–それは「プロ野球は地域の絆ビジネス」という事業コンセプトの一環ですね。どんなイメージを事業の理想として描いていますか?
池田 私は毎年、米国大リーグの球場を数カ所ずつ視察しているのですが、昨年シカゴ・カブスのリグレ−フィールドを訪れた際に、「野球のある街」と、言わずもがなに野球と街が融合している空気と光景を目の当たりにしました。そこで私たちも、横浜を「野球のある街」にするため、「街づくり」のプロジェクトを球団内に導入しました。
今シーズンは、横浜スタジアムに来場いただいたお客様全員に、年間来場総数150万人近い皆様と共に「プロ野球のある街、横浜」として横浜ブランドを向上させていこうと、「I LOVE(正式表記は星印) YOKOHAMA」のステッカーを無料でお配りします。期間毎にカラーバリエーションをつけていきます。
いくつかのアメリカの地域と融合している球団を参考にしたり、シカゴ・カブスの街のように、横浜DeNAベイスターズが横浜にしっかりと溶け込んでいけば、その証としてステッカーをどこかに掲げてくださる方々が増えていくと信じています。さまざまな仕掛けを通じて、スタジアムを超えて、横浜に「野球のある街」としての雰囲気と光景が拡がる。そして、プロ野球が地域の絆になる。地域のアイデンティティになる。それが、私の理想としているイメージです。
–当面の経営目標は、赤字体質の改善かと思います。就任当初に30億円だった最終赤字は、2年間でどのぐらいに削減できましたか?
池田 2年で、売り上げを約20億円伸ばし、さまざまな投資に約10億円する一方、赤字幅は約10億円減らせました。けれどもこのままのビジネス構造では、全試合が満員になっても赤字で、親会社に損失を補填してもらうという構造からは脱却できません。まずは可能な限り赤字幅を減らしつつも、健全経営の道を模索し続けていく必要があると考えています。一方、チームについては、技術的な部分には一切口を挟むつもりはありませんが、組織づくり、仕組みづくりや方針づくりなどは着実と進められてきていると考えています。新球団となり3年目。これからのチームの目標は、もちろんいつでも「優勝」です。
–そうした経営改革において、マーケティング面として今期、横浜DeNAベイスターズが取り組む重点的なテーマは何でしょうか?
池田 リサーチの結果からも明らかなのですが、来場客数が伸びた要因も、当面伸び得る要因も、30~40代のアクティブなビジネスパーソン層であると考えています。この層は平日には仕事を終えてから同僚や友人、恋人と、居酒屋に行ったり、お出かけしたり、週末には自分の趣味を楽しんだり、子供のいる方は子供を中心とした生活ではありますが、多くの場面でアクティブな傾向があります。同時に子供を一度はプロ野球を観に連れていってあげたいと思う可能性の高い年代でもあります。こうした方々の選択肢の1つに、地元チームのプロ野球観戦が加わるためのアイデアやマーケティングが大切だと考えています
●狙いは30~40代のビジネスパーソン
また、この層の特徴としてゲームの勝敗だけでなく、ビール片手に野球談義を楽しみながらボールパークの雰囲気を楽しみたいと考えられていることもわかっています。プロ野球を観ながら大きなビヤホールの気分を楽しんでいるわけです。もっとご満足いただくためにも、横浜スタジアムの名物にまでなるような「ビールのつまみ」ももっと考えていかないといけません。
–ホスピタリティ面の強化として、取り組んでいることはありますか?
池田 球場スタッフが、単なる誘導係にとどまってはならないと考えています。シカゴ・カブスの本拠地であるリグレーフィールドでは、球場内で働く高齢のスタッフが実にフレンドリーで心地良い気持ちにさせてくれました。何かを勧めてくるにしても、押しつけ感を一切感じさせず、逆に「教えてくれてありがとう」という気分になりました。