「憲仁親王妃久子殿下のお言葉は、私ども地方協会の意見そのものです。双方が真摯に受け止め、対立を超えた新体制を希望しています」(四国地区の県協会役員)
憲仁親王妃久子殿下が名誉総裁を務める日本ホッケー協会が、現執行部と旧執行部の対立により、迷走している。各県の地方協会からは、対立の収束を望む声が多く上がっている。憲仁親王妃久子殿下が和解を呼びかけたことにより、一度は沈静化すると見られたものの、結局、対立が解消されることはなかった。
日本ホッケー協会の内紛の構図はあまりにも根深く複雑なので、詳細は割愛するが、対立の引き金となった2つの事柄について述べておきたい。
まずは日本のホッケーの現状だ。女子は2004年のアテネオリンピック、08年の北京オリンピック、12年のロンドンオリンピックと、3大会連続でオリンピック出場を果たしている。一方、男子は1968年のメキシコシティオリンピック以来、50年近くもオリンピックに出場していない。
女子ホッケーが3大会連続でオリンピック出場を果たした背景には、01年に日本ホッケー協会会長に就任した吉田大士氏らによる、財政支援を含めた選手強化策があり、その功績は多くの関係者から評価されている。しかし、その一方で男子ホッケーの強化が急務であり、底上げ策として、日本リーグの「2部制」導入と「単独クラブによる日本代表化構想」が打ち出された。
男子ホッケーの日本リーグは、もともと1部12チームで編成されていたが、上位チームと下位チームの実力差が大きく、競技力の向上のために2部制導入が進められようとした。また、日本代表を強化するためには、複数のクラブの選手による混成チームよりも単独クラブのほうが強化合宿なども行いやすく、実力アップにつながるという考えがあった。そのため、吉田氏が会長を務める日本リーグの表示灯ホッケーチームを単独で日本代表にしようとした。
しかし、この2つの施策が大きな反発を招くことになった。2部制になれば、1部から脱落するチームも出てくる。そういったチームを中心に猛反発を呼び、単独クラブによる日本代表化構想も「独善的」と批判された。
これを契機に、男子日本リーグを脱退するチームが相次ぎ、内紛は表面化する。一方で、こうした旧執行部の施策に反対する関係者が「新しい日本のホッケーを考える会」(以下、考える会)を組織して対立姿勢を強め、14年5月には旧執行部の退陣を要求、同年6月8日の総会で旧執行部を解任した。これに対して、旧執行部は議事提案の要件を満たしていない上、反論の機会すら与えられていないとして解任決議の取り消しを求め、東京地方裁判所に提訴した。