●大規模な欠航
好調のピーチを突如として襲ったのが、機長(パイロット)不足の問題である。病気やけがで機長が不足し、夏場に予定した増便計画をほぼ全面的に取り下げたが、世界規模でパイロットが不足し、争奪戦になっているという構造的な問題が背景にある。
ピーチは4月30日、5月~10月に最大2072便を減便すると発表したが、さらに5月20日には、8月に運航予定の56便の追加欠航を発表。欠航便は最大で合計2128便に上る。4月30日の発表時点で、欠航便は5月から10月までの計画便1万2886便の16.5%にあたり、影響旅客数は最大2万7209人に達する見込みだ。
ピーチが運航するエアバスA320型機(180席)は12機で、6月に13機目の引き渡しを受ける予定だ。4月末時点の運航乗務員は108人で機長が52人、副操縦士が56人。機長の不足分は外部から雇い入れることにしていたが、計画を下回った。13機体制になっても減便が生じる期間は11機体制のスケジュールで運航する。
ピーチに続いて、バニラ・エアとジェットスターも欠航に追い込まれた。LCCは余剰の機材や人員を抑えることでコストを削り、割安な運賃を提供して若者を中心に顧客層を拡大してきた。だが、短期間のうちに路線や便数を拡大した影響でパイロットの不足が深刻になった。自力でパイロットを養成することは時間も費用もかかって難しい。一方で、パイロットの引き抜き合戦は激しさを増すばかりだ。
8月には中国最大のLCC、春秋航空などが出資する春秋航空日本が成田国際空港を拠点に国内3路線の運航を始める。6月末を予定していたが、春秋航空もパイロット不足が原因で再度、就航を延期した。13年にANA HDとの合弁を解消し国内LCC市場から撤退したマレーシアのエアアジアも15年をメドに再参入を目指し、パートナーを探している。
人手不足による相次ぐ欠航という混乱の中、国内LCC市場は5社がひしめく激しい過当競争時代を迎える。
(文=編集部)