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【freeeに学ぶ】AI時代の競争優位を生む「生きたナレッジ基盤」の作り方

2025.11.28 2025.11.28 16:01 企業

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創業期のスタートアップにとって、事業の成長速度は生命線だ。

しかし、スピード優先で場当たり的に導入されたツールが、数年後に組織の成長を阻害する原因になり得るケースは少なくない。 さらに、AI活用が企業の競争力を左右する現代において、整理されていない情報(ナレッジ)は、AIの能力を最大限に引き出す上での”最大の足かせ”となる。

そんななか、2022年以降の入社者が7割を超える急拡大の渦中で「情報の海」に溺れる危機を経験したfreeeが、パートナーとして選んだのがアトラシアンだ。同社はいかにして「情報の海」を脱し、AI時代の競争力となるナレッジ基盤を再構築したのか。

フリー株式会社 Culture&IT Produce本部 Culture部 部長 稲村 陽氏と、アトラシアン株式会社 マーケティングマネージャー 新村 剛史氏の対談から、後悔しないツール選定の実践的なヒントと、AIのポテンシャルを最大限に引き出すナレッジ基盤の重要性を探る。

freeeを襲った「情報の海」と「3ヶ月の限界」

──まずはじめに、急成長スタートアップが共通して直面する「情報共有」の課題についてお聞かせください。

新村 スタートアップは急成長に伴い、人と情報が爆発的に増加します。

まず、個人が管理できる情報量の限界を超え、ナレッジの管理体制が追いつかなくなる。さらにリモートワークではコミュニケーションが希薄になり、情報の流通も滞りがちです。

また、多くの企業がAI活用を試みていますが、情報に「コンテキスト(文脈)」がないとAIは効果的に機能しません。ナレッジマネジメントの不備そのものが、AI活用の最大の障壁になっているケースが多く見られます。

──freee社でも、2022年以降に入社した社員が70%以上と、急激な組織拡大を経験されています。当時、具体的にどのような課題意識を持っていましたか。

稲村 まさに「成長痛」と呼ぶのが相応しい状況でした。私自身も2022年の4月入社ですが、その時から比べても、すでに何倍もの社員がいる状況です。文字通り「情報の海に溺れる」といったことが、社内のそこかしこで起こっていました。

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2022年以降の入社者が7割を超え、「情報の海」に直面したfreee社の急激な組織拡大を示すグラフ

「情報がどこにあるか分からない」「誰に聞けばいいか分からない」状態が日常茶飯事で、資料が見つからずゼロから作り直す「車輪の再発明」も課題となっていました。

このまま組織拡大に比例して、こうした「検索コスト」や「問題解決コスト」が増え続ければ、事業スピードそのものを毀損してしまう。そこに強い危機感を抱いていましたね。

──そうした課題に対して、当初はどのような対応をされたのですか。

稲村  まず「誰に何を聞いたらいいか分からない」という声に応えるため、「askAny」と名付けたバックオフィスへの社内問い合わせを集約する窓口を構築しました。

スピードを最優先し、問い合わせ窓口は社内コミュニケーションツール、寄せられたQ&Aはクラウド上の管理シートに蓄積する形で、既存のツールで運用をスタートしました。

しかし、クラウド上の管理シートの情報はあくまでチーム内部向けのナレッジに留まり、社員がそれを見て自己解決するものではありません。そこで本来目指していた「ナレッジの全社活用」を実現するためにも、わずか3ヶ月ほどで本格的なツール導入の検討へと舵を切りました。

目先の利便性より「将来の拡張性」を選んだ理由

──情報基盤を再構築するにあたり、選定基準とアトラシアン製品を選んだ背景をお聞かせください。

稲村  選定基準は、当時の課題でもあった「問い合わせのスマートな処理」と「ナレッジの蓄積・活用」を両立できることでした。

その基準を満たす製品を探す中でアトラシアンに決めた理由は、大きく2点です。1つ目が「初期投資を抑えたスモールスタート」が可能なこと。2つ目が「将来の事業成長に対応できる拡張性(スケーラビリティ)」です。

まず「スモールスタート」についてですが、Jira Service Managementは、対応するメンバー(エージェント)にのみライセンス費用が発生し、質問する側の大多数の従業員は無料で利用できます。これにより、初期コストを抑えた立ち上げが可能でした。またConfluenceとの連携でナレッジを蓄積し、質問前に参考記事やマニュアルがヒットすることで、自己解決を促せる点もセットで魅力的でした。

次に「拡張性」ですが、従来の社内SNS対応では、やり取りがその場限りの情報として流れてしまい、ナレッジとして蓄積されませんでした。一方、アトラシアン製品で「チケット化」することで、Q&Aや作業履歴がすべて「データベース」として蓄積されます。

この「蓄積されたデータ」こそが、将来的な集計・分析・改善を可能にし、スケーラビリティの核になると判断しました。同時にこれが将来のAI活用に向けた基盤になったと言えます。

――アトラシアン製品は「エンジニア向け」という印象を持つ人も少なくありません。実際に導入した際の反応はいかがでしたか。

稲村 正直、私も導入当初は「多機能すぎて分かりにくい」「なんとなく武骨に感じる」といった印象を抱いていました。しかし、実際に使ってみて実感したのは、個々の機能の使いやすさ以上に、プロダクト間の「連携・統合」が非常に優れている点です。

例えば、チケット管理(Jira Service Management)、プロジェクト管理(Jira)、ナレッジ管理(Confluence)が、まるで「あたかも一つのツールのように」シームレスに利用できる。この思想は、freeeがビジョンとして掲げる「統合型経営プラットフォーム」とも強く親和性を感じました。

──個々の機能より、ツール間の「連携思想」も決め手になったと。アトラシアンの製品群は、どのような思想でこうしたニーズに応えられるよう設計されているのでしょうか。

新村 アトラシアン製品の根本思想は、「チームの力を最大化する」ことです。

単なるプロジェクトや部門レベルでの最適化ではなく、企業全体を一つの大きなチームとして捉える。それによりチームのパフォーマンスを引き出すことに重きを置いています。

具体的には、Jiraが「タスクや業務プロセス」を管理し、Confluenceが「ナレッジの管理・共有」を担います。これらのツールはチームのメンバーの役割を問わず、組織全体の仕事を効率化することができます。 加えて、特定の業務に特化したツールも提供しています。

先ほど言及していただいたJira Service Managementは、まさに依頼や問い合わせ業務に特化して効率化を実現するものです。 これらJira、Confluence、そしてJira Service Managementのようなツール群が連携して機能することで、情報がサイロ化せず、組織全体の生産性を引き上げていきます。

またAIが真価を発揮するには単なる情報(データ)ではなく「文脈(コンテキスト)」が必要ですが、我々の製品は「誰が」「どの組織で」「何の業務(Jira)」に関連して「どんな知識(Confluence)」を残したかを自動的に紐づけます。 これにより、AIの力を最大化する「生きたナレッジ基盤」の構築を実現できます。

さらに数名から数万名規模まで対応し、企業の成長に合わせて機能を追加できるスケーラビリティも特徴の一つです。

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Atlassian Cloud Platformで展開される各領域の製品

「askAnyモデル」の確立と全社展開の裏側

──実際に導入されて、どのような実感や効果がありましたか。

稲村 Jira Service ManagementとConfluenceを組み合わせた「askAny」の進化版を2023年5月頃に始動しました。実践したのは、問い合わせをチケット化してナレッジを蓄積し、社員がそれを見て「自己解決」できるモデルの構築です。

その成果は、明確にデータとして表れました。導入後、「ナレッジの閲覧件数」が右肩上がりに増加し、それに反比例して「実際の問い合わせ件数」が減少したのです。

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JSM(Jira Service Management)導入によりナレッジ閲覧数(青)が増加し、問い合わせ件数(オレンジ・赤)が減少した「askAnyモデル」の成果

ナレッジ閲覧数の増加に伴い、自己解決率が高まり、問い合わせ(チケット数)が減ったことが証明できました。この成功体験が社内に広がり、セキュリティチームや経理、法務など他部門もアトラシアン製品を使いたいというリクエストをくれるようになり、活用が本格化していきました。

新村 自己解決が進んで、問い合わせが減る。この具体的な成功体験があったからこそ、他のチームも「自分たちもやろう」と自律的に動き出したわけですね。

稲村 ええ。その成功体験を全社的なものにするため、経営陣のコミットメントも後押しになりました。2024年7月からの全社年間OKRに、キーワードとして「ナレッジマネジメント」が入り、「人が対応するaskの半減」「車輪の再発明ゼロ」などの目標が経営メッセージとして掲げられたのです。

新村 なるほど。今度はボトムアップの成功事例を、OKRによる仕組みで全社にスケールさせようとしたと。

稲村 おっしゃる通りです。OKR設定後も、基本操作の説明会やオンボーディングといった地道な活用推進を継続しましたが、とはいえ全社OKRに入っても皆がすぐに使うわけではありません。

やはり、使うことで「どう便利になるか」という体験を共有することが重要でした。そこで同時に、Confluenceに蓄積されたナレッジを社内のAIチャットボットが読み取り回答する仕組みを構築し、「使えば使うほどAIが賢くなり、自分たちも便利になる」という直接的なメリットを社員に分かりやすく提供しました。

この施策が活用を大きく後押しし、今ではAIチャットbotが月1万件の質問に対応。「人対応の質問半減」という全社OKRの目標も無事達成できました。さらにAIチャットbotという「現場が喜ぶ分かりやすいメリット」を、Confluenceというナレッジ基盤で両立することができました。

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ConfluenceのナレッジをAIチャットボット「わカルさんbot」が学習し、社員の自己解決を促す仕組みの全体イメージ

新村 私たちが多くのお客様を見てきた中で実感するのは、「ツールの導入はあくまでスタート地点に過ぎない」点です。

導入がうまくいかないケースは、経営陣からのトップダウンな「べき論」に終始して現場が疲弊するか、逆に現場の「草の根活動」に留まって全社的な成果にならないか、どちらかに偏りがちです。

freeeさんが見事なのは、OKRという「経営と現場をつなぐ目標」を示しつつ、AIチャットbotという「現場のメリット」を明確に提示し、そのサイクルを回せる仕組みを設計した点です。 

そして何より重要なのは、稲村さんのチームが、ツールを入れて終わりではなく、現場に伴走し続けたこと。ツールの使い方を教えるだけでなく、「どう活用すれば業務の成果に還元されるか」までを一緒に考え、そのノウハウを全社に広げていった。 

その「仕組み」と「伴走」の両輪があったからこそ、ツールが単なる道具から、組織の「生きた資産」へと進化したのだと強く感じます。

AI時代の競争優位は「生きたナレッジ」にあり

──今後のAI活用も見据えて、freeeとしてはどのような展望を描いていますか。

稲村  今できたのはマニュアルなどの「形式知」の基盤です。次の一手は、ハイパフォーマーのスキルやベストプラクティスといった「暗黙知」を形式知化し、より社員の成長や顧客貢献につなげることです。

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稲村氏が今後の展望として語った、マニュアルなどの「形式知」に加え、ハイパフォーマーのスキルなど「暗黙知」を資産化する重要性を示す概念図

またここでもAIの活用が不可欠です。私たちが今アトラシアン製品で構築した基盤は、まさにそのスタートラインだと考えています。 今までは人の手でナレッジを蓄積していましたが、これからは JiraやConfluenceの上で仕事をする中で自然とナレッジが蓄積され、AIが最適なプラクティスを提案してくれる。

そんな世界の実現にチャレンジしたいですし、アトラシアン製品がその中核としてさらに進化していくことを期待しています。

新村 ありがとうございます。私たちが掲げる「System of Work(システム・オブ・ワーク)」の考え方は、まさにその文脈を生み出すためのものです。

これは、エンジニアもビジネスサイドも、組織内の全員が同じプラットフォーム上で協働し、組織全体のパフォーマンスを最大化する。つまりテクノロジー主導の組織がどのように働くべきかを示す、我々の製品設計の哲学(フィロソフィー)そのものです。

私たちは、単なるツールの提供者ではありません。お客様がAIを活用し、その企業にしかない「暗黙知」を「本物の競争力」に変えていくための、生きたナレッジの基盤(統合プラットフォーム)として進化し続けます。

──最後にお二人から、読者へのメッセージをお願いします。

稲村 基盤作りは、「プロダクト開発」や「販売」といった直接的な領域に比べ、投資として後回しになりがちです。しかし、AIによって投資効果が非常に高まっている今、ここが最もレバレッジが効く部分です。

AI時代だからこそ、ChatGPTのような汎用AIでは生み出せない「自社独自のナレッジ」こそが、唯一無二の競争優位の源泉になります。

ナレッジの蓄積→活用→メンテナンスというサイクルの構築は早ければ早いほど良い。まずはスモールスタートで基盤づくりから着手し、そこから次の一手を考えることをお勧めします。

新村 おっしゃる通り、最初はコストと感じるかもしれません。しかし、これは明らかに未来への投資であり、AIが当たり前になる社会では必要不可欠なプラットフォームです。

アトラシアンでは、スモールチーム向けの無償のライセンスも提供しています。いきなり大きな投資をしなくても、まずスモールスタートで成功体験を積み、徐々に広げることもできます。

将来、組織が拡大した時に膨大なコストで情報を整理し直すことにならないためにも、ぜひ今から試していただけると嬉しく思います。

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※本稿はPR記事です

BusinessJournal編集部

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