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“傾くはずのない”液晶に潰された技術の優等生

シャープ経営危機を招いた、成功体験と3年前の過ち?

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成功の罠

 こうした取り組みが、同社の成長と発展を支えたことは間違いない。しかし、そこにも落とし穴があった。亀山工場や液晶事業の成功が「液晶技術や液晶事業がこれからも同社の発展を支え、ずっと続いていくだろう」と錯覚した。それが成功の罠であり、同社の経営陣もその罠に陥った。

 町田元社長も、片山幹雄前社長も、

 「液晶の隆盛は、しばらく揺るがない。液晶に代わる次世代技術(ポスト液晶)は液晶である」

とまで言っていたが、液晶産業がピ-クを迎える頃には、それを支える中核技術はすでに陳腐化が急速に進んでいたのだ。

社運を賭けた大型投資という過ち

 厳しい見方をすれば、同社が09年に社運を賭けて行った大阪・堺工場への大型投資は、すでにピ-クを過ぎた液晶パネル事業への、時機遅れの過分な事業投資であったともいえる。結果論ではあるが、やはり経営の判断ミスであろう。好意的に考えれば、「シャ-プのプリンス」と期待されて社長に就いた片山前社長にとって、液晶事業に代わる技術・産業の必要性を感じていたとしても、町田元社長の成功があまりにも大きかったため、その経営方針の否定につながる、液晶に代わる新たな事業方針を打ち出すことはとてもできなかっただろう。

 新社長に就いた奥田隆司社長にとって、大変苦しい選択にはなるが「シャ-プの再建は、町田・片山路線の見直しと否定から出発するしかないであろう」と思われる。

 量産型の製造利益の確保は提携相手のホンハイに譲り、シャ-プは長年にわたってこれまで築いてきた高いブランドバリュ-、他社が容易に真似できない独創的な先端技術(UA2技術、IGZO技術など)、スマ-トで洗練されたデザイン、グロ-バル市場を意識したマ-ケティング力で利益を稼ぐことのできる分野に、経営資源を集中すべきであろう。

 シャープ創業者の早川徳次氏は、「他社に真似される企業になれ」といったが、同社はこれまでに、世界最初とか世界一といった技術や製品を数多く生み出した実績がある。そうしたDNAを生かして、ブランド・デザイン・技術・マ-ケティングで独自の開発利益を獲得できる企業として、生き残りを図るのが経営再建の道のように思える。
(文=野口恒/ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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