哺乳瓶のピジョンは、ニューデリー近郊の工業団地に新工場を建設している。20年のフル稼働期には哺乳瓶を年間200万個、哺乳瓶の吸い口部分を同2000万個生産する計画だ。吸い口の生産規模は日本の販売量の4倍に当たる。ピジョンはこれまで300ルピー(約500円)で販売してきた輸入品の価格を、現地生産により180ルピーに下げ、100ルピーで売る現地企業との価格差を縮め、販売攻勢をかける。バングラデシュとパキスタンへの輸出・販売も視野に入れている。
ベビー用品各社は中国市場に力を入れてきたが、中国に依存しすぎるリスクを見据えてインド市場に着目した。インドでは女性が早く結婚するうえに、乳幼児の死亡率が高いため、子供をたくさん持とうとする傾向が強い。ユニセフ(国連児童基金)の「世界子供白書2013」によると、インドの年間出生数は2710万人。パキスタンやバングラデシュを合わせた3カ国の合計は3488万人。中国の1636万人の2.1倍で、世界最大のベビー市場なのである。ちなみに、日本の出生数は同107万人。インド、パキスタン、バングラデシュを合わせると、日本の30倍の新生児が誕生するのである。
●ユニ・チャームは過去最高益
ユニ・チャームの13年4~12月期の連結決算は絶好調だった。売上高は前年同期比20%増の4389億円、営業利益は8%増の491億円となり、売上高は10期連続、営業利益は3期連続で過去最高を更新した。
好調な海外事業が業績を支えている。海外売り上げの構成比率は7ポイント上昇して57%と過去最高を記録した。なかでもアジアのそれは42%と6ポイントアップした。インドネシアでは低価格の紙おむつが好調で、タイでも紙おむつの新製品が伸びた。
同決算における国内売上高は1897億円、対するアジアのそれは1842億円で国内とほぼ肩を並べ、アジアが国内を上回るのは時間の問題だ。営業利益の増加率は、国内は2%弱にとどまるがアジアは30%の増益となり、ユニ・チャームの紙おむつが「アジアの勝ち組」といわれるゆえんだ。
14年3月期は売上高が前期比17%増の5800億円、営業利益は18%増の700億円の見込み。利益を株主に還元するため、最大で120億円の自社買いを実施する。ユニ・チャームの紙おむつ「ムーニー」はアジア市場を席巻しているが、中国では苦戦を強いられている。来期に予定している高級品の販売に備えて、在庫を回収した費用が膨らんだためだ。
中国では、日本製紙おむつが飛ぶように売れている。そのため、日本国内に紙おむつの買い占め・輸出を行うブローカーが横行し、国内では品薄を嘆く声が聞こえるほどだ。特に人気なのは花王の「メリーズ」だ。