そこで今回、横田氏にどのようなリニューアルをしたのか、今後の方向性や目標などについて話を聞いた。
–今回のリニューアルで、最も大きな変更点はどこでしょうか?
横田由美子氏(以下、横田) 姿勢という部分が大きいでしょうね。サイト内にある編集長挨拶にも載せているのですが、個人投資家目線に立ってニュースを流していく、ということを前面に打ち出しています。そのため、時には企業が表に出したくないニュースなども、これからは力を入れていきます。
●裁判記録全部を掲載
–具体的には、どのようなニュースですか?
横田 争議案件です。裁判の資料などは全部掲載するようにしています。例えば、口頭弁論の裁判記録では、裁判官の名前や弁護士の対応など、基本的に載せられるものは全部載せています。
裁判記録は、かなりの量になります。場合によっては、A4用紙の資料が3センチもの厚さになってしまいます。しかし企業の争議案件などは、地味なものも多いので、ほとんどのメディアでは無視されるか、載せたとしても1ページか多くて見開き2ページくらいでしょうか。3センチの厚さの記録が1ページになるということは、その大部分は掲載されず、読者は詳細な事実関係をわからないまま結果のみを読む、といったこともよくあります。
そのため、課金になると思うのですが、分厚い資料も全部読めるようにしているのです。
–なぜ、そのようなニュースを大きく扱おうと考えたのですか?
横田 個人の投資家というと、一時期、名をはせた村上ファンドのようなものをイメージする人も多いと思います。ファンドを運営している人たちなどは、ものすごく豊富な知識を持っていて、投資している企業が破産したときでも、事前にある程度察知しているので大損はしていないと思います。しかし、実際はそうした運用をできる人はごく一部で、知識もないまま投資をしている人が多いのです。すごく知識がある人と、まったく知識を持たない人、両極端に分かれています。その結果、さまざまな問題が起きています。
●投資家の無知につけ込んだ事件
以前、こんな事件がありました。旦那さんを亡くし、50代で工場長として働いている女性が、証券会社から勧められるまま取引をし、空売りなどで最終的に2億4000万円もの負債を負ってしまったのです。話を聞くと、その証券会社が、女性にひどく強引な取引をさせていました。しかし女性は知識がないために、その言葉に従ってしまったのです。
実際、取引の記録を見ても、多いときは一日に8回も売り買いさせられていました。現在、この負債について裁判が行われていますが、女性にほとんど勝ち目はありません。普段のやりとりは携帯電話で行っていて、通話の録音などもしていないのです。そもそも録音しようなどという発想もないのです。
すなわち、2億4000万円という大きな借金は、ほとんどが女性の責任ということになってしまいます。亡くなった旦那さんと苦労して建てた家を売り払っても、追いつかない金額でしょう。
こうした事件は、知識がないまま投資に手を出した女性にも責任がありますし、彼女の言葉だけで記事を書くこともできません。また、大手証券会社でしたらニュースとしてバリューもあるのでしょうけど、今回問題となったのは地場の小規模な証券会社です。そのため彼女のような事件は、ほとんど目に触れることはありません。