約200名がビーチクリーンに参加…世界3億DLのゲーム『Sky 星を紡ぐ子どもたち』が示す、ファンコミュニティを巻き込むESG活動のカタチ

●この記事のポイント
世界3億DLのゲーム『Sky 星を紡ぐ子どもたち』が、江の島で約200名参加のビーチクリーンイベントを開催した。累計300万ドルの寄付実績を持つ同作は 、清掃活動をアート制作や生演奏等の「体験価値」へ昇華。オンラインの熱量をリアルの社会貢献へ繋げた、ゲーム業界におけるESG活動の先進事例を提示した。
4月11日(土)、神奈川県・片瀬東浜海岸でビーチクリーンイベント「Sky 光を紡ぐビーチクリーン in 江の島」が開催された。
主催は、世界累計3億ダウンロードを記録したソーシャルアドベンチャーゲーム『Sky 星を紡ぐ子どもたち』を運営するthatgamecompany, Inc.。「思いやり」や「つながり」というゲーム内の価値観を、現実世界の環境保全活動へといかに接続させたのか。オンラインコミュニティの熱量をリアルな社会貢献へと昇華させた、同社のサステナビリティ戦略を紐解く。
倍率8倍の応募が殺到。『Sky』コミュニティの熱量がリアルへと波及

「Sky 光を紡ぐビーチクリーン in 江の島」では、ビーチクリーンをメインに据えたイベントであるにもかかわらず、約1600名の応募があったという。 特製のオリジナルTシャツ配布やアクティビティに加え、『Sky』の世界観に沿うような体験を現実の海でも共有できる場として設計されたことが、ファンの関心を集めたかたちだ。オンラインで構築されたコミュニティが、リアルの場へと着実に拡張していることの表れともいえる。
当日は抽選で選ばれた約200名のプレイヤーが招待され、NPO法人海さくらの協力のもとビーチクリーンが行われた。事前には、海さくらの古澤氏から海洋ゴミ問題の現状についてレクチャーが行われた。 「海のゴミは、海に遊びに来た人が捨てたものや海外から流れてきたものだと思われがちですが、太平洋側では海のゴミの約7割が街からやってくると言われています」と指摘し、波打ち際に多く見られる直径5ミリ以下の「マイクロプラスチック」は、街の排水溝や道路脇の側溝から流れ込んでくると説明する。
「今日ゴミ拾いをしている中で、『街のゴミが海にやってきている』ことを、自分の目で見て、拾って、体感できると思います。これからは街での過ごし方やゴミ置き場でのふるまいも意識してみてください」と語り、海ゴミが集まる構造と、本イベントの意義をあらためて参加者に伝えた。「街と海のつながり」という視点は、参加者にとって自身の日常生活と環境問題を地続きに捉える重要な契機となったはずだ。


清掃活動を「体験価値」に変える
ビーチクリーンでは、参加者にゴミ袋やゴミをつかむトング、砂浜からマイクロプラスチックを選り分けるためのふるいが配布された。約1時間弱の清掃ののち、設置された5つのゴミ箱で分別を行い、空になったゴミ袋は主催側で回収・再利用するという流れだ
ゲームイベントと聞いて想像される“お祭り感”よりも、現場の空気はどちらかといえば黙々と作業に集中するワークショップに近い。参加者は20〜30代が中心という印象で、開始時刻前から自発的にゴミを拾い始める姿も多く見られた。 分別ルールをスタッフへ確認するなど能動的な姿勢も目立ち、環境問題と真摯に向き合う様子が印象的だった。オンライン上で育まれた価値観が、現実の行動につながっていることがうかがえる。
また、回収されたマイクロプラスチックの一部は、「自然の日々」をイメージした“Sky”の大型ボードアートに活用された。カラフルな破片でロゴが少しずつ埋め尽くされたボードを、多くの参加者が写真に収めていたのが象徴的だった。単なる清掃活動にとどまらず、「作品」というアウトプットへと昇華させることで、イベント体験の記憶価値を高める設計になっているように見えた。これは、単なる労働としてのボランティアを、ファンエンゲージメントを高める「コンテンツ」へと変換する高度なマーケティング手法ともいえる。



社会貢献をコア体験に組み込む、『Sky』発のコミュニティづくり
ビーチクリーン後は、海岸に“Sky”の文字をかたどるようにキャンドルが並べられ、参加者一人ひとりには廃油由来のキャンドルが配布されて火が灯された。 さらに、Skyのプレイヤーであり作曲家・演奏家であるSeiYA Fukudaさん & 演奏家サークル「Nachtigall(ナハティガル)」がサプライズで登場し、砂浜で『Sky』の音楽の生演奏を披露。
キャンドルの光に照らされたビーチで、波音をバックに奏でられる音楽は、ゲームの幻想的な世界観と現実の風景が重なるような時間をつくり出していた。参加者からは「生演奏すごい…」といった声も上がり、その場を心から楽しんでいる様子がうかがえた。


thatgamecompanyのジャパンブランドマーケティング/コンセプトアーティストを担当するMiho氏は、今回のイベントについて「ゲームの中で生まれたつながりが、リアルの場での行動につながり、みんなで海をきれいにし、その成果をかたちにできたことが本当にうれしい」と手応えを語った。
ESG活動を単なる広報施策の一部にとどめるのではなく、プロダクトの世界観とコミュニティ運営の中心に組み込むアプローチは、結果としてユーザーとの長期的な関係性を深めることにもつながっているように感じられた。社会貢献を「社会に役立つ活動」としてだけ捉えるのではなく、ファンが世界観に浸るプロセスそのものに織り込んだ今回のような設計は、ゲーム産業のみならず、顧客との共創を目指すあらゆるビジネスにおけるESGの取り組み方を考えるうえで、一つのモデルケースとして位置づけられそうだ。
(文=福永太郎)











