「(尖閣諸島をめぐる領有権問題を)中国がこれほど問題視しているのに、日本に問題がないというのは理解しがたい。問題を解決するのがトップの役割」との米倉発言は、「日中間に領土問題はない」という日本政府の見解に、真っ向から異を唱えるものだ。財界総理が総理に面と向かって批判するのだから異例中の異例だ。
「国家間の厳しい交渉の問題で、立場のある方(=経団連の会長ということ)が軽々に言われることではない」と岡田克也・副総理は不快感を示した。岡田副総理は「米倉さんの電話がつながらない」と首を傾げたが、“米ジィ”の子供じみた言動&行動は今に始まったことではない。
「原発ゼロに絶対反対」という自分の言い分が通らないと、国家戦略会議を欠席し、同会議の議員を辞任するぞと圧力をかける。これぞ“米ジィ”流なのである。
11年5月、菅直人・前首相が中部電力浜岡原発(静岡県)の運転停止を要請した時も、“米ジィ”は一気に菅批判のボルテージを上げた。当時も“米ジィ”は「(菅氏が)首相を辞任しないのは教育上よくない」と言い放った。
財界総理が総理を痛烈に批判する姿ばかり目立つ。“米ジィ”に言われなくても時の政権の中枢にいる人々は何が問題なのか判っていた(いや、いるはずだ)。一言多い老人は、少し頭を冷やして考えてみたらいい。
10月2日付『日経産業新聞』の「News α」で安西巧編集委員はこう書いている。
『政策が気に食わないからボイコットし、要望通りなら支持するというのなら、個別企業が自社の利害に応じて支援活動をすればよい。政財界の首脳が人間関係を築き、国の課題について話し合う場だからこそ「経済界」の存在意義がある。東日本大震災以降、日本がいまだに危機を脱していないことを、(財界の)リーダー立ちは胸に刻んでいてほしい。』
“米ジィ”は野田第3次改造内閣の発足にあたり、「近いうちに国民に信を問うべきだ」と早期の衆議院の解散・総選挙を要求した。経済同友会の長谷川閑史・代表幹事はさすがに冷静で「解散の時期を問うよりは、環太平洋経済連携協定(TPP)など待ったなしの政策課題を成し遂げることを強く求めたい」と述べた。早期解散にはこだわらないとの考えを示し、“米ジィ”とは一線を画した。
10月4日、名古屋市内での記者会見で「近いうち国民の信を問うべきだと言ったのは野田首相に対する応援だ」と意味不明なことを口走った。経団連には北京での米倉発言を批判するメールが相次いでいる。