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垣田達哉「もうダマされない」(3月13日)

消費者庁、消費者より大企業を優先する“歪んだ配慮” 景品表示法違反摘発急増の怪

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表

誰のための摘発か

 もう一つの消費者庁の思惑は、「どんな大手でも摘発するぞ」という企業への警告と、「こんな事例も違反になるよ」という事例発表をして、企業が失敗しないようにガイドラインを示しているのである。

 実は、それはもう1年前に始まっている。消費者委員会で、課徴金制度の導入が検討されている最中の14年3月、二酸化塩素を利用して生活空間での除菌や消臭効果をうたった商品が「根拠がない」と措置命令を受けている。一度に17社の商品を摘発したのは、消費者庁が創設されて以来、初めてのことだ。

 この摘発も、課徴金制度導入を見据えた消費者庁が、大手企業へ「そんなあいまいな根拠だと、次は罰金を取るぞ」と警告をしたと考えるべきだ。「処分の対象のうち、売り上げが多いという『クレベリンゲル』を販売する大幸薬品が、除菌・消臭の効果を実証するため、2012年度までの5年間に9億円以上の研究開発費を投入した」(14年4月9日付読売新聞より)としても、消費者庁は「それが一企業の実証だけでは不十分だ」と言っているのである。

 一見、消費者のために不当表示を相次いで摘発しているかのように思ってしまうが、実は企業のために「早めの摘発と警告をしている」のだ。消費者庁の存在価値は、課徴金制度が導入されてから、どのくらい摘発できるかにかかっている。本当に消費者のための消費者庁に変わることができるのか、しばらくは見守っていきたい。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

注1:14年3月、1事案(二酸化塩素を利用した空間除菌を標ぼうするグッズ)で17社に措置命令が下されたが、その場合、措置件数は17件になる

注2:13年12月、「寝ている間に勝手にダイエット」と表示していたサプリメント「夜スリムトマ美チャン」は、2年間で約50億円の売り上げがあったとされている

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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