中でも注目されるのが、イオンを軸にした動きだ。流通大手2社の2014年3~5月期決算は明暗を分けた。セブン&アイ・ホールディングスは入れたてコーヒー「セブンカフェ」の販売増などコンビニ事業の好調に支えられ、最終利益は前年同期比5.6%増の395億円と過去最高を更新した。一方、イオンは来店客の減少や消費増税の影響で総合スーパーと食品スーパー事業が営業赤字に転落したことから、最終利益は90.1%減の13億円に激減した。
そこでイオンはスーパー事業の再編に乗り出した。傘下のダイエーを完全子会社化して、首都圏と関西は「イオンフードスタイルストア」の看板に掛け替え、食品スーパーに特化。他地域のダイエー店舗は、「イオン」か「マックスバリュ」に集約し、ダイエーは14年12月末で上場廃止する。
また、関東地域の食品スーパーの経営統合も行う。マルエツと、茨城県を中心に展開するカスミ、イオンの完全子会社マックスバリュ関東の3社が対象だ。2015年3月に持ち株会社を新設し、3社を傘下に置く。単純合算で店舗数は451店、売上高(14年2月期実績)は約6000億円と、国内最大級の食品スーパー連合となる。マルエツとカスミは15年2月に上場廃止とする。
イオンがグループ再編に踏み切った背景には、コンビニやドラッグストアが生鮮食品の販売を始めるなど、経営環境が一段と厳しくなっていることがある。
●先行する地方スーパーの再編
食品スーパーの再編は、地方が先行して進んでいる。地方の有力スーパー同士の連携が中心だったが、そこへイオンが参戦してきた。九州北部を地盤とする中堅食品スーパー、レッドキャベツ(山口県下関市)を9月に買収し、増資の引き受けなどで全株式の88.7%を取得して連結子会社に組み入れた。レッドキャベツは福岡県を中心に山口、佐賀、長崎、熊本の5県で低価格志向のスーパー41店を展開し、13年7月期の売上高は307億円。九州では食品を安い価格で売るコスモス薬品(福岡市)やトライアルカンパニー(同)、「安売王」の看板を掲げスーパーに進出し急成長を遂げるディスカウントストアのルミエール(福岡県京都郡)などと顧客の争奪戦が激しくなっている。中堅食品スーパーのマルキョウ(福岡県大野城市)は赤字に転落し、西鉄ストアを傘下に持つ西日本鉄道(福岡市)の出資を受け入れた。レッドキャベツも異業種との価格競争に敗れたことが、イオンに身売りする引き金になった。イオンはイオン九州とマックスバリュ九州などスーパーを中心に計200店を展開しているが、レッドキャベツの店舗が多い北九州市などは手薄だった。