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経営者がMBOに走る原因に、上場を維持するのにカネがかかりすぎることがあげられる。証券取引所に支払う経費や四半期決算など情報開示にかかるコストは、東証マザーズの新興市場に上場している場合でも最低で年間2億円はかかるといわれている。中堅企業にはかなりの負担だ。鐘崎は「会計基準の厳格化などで上場を維持するコストが大きくなっている」ことを理由にあげている。
多くの企業がMBOを決断するに至った表向きの理由は、経営の自由度の確保だ。自由度の確保といえば聞こえはいいが、外野席からあれこれ口を挟まれずに経営をしたいという、わがままだ。
「株式を上場しているかぎり、経営者は常に株主や株価に気を配らなければならない。利益が出ているのに無配にして、浮いたカネを新しい工場の建設費用に回すような思い切った手は打てない。業績が悪くなれば株価を上げろと迫られる。株式を非公開にすれば社外からの口出しをシャットアウトでき、好き放題にできるのが経営者にとって最大の魅力でしょう」(経営評論家)
MBOの流行で見逃してならないのは銀行の融資姿勢の変化だ。鐘崎と七十七銀行の関係を持ち出すまでもなく銀行が融資をすることによって、初めてMBOが可能になる。一方、銀行は新しい融資案件でしっかり金利を稼ぐことができるわけだ。
「株式上場のメリットは市場から直接、資金を調達できる点だ。3月末時点で上場会社は3562社があるが、新規公開したとき以外に市場から資金調達をしたことのない企業が少なくない。これでは上場を続ける意味はない。資金はあり余るほどあるのに貸出先が無い銀行には、MBOの資金需要という新たな道が開けた。MBOが盛んになったのは証券に対する銀行の巻き返しという側面もある」(同)
株式上場の際に創業者は株式の放出(新規の売り出し)で、たっぷりカネを手にしている。そのことに頬被りして、経営の自由度を理由に株式を非上場化するのはムシが良すぎる。
(文=編集部)
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