ちなみに入札不調・不落が供給力不足の兆候や行政の不手際としてニュースになることがあるが、過大に問題視しなくていいだろう。大半は条件を見直した再入札で落札されており、市場の実勢に適応した健全な調整といえる。
(2)ストック累積が大きくなり、人口も経済も低成長になったのだからメンテナンスが大事
日本が戦後の荒廃から営々と積み上げてきた社会資本ストックは、いまや786兆円(09年度)に上る。一方で、年度ごとの建設投資の額をみると、14年度は48兆円で、ピークの84兆円(92年度)に比べて4割減だ。これは、ストックは大きいが毎年の増加は少ない、成熟した社会の自然な姿である。これだけの大きな既存ストックに比べると、新たにこの1年で建設する社会資本の量の比率はかなり小さい。新規工事よりもむしろ既存ストックの維持管理をきっちり行って有効活用するほうが効果の規模は大きい。膨大な既存の社会資本ストックをメンテナンスして、他の産業の基盤となって下支えすることが、今の公共事業の大きな役割だろう。
メンテナンスを十分に行うには、予算額を年によって大きく増減させず、計画的にまめに手をいれておくのが大切である。また、現状では維持管理の作業は経験がいる割には単価が安く、工事会社もなかなかやりたがらない。そうすると、人材も育たない。政権が変わるたびに増減しない安定的で計画的な対応が大切だろう。
(3)人材の育成と確保が必要
建設業に入職した24歳以下の人数の推移をみると、過去15年間で3分の1に低下している。一方で、建設業就業者に占める55歳以上の割合は3分の1であり、高年齢層の比率が高い。このままでは、25年には技能労働者が大幅に減少してしまう(労働力調査、国勢調査をもとに国土交通省が算出)。
いろいろな対策がいわれているが、結局これも政権が変わるたびに増減しない安定した収入と職を確保するのが一番手っ取り早い対策だろう。
(4)公共投資の効果の検証
政府や地方自治体は、無駄な公共投資を減らすために客観的なデータで効果を検証しようとしている。それはそれで結構なことだが、一般市民には難しい計算と数字を見せられても、いつまでたっても納得はできないだろう。一方で、政治家の後援会会長が建設会社の社長であり、その政治家が新設された橋や道路をバックにポスターに出ていれば、一般有権者はどんな数字を見せられてもその道路の費用対効果を疑わしいと感じるだろう。
企業の幹部は、株主代表訴訟で取締役個人が損害賠償の標的になることがありうる。また、公務員は行政訴訟で業務の責任を追及されることもありえる。政治家も、不必要な道路や橋をつくるように働きかけたのなら、納税者から訴えられる可能性をつくるべきだ。