アサヒHDは2001年にビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)のシェアでキリンHDを抜き、09年を除き、首位を堅持している。飲料でも11年にアサヒ飲料がキリンビバレッジを逆転しているが、今回さらに時価総額でも逆転を果たした格好となった。
●際立つキリンの不振
ビール市場は、規模の縮小に歯止めがかからない。「まずはビールで乾杯」という世代の高齢化が進み、若者の間では「ビールは苦い」などと敬遠され、ビール離れが進んでいる。市場規模は1994年をピークに縮小中だ。ビール大手5社がまとめた13年のビール類課税出荷量は、前年比1.0%減の4億3357万ケース(1ケース=大瓶20本換算)。92年に現行の統計となったが、05年から9年連続で過去最低を更新した。
ビールと発泡酒の不振が続く中で伸びたのは、低価格が売りの第3のビールで、前年より2.0%増となり、全体に占める割合も第3のビールは36.5%で過去最高となった。
会社別のビール類のシェアは、アサヒビールが37.6%で4年連続のトップ。以下、キリンビール34.8%、サントリー酒類14.7%、サッポロビール12.0%と続く。順位に変化はなかったが、キリンビールだけがシェアを落とし、キリンの不振が際立っている。4月の消費税増税後は節約志向が一段と強まる。ビール風味のアルコール飲料である第3のビールに人気が集中するとの見方も強い。
●再編に出遅れたキリン
右肩下がりの厳しい状況を受け、ここ数年、飲料業界では再編の動きが続いてきたが、ここでもアサヒHDとキリンHDは明暗を分けた。
アサヒ飲料は10年ほど前まで赤字に沈み、事業売却の噂が出るほどの弱小企業だったが、10年頃から飲料事業のM&A(合併・買収)に力を入れ、変身した。まず、10年5月、ハウス食品のミネラルウォーター「六甲のおいしい水」事業を買収。同年12月にはカゴメの「六条麦茶」ブランドの麦茶飲料事業を手に入れた。売れ筋の水とお茶に弱かったが、買収によって強化した。11年には飲料のシェアを9.9%に押し上げ、キリンビバレッジを抜いて4位に浮上した。
続いて12年5月には、飲料大手のカルピスを買収。カルピスの親会社の味の素から全株を1200億円で取得し、国内飲料業界では当時過去最大規模のM&Aとなった。アサヒ飲料の国内シェアはカルピスの買収によって11.8%に高まり、伊藤園を抜いて3位に躍り出た。その後、首位の日本コカ・コーラグループが30%、2位のサントリー食品インターナショナルが20%のシェアを確保する2強状態で、10%前後のシェアを握る伊藤園、アサヒ飲料、キリンビバレッジが混戦を繰り広げてきた。
そして再編はさらに加速。サッポロ飲料は13年1月、ポッカレモンで有名なポッカコーポレーションと経営統合し、新会社・ポッカサッポロフード&ビバレッジを設立した。関東地区のコカ・コーラボトラー【編註:コカ・コーラから原液を購入してボトリングを行い、販売する企業】の三国、利根、東京、セントラルの4社は13年7月に合併してコカ・コーライーストジャパンとなった。