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Gemini 3は“GPT一強”を崩すのか…AI競争は“知能”から“体験”へ移行か

2025.11.24 2025.11.23 23:44 企業

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●この記事のポイント
・グーグルのGemini 3が登場し、UI生成やグーグルアプリ連携による“体験の豊かさ”が高い評価を得ている。GPTと異なる方向性で、AIが生活や仕事の流れを自動化する新時代を切り開きつつある。
・Gemini 3は、写真・カード型UI・表などを自動レイアウトし、アプリ生成まで行う点が特徴。エージェントとして自律的にタスクを進める能力が強化され、GPTとは異なる価値を提供している。
・専門家は「Gemini 3は性能競争から体験競争への転換点」と分析。GPTが知能で優位を保つ一方、Geminiは日常と業務に深く溶け込むAIとして存在感を高め、LLM競争の構図を変えつつある。

 生成AIの開発競争が今年、また大きく揺れた。グーグルが新モデル「Gemini 3」をリリースすると、世界中のユーザーがSNSや評価サイトで「GPTより使いやすい」「Atlasより自然なブラウジング体験」といった声をあげはじめた。

 今回の注目ポイントは、従来の“性能比較”だけではない。「実際に使うと、生活と仕事の体験がどう変わるか」という観点で、明確な“質の違い”が発生しているのだ。

 グーグルはGemini 3を発表すると同時に、検索サービスのAIモードへの本格導入を開始。検索とAIを統合したこの動きは、グーグルにとっても初の本気の布陣であり、OpenAIがAtlasで目指す“新ブラウザ体験”へのカウンターとして極めて象徴的だ。

 では、本当にGemini 3はGPT一強を崩し得るのか。実際に使った専門家の体験・分析を軸に、UI、エージェント性、Google連携、競争環境への影響まで立体的に分析する。

●目次

“AIがUIを作る”という新しい体験

 最も大きな進化とされるのが、Gemini 3のビジュアル生成能力である。従来のLLMがどれほど高性能でも「テキスト中心」だったのに対し、Gemini 3は、プロンプトを受けると 写真、カード型UI、表、機能モジュール、簡易アプリ、説明文 などを自動レイアウトし、まるでウェブページのように整った画面を生成する。

 具体的には、ユーザーが「旅行の計画を作って」と入力するだけで、地図、スケジュール、チェックリスト、ホテル候補のカード、予算表といった“旅行アプリ”さながらのレイアウトが自動生成される。ユーザーは生成されたUI上で、項目をタップして編集したり、カードを入れ替えたりできる。

「AIと話す」のではなく「AIと画面を共同編集する」感覚が、これまでのLLMにはなかったユーザビリティの高さを生んでいる。

 実際のレビューでも、「文章ではなくUIが出てくるAIは初めて」「AIが欲しいアプリをその場で作ってくれる」といった声が多い。

 Gemini 3のユーザビリティを評価する論調は、この“体験の質の違い”に起因する。

自律的にコーディングし、アプリ構築まで代行

 Gemini 3では、エージェント(自律AI)としての完成度も大幅に高まった。ユーザーの意図を理解し、必要なUIを設計し、コードを書き、アプリとして機能させるところまでを一気通貫で行う。

 たとえば「家計簿アプリを作って」と入力すると、Gemini 3は自動的に以下を実行する。

 ・入力フォームのUIを生成
 ・データベース構造を設計
 ・グラフ表示部分のコードを生成
 ・レポートページを生成
 ・アプリの外観調整
 ・必要に応じてファイルをパッケージ化

 これはGPTのCode Interpreterが得意とする領域に近いが、Gemini 3はUI設計+コード生成+アプリ構築をセットで行う点が特徴だ。

 ChatGPT Atlasとの違い
 Atlas:ウェブ操作・情報収集の自動化に強い
 Gemini:アプリ生成・ワークフロー自動化に強い
両者の領域は重なるようで重ならず、競争の軸が分かれつつある。

グーグルアプリ連携が“異次元の自然さ”

 グーグルアプリとの連携は、Gemini 3の大きなアドバンテージである。アプリ間のデータが統合されているため、ユーザーが設定をしなくてもAIが勝手に作業を進められる。

 連携できる主な領域は以下の通り。

Googleカレンダー:予定の自動整理、移動提案、最適化
Gmail:メールの優先整理、返信文案、スレッドの要約
Drive:レポート・表の生成、共有設定
Maps:移動時間の自動加味、最短ルート提案
予約処理:チケット・ホテル予約メールを読み取って手続き代行

 実際の体験はどうか。たとえば、飛行機のEチケットメールが届くと、Gemini 3は即座に次のように提案する。

「当日の空港までの移動時間をカレンダーに反映しました。会議の前後の移動も含めて最適化します。前泊される場合は、このホテルが安く評価も高いです。予約しましょうか?」

 もはや秘書やアシスタントAIの域を越えている。ビジネスユーザーからも、「会議資料を自動で作り始める」「メールの整理が格段に早くなった」「月次レポートのテンプレを毎月自動生成」といった声があがっている。

 グーグルが持つ“生活と仕事を同じアプリに載せる”エコシステムが、AI連携によって初めて本格的に機能し始めたといえる。

Gemini 3は何を変えるのか

 生成AIの研究も行うITジャーナリスト・小平貴裕氏は、Gemini 3の登場をこう分析する。

「Gemini 3は“言語モデルの勝負”ではなく、“ユーザー体験の勝負”に軸足を移した最初のモデルです。性能だけで比較しても意味がなくなります。重要なのは、AIがユーザーの環境全体を理解し、そこで必要なUIを構築する“場の生成力”です。これができるようになると、AIは単なるチャットツールではなく、“生活OS”“仕事OS”そのものになります。

 GPTの論理性・生成力が依然トップなのは確かですが、体験設計の主導権はGoogleが取りつつある。AI競争の次の焦点は、知能の高さではなく“どれだけ生活に自然に溶け込めるか”です」

 専門家の見立ても、今回の競争が“性能比較の時代”から“体験比較の時代”に変わったことを示している。

GPTとの本質的な違い…“知能” vs “体験”

●GPTの強み
 ・論理的説明の正確さ
 ・長文生成
 ・安定した対話
 ・企業向け管理機能(ChatGPT Enterprise)
 ・モデルとしての汎用性の高さ
 AIを“知識ワーカー”として使うなら、いまもGPTが最もバランス良い。

●Gemini 3の強み
 ・UI生成
 ・アプリ生成
 ・グーグルアプリ連携
 ・エージェント自律性
 ・“触って使う”インターフェース
 AIを“生活・仕事の自動化エージェント”として使うなら、Geminiは圧倒的に強い。

 結局のところ、両者の違いは、
 GPT=頭脳の強さ
 Gemini=体験の豊かさ
と整理できる。

 ユーザーは今後、「どのAIが賢いか」ではなく、「どのAIが自分の生活に合うか」で選ぶことになるだろう。

Gemini 3は本当にGPT一強を崩すのか?

(1)グーグル検索にAIを組み込んだのは“ゲームチェンジ”

 検索という巨大な日常領域への導入は、ユーザー接点の争いにおいて極めて強い。Atlasが「AIをブラウザにする」発想だとすれば、グーグルは「ブラウザにAIを注入する」逆アプローチを取った。

 一般消費者の入り口としてはグーグルのほうが圧倒的だ。

(2)“AIがUIを作る”というジャンルを切り開いた

 アプリを生成するAIは、企業・消費者双方に新市場を生む可能性がある。特に企業内アプリの生成自動化は、SaaSに代わる潮流となりうる。

(3)それでもGPTの総合力は依然として高い

・知識量
・論理的生成
・文章品質
・モデルのスケール
・エンタープライズ管理機能
 これらではGPTが依然として強い。しかし、実際に使ったときの“体験の差”ではGeminiが一歩進んだ領域も多い。

AI競争の主戦場は“性能”から“体験”へ

 Gemini 3は、GPTに対抗する単なる“新モデル”ではない。UI生成、アプリ生成、グーグル連携によって、AIを“場を作る存在”に変えつつある。

 OpenAIはAtlasで“ウェブの自動化”を進め、グーグルはGeminiで“生活と仕事の自動化”を進める。両者は同じAIモデル競争の中で、違う場所を目指し始めている。

 AIはこれから、知識を答えるツール → 生活と仕事を構築するパートナー
へと進化する。

 Gemini 3はその大きな転換点を示したといえる。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)