こうした再編に出遅れたのがキリンビバレッジだ。かつて、コカ・コーラ、サントリーとともに3強の地位にあったが、10年に伊藤園に3位の座を譲り、11年にはアサヒ飲料にも抜かれ、5位に転落した。キリンビバレッジは価格競争を避け利益重視に転じたが、100社以上のメーカーがひしめき合う飲料業界は、とにかく量が重視される。数量が出なければ、スーパーやコンビニの棚を維持できなくなるからだ。キリンビバレッジは、経営方針の変更がシェアの下落に直結した。
●勝負の分かれ目、海外M&A
アサヒHDとキリンHDの時価総額の逆転は、主力事業のビールと飲料でキリンHDがアサヒHDに敗れたことを、如実に反映したものだ。アサヒHDの次の目標は、売り上げと利益でキリンHDを抜くことだ。
アサヒHDは14年12月期の売り上げを前年同期比2.1%増の1兆7500億円、営業利益は同4.7%増の1230億円と見込んでいる。一方、キリンHDの売上高は同1.6%増の2兆2900億円、営業利益は同2.0%減の1400億円と予想。13年12月期の営業利益も前期比6.7%減の1428億円で、2期連続で営業減益になりそうだ。売上高の差はまだまだ大きいが、キリンHDが連続して営業減益になることもあって、営業利益はかなり接近してきた。
国内飲料市場は少子高齢化の影響を受け、成長に限界がある。カギとなるのは海外進出だが、キリンHDがアサヒHDより一日の長がある。
キリンHDにとっての痛恨事は、10年にサントリーHDとの統合がご破算になったことだ。統合が実現していれば、国内ではビールと飲料に両足を置くガリバーになるだけでなく、世界第5位の巨大食品会社が誕生するはずだった。
経営統合を逸したサントリーHDは今年1月13日、「ジムビーム」など世界的ブランドを持つスピリッツ(蒸留酒)メーカー、米ビーム社を1兆6500億円で買収すると発表した。米ビーム社の買収は、国内食品メーカーとしては過去最大のM&Aとなる。サントリーHDは大勝負に出たのだ。
これからの主戦場は海外M&Aであり、この成否がアサヒHDとキリンHDの勝負の分かれ目となる。
(文=編集部)