売上高では、プラズマパネルからの撤退でテレビ事業が減収となったものの、中国のエアコン販売回復、トルコの配線器具メーカー・ヴィコの新規連結、カーナビと電池事業の売り上げ拡大などが増収に寄与した。営業利益では、増益分181億円のうち約60%が家電事業の改善によるものだった。プラズマパネル撤退でテレビ事業が2四半期ぶりに営業黒字に転換したほか、中国での在庫増で苦戦していたエアコン事業の採算改善、構造改革による固定費圧縮などが営業増益に寄与した。一方、最終利益では、前期は企業年金制度変更の一時金798億円により過去最高益を記録したが、今回はこうした営業外収益計上要素がなかったため大幅減益となった。
第1四半期の結果がほぼ計画通りだったため、売上高7兆7500億円、営業利益3100億円、最終利益1400億円達成を目指す14年度通期業績予想は据え置いた。
記者発表した河井英明CFO(最高財務責任者)は「構造改革の進捗で経営体質が着実に強靭化している。売り上げ増が利益増に直結する構造になってきた」と、構造改革の成果に胸を張った。
この好業績を受け、株式市場関係者たちの間で再び脚光を浴びているのが、通称「10兆円計画」の成否だ。
●使い果たした「津賀改革」の成果
「創業100周年を迎える18年度に、因縁の売上高10兆円をぜひ達成したい」。津賀一宏社長が胸に秘めていた計画をおもむろに語り出したのは、同社が今年3月に開催した14年度事業方針発表会の席上だった。
津賀社長は過去2回、同社が売上高10兆円に挑戦しては失敗した経緯を踏まえ、3度目の挑戦をする理由を「過去2回挑戦した売上高10兆円に失敗したのは、売れば利益が落ちる事業、伸びる事業、縮む事業などが混在していたからだ。だがこの2年間の構造改革を通じ、売り上げが伸びれば利益が伸びる構造へ変わってきた。また、何をやれば利益が伸び、何をやれば赤字になるのかも明確になってきた」と説明。そして「何度も挑戦してはじき返されてきたが、創業100周年の折り目に、私の手で当社の悲願を達成したい」と意気込んだ。
津賀社長が示した10兆円計画の骨子は、次のようなものだった。
同社はすでに、18年度の数値目標として家電事業2兆円、住宅事業2兆円、車載関連事業2兆円と、主力3事業で6兆円の売り上げ目標を示していた。津賀社長はこれらに「住宅・車載以外の法人向け事業」として、車載以外のデバイスで1兆5000億円、BtoBソリューションで2兆5000億円の売り上げ目標を追加。「これで10兆円を達成できる」との見通しを示したのだ。