10年10月には宮崎で創業し九州一円でドラッグストアをチェーン展開する東証1部上場のコスモス薬品(福岡市)と契約ができた。これで水泳ができる環境がやっと整った。松田選手の銅メダル獲得を受けて、コスモス薬品の7月31日の株価は6690円と年初来高値をつけた。
バドミントン女子ダブルスで日本勢初のメダルとなる銀を獲得した藤井瑞希、垣岩令佳選手の所属は、ともに集積回路(LSI)の製造を行うルネサス セミコンダクタ九州・山口(熊本市)。親会社のルネサス・エレクトロニクスは半導体不況で経営危機に陥ったが、母体企業であるNEC、日立製作所、三菱電機の支援策がまとまり、再建に向けて動きだした。悪い話題ばかりだった同社にとって、久々の朗報となった。
所属選手の金メダルの代償に過去をほじくりかえされた会社もある。男子の金メダルゼロという歴史的惨敗を帰した柔道界で、1人金メダルを得て気を吐いたのが女子57キロ級の松本薫選手。彼女が所属しているのは健康食品販売会社、フォーリーフジャパン(大阪市)。一躍、知名度を高めたため、過去の所業が暴かれることとなった。
同社はマルチ商法の会社。錠剤型の健康食品、ファースト・リーフを会員登録料3000円、月額1万3600円で販売し、会員がほかの人を勧誘すれば成功報酬を支払う仕組みを採っている。「がんに効く」といった事実と異なる説明で健康食品の購入を勧誘したとして、経済産業省は09年2月20日から6カ月間、新規の勧誘を禁止する業務停止命令を出した。
行政処分が解けて直ぐの09年8月、Jリーグの大分トリニータはフォーリーフ社とユニホームの胸スポンサー契約を結んだ。これに対して広瀬勝貞・大分県知事は懸念を表明、サポーターが抗議の横断幕を掲げる騒ぎとなった。大分トリニータはフォーリーフ社とのスポンサー契約を打ち切り、溝畑宏・社長は辞任した。この溝畑氏はなかなか抜け目のない御人で、民主党政権とのパイプを生かし、観光庁長官、内閣官房参与とトントン拍子に出世した。
メダルラッシュで株が上がった企業と逆に下がった企業——こうした企業に注目が集まるのも、オリンピックの別の楽しみ方といえるだろう。
(文=編集部)