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理由は単純で、財政が行き詰まってくると、日本政府が「国債の戦略的デフォルト」を実施する誘因が存在するためである。国債を日本国内の銀行などが引き受けている場合、もし日本政府が国債をデフォルトすると、銀行などは金融危機に陥り経済が混乱するため、そのような戦略を取る誘因は極めて低い。その場合、国債利回りは海外の機関投資家が国債を引き受けるよりも低い状態を維持できるのである。
つまり、日本経済が恒常的に経常赤字に陥ることには留意が必要だが、それで国債消化がすぐに危機的な状況に陥るとは限らない。むしろ、経常赤字の中身を十分に精査する必要がある。
なお、余談であるが、【※】式からは色々なことがわかる。例えば、日本の政府純債務(対GDP比)は約130%だが、国債利回りを2%、経済成長率を1%とすると、日本政府には少なくともGDP比1.3%まで基礎的財政収支を黒字化する能力が求められる。
もっとも、【※】式の基礎的財政収支の限界は、増税や歳出削減の限界ほか、政治の成熟度や民主主義の理解度の影響も受ける。GDP比1.3%の基礎的財政黒字の達成は、極めて強い政治のリーダーシップが必要となり、容易に達成できるハードルではない。このため、基礎的財政収支の限界をGDP比1%と予測した場合、【※】式の不等号を成立させる国債利回りの上限は1.8%となり、それを国債利回りが超えた場合、理論的には国債消化は危機的な状況に陥る可能性があることを示唆するのである。
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