真は「楽天のAI基礎知識と楽天ペイにおけるAI活用」を説明する楽天ペイメント株式会社執行役員プロダクト開発本部副本部長坂本和彌氏。写真は広報提供

●この記事のポイント
・楽天ペイメント、AI活用で月間600時間の作業時間を削減し、複雑な予測が誰でも簡単に利用できることで、関連企業に対して提案の質が向上
・顧客の離反の兆候となる行動を発見し、願客への調査結果を機械学習で解析することによって、離反を防ぐために改善を提案
・消費者の心理や次の行動などをAIが予測し、一歩進んだ情報を提供

「楽天ポイント」や「楽天ペイ」などを提供する楽天ペイメントが、AIを本格的に活用して成果をあげている。単純な指示文でデータ抽出ができる環境を整備して月間600時間の作業時間を削減し、AIにより複雑な予測が誰でも簡単に利用できることで、関連企業に対して提案の質が向上し、既存以外の手法でもアプローチできるようになった。また、AIが来店周期や来店曜日、購入行動や、加工食品、酒、果物・鮮魚の購入金額の減少による生活習慣の変化などを察知し、離反の兆候となる行動を発見。願客への調査結果を機械学習で解析することによって、満足度への影響や離反確率への関係性を把握し、願客の満足度改善と離反原因を明確化。願客の離反を防ぐために改善の提案をすることができるという。

●目次

楽天の各種サービスで取得したデータをAIに活用

「楽天ペイにおけるAI活用 勉強会」という説明会を実施。楽天ペイメントにおけるAIの活用事例の紹介や「楽天ポイントカード」を導入する関連企業とのAIを利用した取り組み、マーケティングの進化などについて解説した。

 楽天ペイメントは、楽天グループの共有ポイントシステム「楽天ポイント」や、「楽天キャッシュ」「楽天Edy(エディ)」といった電子マネー、スマホ決済の「楽天ペイ」などを消費者向けに提供している。楽天ペイメントが属する楽天グループは70以上のサービスを展開しており、主軸のECサイト「楽天市場」、携帯電話販売の「楽天モバイル」、保険販売の「楽天生命」など、オンラインだけでなくオフラインにも幅広いサービス網を持つ。その楽天グループのサービス網で取得した、願客の商品購入やサービス利用時の心理、趣味嗜好といった数多くのデータが、楽天グループおよび楽天ペイメントのAI活用における大きなアドバンテージになっているという。

楽天グループは70以上のサービスを展開しており、そこから得たビッグデータをAIに活用できることを強みとしている。画像は当日配布された資料より
楽天グループは70以上のサービスを展開しており、そこから得たビッグデータをAIに活用できることを強みとしている。画像は当日配布された資料より

 楽天グループは70以上のサービスを展開しており、そこから得たビッグデータをAIに活用できることを強みとしている。画像は当日配布された資料より

AIで消費者心理を読み取り行動を予知

 AIを活用することで消費者心理を先読みし、より適した情報を提供できるようになるという。例えば、とある場所で激辛ラーメンを食べ、楽天ペイで代金を支払ったユーザーが居るとする。従来のサービスでは「激辛好きのユーザー」と判断され、似たような激辛の食事を提案することができた。しかし、ここでAIを活用すると「辛い物を食べたあとに甘いものを食べたくなる」という消費者の心理や次の行動などをAIが予測し、消費者に対して近所のスイーツ店の情報やクーポンなど、一歩進んだ情報を提供することができるとしている。

AIを使い位置や行動、購買データなどから消費者の次の行動を予測し、多くの情報を消費者に提供できるようになるという。画像は当日配布された資料より
AIを使い位置や行動、購買データなどから消費者の次の行動を予測し、多くの情報を消費者に提供できるようになるという。画像は当日配布された資料より

AIと選任のアナリストの併用で消費者の行動を分析

 楽天ペイメントのAI×データ活用による願客アプローチの一例として「データ分析における時間短縮」「複雑な分析を容易に実現」「結果から最適解を導出」の3つを挙げた。データの抽出や分析は、従来であれば専任のアナリストやデータエンジニアが必要になる。そこにAIを活用することによって、誰でも単純な指示文でデータ抽出ができる環境を整備できたとしている。それにより月間600時間の作業時間を削減でき、関連企業への対応スピードも速くなったという。また、AIにより複雑な予測が誰でも簡単に利用できるため、関連企業に対して提案の質が向上し既存以外の手法でもアプローチできることで、新たに可能性が広がったという。さらに、人間の直感に依存せずデータにより客観的な意思決定が可能となり、結果に影響する要因や、要因ごとの影響度を把握できるようになったとしている。AIの導入によりデータの抽出や分析は誰でもできるようになったが、専任のアナリストやデータエンジニアは引き続き配置しており、AIと併用する体制を整えているという。

楽天グループのAI×データ活用による願客アプローチの一例として、「データ分析における時間短縮」「複雑な分析を容易に実現」「結果から最適解を導出」の3つを挙げた。画像は当日配布された資料より
楽天グループのAI×データ活用による願客アプローチの一例として、「データ分析における時間短縮」「複雑な分析を容易に実現」「結果から最適解を導出」の3つを挙げた。画像は当日配布された資料より

AIで離反の動きを予測し客離れを防ぐ

 説明会では楽天ペイメントがAIを使った具体的な事例として「ロイヤルカスタマーの離反防止」と「願客解像度の向上」を紹介した。マーケティングにおいて、特にスーパーやドラッグストアといった小売店では、上位20%のロイヤルカスタマー(「企業に対して愛着をもっている顧客」「商品・サービスを長期的に利用してくれる顧客」「企業やブランドに信頼を寄せている願客」を表す)が、売上構成比の80%を占める状況を指す「20:80の法則」という考え方がある。そのロイヤルカスタマーの約半数が、翌年に購入金額が10%以上に下がる、または来店しなくなる傾向を示すデータがあり、その離反を防ぐのが小売店にとって課題になるという。そこで楽天ペイメントは、関連企業のID-POSや楽天グループで収集した消費者の購買データを元に、AIが未来3カ月間の「離反スコア」を算出。そのスコアを元に願客を区分し、ID-POSや願客調査(リサーチ)で、離反した原因を探るという。AIは来店周期や来店曜日、購入行動や、加工食品、酒、果物・鮮魚の購入金額の増減による顧客の生活習慣の変化などを察知し、離反の兆候となる行動を発見するとしている。また、願客への調査結果を機械学習で解析することによって、満足度への影響や離反確率への関係性を把握し、願客の満足度改善と離反原因を明確化しているという。関連企業に対しては願客の離反を防ぐために販促や店舗の品揃え、棚割りの変更による願客へのアピール、設備やサービスの改善などを提案することができるという。

 楽天ポイントカードを利用しない願客の行動を、AIと店舗データと活用して推論する活用も始めている。楽天ペイメントは楽天ペイやポイントカードを利用したユーザーのデータは豊富にあるが、それらを利用しない願客は一定層おり、願客全体の傾向が掴みづらかったという。ポイントカードを利用するユーザーが7割であったとしても、AIでポイントカード非利用者のデータを補完することによって、9割程度の願客を想定し意思決定ができることを強みとしている。

(文=田代祥吾/フリーランスライター)

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田代祥吾/フリーランスライター

田代祥吾/フリーランスライター

パソコンやスマートフォンを中心としたデジタルガジェット系ライター。雑誌「日経PC21」やWebサイト「日経クロステック」などでHowTo記事やレビュー記事、生成AI紹介記事などを主に執筆。最近はカメラマンとしても活動中
田代祥吾の公式サイト

Twitter:@ShougoTashiro