ビジネスジャーナル > 企業ニュース > インタビューニュース > AI時代にリアルな出会いが勝つ理由

AI時代に“リアルな出会い”が勝つ理由…IVS AIで実感する、未来を創る「偶発性」

2025.06.30 2025.06.30 15:22 企業

AI時代にリアルな出会いが勝つ理由…IVS AIで実感する、未来を創る「偶発性」の画像1

●この記事のポイント
7月2日に開幕する「IVS2025」において、「AI」は大きな注目テーマとなっている。「IVS AI」ステージの共同ディレクターである國本知里氏は、AIを単なる技術としてではなく、「文化」として社会に定着しつつあると語る。同じく共同ディレクターの金子晋輔氏は、IVSはAIの目が届かない情報が得られる場所であると強調する。

 オンラインで何でも手に入る時代に、なぜ多くのビジネスパーソンが京都を目指すのか――。今年も京都で開催される国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS」。今年の目玉のひとつである「7つのテーマゾーン」。そのなかの「IVS AI」の仕掛け人たちが語るのは、AIが文化となり、そして「リアルな出会い」こそが未来を切り拓く鍵となるという、衝撃の事実だ。

 あらゆる業界がAIと交わり始めている今、その最前線で何が議論され、何が生まれようとしているのか──。今年の「IVS AI」ステージの共同ディレクターの國本知里氏(Cynthialy CEO)と、金子晋輔氏(法律事務所Verse弁護士)に話を聞いた。

目次

AIは進化を越えて「文化」になりつつある

 國本氏はこれまで7年以上にわたりAI領域に関わり、自らもAIを活用したワークトランスフォーメーションの実現を掲げる起業家として活躍してきた。「すべての女性がAIを使いこなせる社会」を目指す活動など、多様な分野でAIの普及に貢献している。

 そんな國本氏が語るのは、単なる技術としてのAIではなく、「文化」として社会に定着しつつあるAIの存在だ。

「昨年のIVS2024で『Generative AI 起業家ピッチ』というLaunchpadの裏イベントをやったのですが、立ち見が出るほど盛況でした。当時は日本では話題の“端っこ”にあった生成AIが、今ではあらゆる業界と結びつき始めている。その変化の速さを肌で感じています」

AI時代にリアルな出会いが勝つ理由…IVS AIで実感する、未来を創る「偶発性」の画像2

 今回の「IVS AI」ステージでは、新たに「NEOCREA(ネオクリエ)」というAIクリエイティブコンテストを開催。動画・画像・音声などの生成AIによる作品を募集し、トップAIクリエイターが、一堂に会する試みだ。

「日本は“アニメ大国”とも言われるほど、もともと優れた創作力を持っています。今や、AIというツールが一人一人に“武器”として与えられ、趣味レベルからプロフェッショナルまで一気に裾野が広がっている。そうしたAIクリエイターたちが産業と出会う場を作りたいと思ったんです」

法と創造性の“交差点”としてのIVS AI

AI時代にリアルな出会いが勝つ理由…IVS AIで実感する、未来を創る「偶発性」の画像3

 このネオクリエの背景には、AIの進化だけでなく、それを支える制度や社会的土壌の未整備という課題もある。そこに切り込むのが、弁護士として長年テクノロジーと法律の交差点に立ち続けてきた金子晋輔氏だ。

「生成AIの普及には、法制度の整備が必須です。著作権やデータ使用など、これまでの法律では対応できない問題が次々に生まれている。IVSでは、AI推進法などAI政策をリードする議員や法律家のセッションや、「人間中心のAI」の社会実装に関する博報堂のCAIO(最高AI責任者)やAIスタートアップGaudiyを招いたセッションなど、AIのグローバル展開に伴うおける法規制や戦略を議論するセッションを行います」

 金子氏自身、シリコンバレーのテック企業を支援してきた経験を持ち、日本のAIスタートアップがグローバルに挑戦するための法的・戦略的な視点を発信している。

 今回のIVS AIは、単なる技術イベントではなく、出会いとコラボレーションを促進する“仕掛け”が随所に張り巡らされている。そこには、AIの裾野が広がる今だからこそ必要な「多様性」への配慮がある。

「“平日に京都まで来て良かった”と思える体験を用意したい。AIビジネスの第一線にいる人はもちろん、これからキャリアや起業を考えている人にも次に繋がるヒントが得られる場にしたい」(金子氏)

 ペルソナ設定も非常に幅広い。エンタープライズ企業のAI担当者、AIスタートアップの起業家、ジェンダーや地域を超えてAIでキャリアを切り拓こうとする個人、そして資金提供者や大企業の新規事業担当まで、多様な参加者が交わる設計だ。

 さらに、グローバルAIハッカソン、「京都×AI」をテーマにしたAIスタートアップのピッチ登壇者との交流セッションなど、偶発的な出会いを“必然”に変えるための設計も進化している。

「生成AI時代の差別化」は“リアルな出会い”にある

 生成AIによって、あらゆる情報がオンラインで即座に取得可能になった時代。──いや、だからこそ、リアルな場での出会いや会話には、計り知れない価値があると國本氏は言う。

「生成AIで得られるのは“公開情報”ばかり。でも起業やスタートアップのリアルな失敗談、M&Aの裏話なんて、ネットには出てこない。つまり、AIの目が届かない情報です。IVSにはそれがあるんです。目の前の人から生で聞ける情報こそ、生成AI時代の差別化になると思っています」

 IVSには、普段は登壇しないような専門家や、企業に所属しない個人のキープレイヤーが数多く集まっているという。しかも彼らの多くが「話しかければ話してくれる」フラットな空気が流れている。

 金子氏がIVSに期待するのは、“次の世代を担う人材”がロールモデルを見つける場となることだ。

「スタートアップの成功者たちも、かつては誰かを真似るところから始まっています。IVSで、本気で起業を考えている人が“あの人のようになりたい”という出会いを得られたら、それがエコシステムとして最高の成果です」

 その背景には、金子氏自身が学生時代に運営に参加していたビジコンで出会った仲間たちが、今や日本を代表する起業家になっているという実体験がある。「その場にいれば、それが起こることを知っている。でも、いなければ想像すらできない」と彼は語る。

AIスタートアップのM&A戦略も明らかに

 今年のIVS AIでは、成長と出口戦略のリアルにもフォーカスする。金子氏は、AIスタートアップのバイアウトやグロース支援をテーマにしたM&Aセッションにも力を入れている。

「DeNAやみずほ、KDDIなど大企業が“グループインしてほしいAIスタートアップ”を語るセッションもあります。また、グロース投資を受けたAIスタートアップの当事者が語るセッションもあります。IPOだけでなくM&Aも積極的な選択肢に入っている時代であり、多くの起業家に様々な可能性を知ってほしい。こうした情報はなかなか表に出ないけれど、まさに今、動きが加速している領域なんです」

 1〜2年で急成長し、次のステージへ進むAIスタートアップが次々に現れている今、日本発のAIプロダクトがグローバルで勝つための“座組み”や“仕掛け”を、IVSで先取りすることができる。

「IVSは“お祭り”です。立場関係なくフラットになれる場。だからこそ、会いたかった人と出会えるし、新しい挑戦が生まれる。そういう“嗅覚の良い人”たちに集まってほしい」(金子氏)

 國本氏も続ける。

「地方にある大手製造業と、東京のAIスタートアップがここで出会って、現実的なコラボが生まれることも多い。スタートアップだけのイベントではない、企業の人たちにとっても“偶然の出会い”が価値を生むんです。AIに少しでも関心があるなら、IVSに来ないのは本当にもったいない。東京のイベントにはない“偶発性”や“濃度”がここにはある。しかも、それは今年しか体験できないかもしれない。ぜひ自分なりの目的を持って参加してほしい」(國本氏)

 リアルで人と会い、語り合い、未来のヒントを持ち帰る──。生成AI全盛時代において、それこそが最大の差別化となる。2025年の夏、京都IVSは“未来を加速させる出会い”を待っている。

(構成=UNICORN JOURNAL編集部)