この連載企画『だから直接聞いてみた for ビジネス』では、知ってトクもしなければ、自慢もできない、だけど気になって眠れない、世にはびこる難問奇問(?)を、当事者である企業さんに直撃取材して解決します。今回は林賢一氏が、使い捨てカイロに関する謎について迫ります。
【今回ご回答いただいた企業】
白元様
寒い。そんな時は、やはりホッカイロである。最先端のダウンコートを着ても、新素材の帽子をかぶっても、やはり昔ながらのホッカイロが体感的には一番温かい。何より触れているとホッとする。かといって、肌にずっと直接当てていると、熱い。
「どっちなんだ。ワガママ言うな」と言われかねないが、仕方ない。ところで、ホッカイロの温度はどのくらいなのだろうか。外袋には「最高温度66度、平均温度52度 」と記載されているが、いまいち意味がわからない。熱いと感じるのは最高温度が出ている時なのだろうか。また平均52度 だとすると、それ以下になることもあるのだろうか。もしかすると、ちょうど良い温度にキープする裏技もあるのだろうか。いろいろ気になる。
そこで、ホッカイロを販売する白元様に直接聞いてみた。
「ホッカイロは、どのような状況で最高温度が出るのですか?」
担当者 「都条例」や「JIS」という規格があるのですが、それらに基づいて一定の条件での環境下で計測した数値が記載されています。その一定の条件とは、室温が摂氏20度、湿度が55~70%、無風の室内でテストしております。そこで計測した結果として最高温度66度、平均52度となっております。
–「平均温度」ですから、52度より低いこともあるのですね。
担当者 そうですね。お客様の使われる環境によって温度は変わります。例えば、外気が寒ければ、カイロ自体の温度も下がりますし、室内で使っていただければより熱くなります。かなり環境に左右されてしまうのです。
早く温めるコツはある?
–なるほど。では、温め方のコツなどはありますか?「振って温めるとよい」などと、よく耳にしますが、実際はどうですか?
担当者 封を開けて空気に触れることによって発熱します。それを振ったり揉んだりしても、熱くなるということはありません。外にむき出しになっているよりは衣服の内側などに貼っていただくほうが、より温かさは感じられるかと思います。
—ポケットに入れるとかですね。
担当者 そうです。限られた空間の中であれば熱が逃げにくくなりますので、より温かくなるのです。
–では、封を開けてからすぐポケットの中に入れておくと、早く温かくなりますね。
担当者 そうですね。
–先ほどの、温度20度・湿度55%くらいの状況で、ポケットの中に入れたと仮定すると……
担当者 理屈上は、最高温度に近い温度が出ることになります。
–なるほど。もう一点、「持続時間20時間」と書いてあるのですが、どのくらい誤差があるのでしょうか?
担当者 持続時間に関しましても、先ほどと重複してしまうのですが、お使いになられている環境によって変わりますので、あくまで平均が20時間とお考えください。
–わかりました。
担当者 最後に大変恐縮なのですが、実は今年の1月から弊社はホッカイロの製造・販売権を医薬品メーカーの興和さんに譲渡しております。従って現在はカイロの製造・販売をしていないのですが、まだお客様の手元には白元印のカイロがあると思いますので、ご質問に回答させていただいている状況です。
–ありがとうございました。
カイロに関する疑問は解決したが、最後のコメントに少し驚いてしまった。今年1月にホッカイロの製造・販売の会社が変わっていたというのは知らなかった。それどころか、そもそもの販売元が白元ということも知らなかったので、販売元が変わったと聞いても「ああ、そうですか」という微妙なリアクションしかできなかった。
「知らなかったことが知らないうちに変更されている」
よく考えたら、世の中というのはそうやって回っているのかもしれない。
(文=酒平民 林賢一/ライター)