ANAホールディングス(HD)傘下で関西国際空港を拠点するピーチ・アビエーションは、5月19日から10月25日まで最大2128便を欠航する。同じくANA HDが100%出資する成田国際空港拠点のバニラ・エアも、6月に154便が欠航。日本航空系で成田空港を拠点とするジェットスター・ジャパンも6月に101便が欠航。国内LCC3社の中で唯一の勝ち組といわれてきたピーチの失速は、LCC業界全体に影を落とし始めている。
●一人勝ちだったピーチ
国内LCC第1号のピーチ・アビエーションは4月28日、累計搭乗者数が500万人を超えた。運航開始から26カ月目での到達となった。ピーチが拠点を置く関西国際空港は、「アジアのLCCの拠点」になるという方針を打ち出しており、24時間離着陸ができる上にLCC専用ターミナルを備え、着陸料も大幅に割り引いている。関西財界も応援するなど、地元の全面的なバックアップを得てピーチは「唯一の勝ち組」といわれてきた。
航空会社は年3回のかき入れ時がある。年末年始、ゴールデンウイーク、お盆の3回で、その時期の搭乗率はLCC3社の今後を占う目安になる。搭乗率75%以上が採算ラインといわわる中、航空専門情報会社Aviation Wireの調査によると、LCC3社が揃った12年の年末年始(12年12月21日~13年1月6日)の国内線搭乗率はピーチが83.5%、ジェットスターが78.7%、エアアジア・ジャパン(現バニラ・エア)が77.4%と横並びだった。
その後、13年のゴールデンウイーク(4月25日~5月6日)のピーチの国内線の搭乗率は91.3%、お盆期間は93.6%、13年から14年の年末年始は87.8%と圧勝した。ちなみに今年のゴールデンウイークのピーチの搭乗率は86.1%で、同期間は12年、13年と2年連続して9割超だったが、今年は日並びの影響もあり9割を下回った。
ピーチとは対照的に、ANA HDがマレーシアのLCC、エアアジアと合弁で運営していたエアアジア・ジャパンの搭乗率は上がらず、合弁を解消した。その後、13年12月にANA HDの100%出資で再出発したバニラ・エアの今年のゴールデンウイークの国内線の搭乗率は、64.9%と振るわなかった。
また、ジェットスターは機体を増やし新規路線を次々と開設して座席数を増やしたことで乗客数は12万人を超えたが、今年のゴールデンウイークの搭乗率は前年より3.2ポイント減って75.7%だった。ミニスカ搭乗員で話題を呼んだスカイマークの75.0%と同じ水準だ。
【主要航空会社の旅客数と搭乗率(ゴールデンウイーク期間:14年4月26日~5月6日)】
旅客数(人) 搭乗率(%)
ピーチ・アビエーション(国内線) 98,314 86.1
(国際線) 36,751 85.1
バニラ・エア(国内線) 20,822 64.9
(国際線) 13,970 80.8
ジェットスター・ジャパン(国内線) 124,761 75.7
日本航空(国内線) 1,099,695 67.9
(国際線) 288,495 79.6
全日本空輸(国内線) 1,442,011 63.3
(国際線) 242,796 73.3
スカイマーク(国内線) 264,484 75.0
※Aviation Wire調べ、搭乗率は座席数に占める旅客数の割合