これに先立ち、4月10日に同社は、2012年3月期連結決算の純損益の赤字が、従来予想の2.4倍に当たる5200億円に拡大すると発表。この数字は、95年3月期の2933億円を上回り過去最大・最悪となる。アメリカでの最大の稼ぎ時であるクリスマス商戦で惨敗したことが、赤字が大幅に増えた原因だ。
それだけに、4月1日に就任した社長のカズが、どんな発言をするかに注目が集まった。儲かる分野に経営資源を集中して、テレビ事業からは完全撤退との観測すらあった。
しかし、「(テレビなど)エレクトロニクスの立て直しが私に与えられた最大の使命」と発言。これが経営委方針説明会の大前提として示された。結果、市場の期待は急速に萎んだ。
同社は、デジタルカメラ、ゲーム、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)やタブレット端末などのモバイルの3分野を新たに中核事業と位置付け、研究開発費の70%を集中投資する。一方、中核事業から外したテレビ事業は大幅なリストラでコストを削減するという。
テレビ事業のリストラについては、14年3月期にテレビ事業を黒字化させるため、12年同期比で固定費用を60%、事業運営にかかる費用を30%減らすという。具体的には、販売・管理などの部門を中心に数千人をリストラする予定とのことだ(国内で2000人、海外ではそれ以上との見方もあるから最低で4000人か)。
自社生産の一部を外部への生産委託に切り替えて、コストを減らす方針のようだが、12年3月期まで8期連続の営業赤字が続いている同事業の改善策が、”リストラ頼み”というのでは、再生はおぼつかない。
市場調査会社の米ディスプレイサーチによると、11年の世界のテレビの出荷台数では、韓国のサムスン電子(シェア19.3%)とLG電子(同15.1%)が1、2位を独占。2000年代初めまで世界市場をリードしてきた日本勢に大きく水をあけた。一方で、3位のソニー(同8.2%)はとうとうシェアを一桁台に落とした。しかも世界市場全体では前年比0.3%減。04年から調査をしているが、初めてマイナス成長となった。