安倍政権は2020年までに指導的地位を占める女性の割合を30%に引き上げる「2030」目標を掲げている。これを受けて今国会に提出する「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」(女性活躍推進法案)に、女性管理職の比率など女性登用に向けた数値目標を義務付けるのか否かで与党は揺れた。結局、従業員301人以上の企業が、女性の育成・登用に向けた行動計画をつくり、公表することが法律の柱となり、数値目標は企業の裁量に委ねた。
厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)では、経営側委員が数値目標の義務付けに「数合わせの人事になる」と強く反発したため、報告書段階では数値目標について「望ましい」との表記にとどめた。
だが、官邸が難色を示したため、一転して義務付けの流れが加速した。しかし、女性管理職比率の数値目標を義務付けることに対する経営側の反発は強かった。紆余曲折の末、女性の登用を計画に盛り込むことは義務付けるが、数値目標自体は企業の裁量にまかせるとして決着した。官邸は名を、経営側は実を、それぞれ取った格好だ。
個々の企業で女性社員の置かれた状況や課題は異なるため、一律の目標を定めることには無理がある。中には、数値目標を達成するために「部下なし課長」のような管理職の肩書を乱発して、数合わせをする企業が出てくるだろう。大事なのは、意欲と能力のある女性が力を発揮できる環境を整えることだ。
●そごう・西武は4店に1店が女性店長
百貨店は、テナントとして入居する専門店の売り場スタッフも含め、女性が圧倒的多数を占め、「女性の職場」の代名詞となっている。しかし、これまで店長はほとんど男性だった。
そんな百貨店の慣行に一石を投じたのが、そごう・西武だ。9月1日の人事異動で女性が店長を務める店舗は国内24店舗のうち6店舗になった。女性店長比率は25%と、業界では圧倒的に高くなり、全社の執行役員、本部および店舗の部長以上の女性は店長を含めて36人に上る。
女性店長会は堤真理・取締役自主商品部長、田口邦子・執行役員CSR推進室シニアオフィサー、野澤恭子・西武岡崎店長、釣流まゆみ・西武東戸塚店長、山本まゆみ・西武所沢店長、加納澄子・西武八尾店長、浮橋和美・そごう柏店長、岩波るり子・そごう西神店長の8人で構成され、毎月の全店長会のタイミングで開催されている。
そごう・西武の傘下の百貨店で初めて女性店長が誕生したのは、1997年2月。そごうと経営統合する前の西武有楽町店だった。経営統合を経て2006年にセブン&アイ・ホールディングスの傘下に入って以降、女性の登用が本格化した。店長は13年8月に4人となり、今年9月には6人に増えた。