そんな中、清涼飲料業界で今春から、トクホ飲料市場における食品メーカー各社の競争が再び激化する兆しを見せている。トクホ飲料とは、消費者庁が特定保健用食品(トクホ)として「体脂肪がつきにくい」など保健の効能表示を許可した清涼飲料のこと。1991年にトクホの普及を促す保健機能食品制度がスタートして以来、市場は急成長してきた。
97年度から隔年でトクホの市場規模調査をしている日本健康・栄養食品協会によれば、97年度に1315億円規模だった市場は07年度に6798億円規模と、10年で5.2倍に成長した。しかし、09年9月に花王が販売していたトクホ食用油のエコナに発がん可能性成分が他の食用油より多く含まれているとして、消費者団体がトクホの許可取り消しを求め、花王はエコナを販売中止・自主回収する事態に発展。この問題をきっかけに消費者の「トクホ離れ」が起こり、09年度は市場規模が5494億円と約20%も一挙に縮小、11年度も5175億円(対9年度比5.8%減)と需要が低迷している。
食品業界関係者によれば、この需要低迷にピリオドを打つ切り札として食品各社が熱いまなざしを向けているのが、トクホ飲料だという。
●12年から始まっていた前哨戦
トクホ飲料戦争の口火を切ったのは、12年4月にキリンビバレッジ(以下、キリン)が発売した「キリン メッツコーラ」。トクホ初のコーラ系飲料で、キリンは「脂肪の吸収を抑制する効果がある」と謳っている。この宣伝が「健康を気にしてコーラを飲まなくなった成人男性の支持を受けてヒット」(キリン関係者)し、初年度販売目標の100万ケースを発売日からわずか2週間で達成。その後も人気が続き、結局発売初年度に700万ケースを販売したといわれている。
それを見たサントリー食品インターナショナル(以下、サントリー)が同年11月に「ペプシ スペシャル」を発売してトクホコーラ市場に参入。量販店で大々的なメッツコーラ追撃キャンペーンを展開したことから、トクホ飲料市場が一気に盛り上がった。
トクホコーラがヒットしたのは「健康に悪いとされていたコーラ系が『健康に良い』トクホとして認可されたことで、それまで肥満が心配でコーラ系を我慢していた中高年層がワッと飛びついた」(飲料業界関係者)ためといわれている。
13年秋にはトクホ茶ブームが沸き起こる。サントリーが同年10月1日に発売したトクホ飲料の「伊右衛門 特茶」も、発売日から2週間で初年度販売目標の100万ケースを達成、慌てた同社が10月15日に年間販売目標を200万ケースに上方修正する人気ぶりだった。また、14年の販売目標を当初計画の2.5倍の750万ケースに設定、飲料全体の約10%をトクホ飲料で稼ぐ構えだという。
同社関係者は「茶は食事時以外も飲む機会が多い飲料。それがトクホの付加価値効果により消費者の支持を受けた」と分析している。