さらに、ファストフードの客は1人が多く、食事の間も気晴らしを求めているため、トレーの下敷きの文章を読みふける。よそでは見向きもされないメッセージも、読まれること請け合いなのだ。テーブルには、小さい文字が何行も書かれたナプキンを置くのもいい。
つまり、メッセージを読み取る余裕ができるのは、消費者が当初の目的を達成した(注文した)後なのだ。入ってくる客よりも、注文を終えた客へのメッセージ(食後のデザートの広告)が店内では効果的なのだ。
●滞在時間が長くなるほど多くの商品を買う
ショッピングの科学で重要なのは、客が店で費やす時間(ショッピングしている時間のみ、列に並ぶ時間は除外する)を把握し、いかに長くさせるかだ。
「われわれの調査が証明したところによれば、買い物客は店にいる時間が長くなるほどたくさん買う。客が店内に滞留する時間は、その場がいかに快適で楽しいかによる」
ある電器店では、非購入者の滞店時間は5分6秒、これに対して購入者は9分29秒だ。「玩具店では、購入者が17分以上、非購入者が10分。店によっては、購入者が費やす時間は非購入者の3倍から4倍」にもなり、購入者が会計を済ませるまでの平均時間は、スーパーで25分、大型スーパーや百貨店では30分だという。
そのため、スーパーではほとんどの客が手にする乳製品を店の奥に置き、買い物客を通路奥におびき寄せる。そして、そこまでの途中には、つい手に取りたくなるような商品を置き、買い物カゴを店内に分散して配置する。さらに、購入後も、レジと出口までの間に商品を置き、最後まで買い物客に「ついで買い」させるための仕掛けを怠らない。
私たちがスーパーから家に帰った後、「なんでこんなものを買ってしまったのだろう」と不思議に思うことがよくあるのは、こうした仕掛けにまんまとはまっているからだ。
物価高騰の折、無駄な買い物を避けるためにも、消費者自身がまず、このショッピングの科学を研究しておくべきかもしれない。
(文=編集部)
『なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学』 「買いゴコロ」をくすぐる、「売りゴコロ」の秘訣! 本書は、進化しつづける買い物文化を小売店を調査しながら的確に把握し、「フォーチュン」100社に挙げられる優良クライアントの数々を小売業界の第一線へと導いてきた究極のノウハウ「ショッピングの科学」を紹介するものです。