すごく良い結果を追求できるけれどもリスクのある選択肢よりも、ほどほどの良い結果しか出ないかもしれないが、悪い結果が出ても言い訳のストーリーがパーフェクトの選択肢を選びます。言い訳を考えることに一所懸命で、市場や顧客、自社の社員のポテンシャルや慣習などは置き去りになっていきます。結果的に手続きを重視しすぎるようにもなり、意思決定や判断を自らどんどん遅くしていきます。
また、何か不都合な事態が起こった場合に、「私は最初からそう思っていたんだけど、周りがそう言うから」とか「担当していた他の社員がダメだったから」といった具合に、“後出しじゃんけん”のようなことをやったりもします。組織系統がしっかりしていない企業でこうした行動を1回でも取ってしまうと、他の社員が付いてこない、あるいは放っておかれるという現実を、大企業の人は身をもって体験していないことがあります。もちろん、組織やグループの利益やレベル向上よりも、名誉欲など個人の欲を優先させるような態度を示す人にも、社員は絶対に付いていかないでしょう。
●NG2:理想論を掲げるだけで、はじめの一歩がわからない
大企業は、組織を動かしているインフラが完成されています。そうした環境で長年過ごしていた人は、インフラが脆弱な中小企業にやってくると、初日からそのギャップに気がつきます。見たいデータがほとんどなかったり、会社の業績はわかったとしても、部門別業績が把握できなかったりもします。顧客を分類分けして全体の利益を底上げしようと思ったら、顧客の取引情報は営業担当者個人の頭の中にあったりして、一元管理なんてされていない。品質不良を減らそうと思ったら、市場からの反応に関するデータは、仕様が満たされていないことに起因するのか、単なるクレームなのかも分類されていない。在庫を減らそうと思っても、どこにどんな在庫があるのかまったくわからない。
そんなことはザラにあります。しかし、そうした現実と理想のギャップを埋めていこうとした時に、もともとそうした仕組みが整っている企業にいた人にとっては、何から始めていいのかまったくわからなかったりします。
しかし、現場がまず求めているのは、理想に近づくためのはじめの一歩をどうすればいいのかであって、需要と供給のギャップが発生します。立派な人の顧問料で、紙で置いてあるデータをエクセルに入力するパートタイマーが2~3人雇えるならば、そのほうがはるかに会社に貢献できるという、笑えない事態になってしまいます。
大企業出身の顧問が中小企業に行くと、意外に、というよりもほとんどの人がこのギャップに悩まされるというのが筆者の印象です。それでもいったんは苦しみつつも、自分自身で改めて勉強して、階段を一段ずつ上るようにインフラ・仕組みをつくっていく人もいます。そうした場合、雇った側のもともとの期待値とは少し異なるかもしれませんが、高齢の方でもすごく生き生きとした表情をされています。