消費者庁、消費者より大企業を優先する“歪んだ配慮” 景品表示法違反摘発急増の怪
誰のための摘発か
もう一つの消費者庁の思惑は、「どんな大手でも摘発するぞ」という企業への警告と、「こんな事例も違反になるよ」という事例発表をして、企業が失敗しないようにガイドラインを示しているのである。
実は、それはもう1年前に始まっている。消費者委員会で、課徴金制度の導入が検討されている最中の14年3月、二酸化塩素を利用して生活空間での除菌や消臭効果をうたった商品が「根拠がない」と措置命令を受けている。一度に17社の商品を摘発したのは、消費者庁が創設されて以来、初めてのことだ。
この摘発も、課徴金制度導入を見据えた消費者庁が、大手企業へ「そんなあいまいな根拠だと、次は罰金を取るぞ」と警告をしたと考えるべきだ。「処分の対象のうち、売り上げが多いという『クレベリンゲル』を販売する大幸薬品が、除菌・消臭の効果を実証するため、2012年度までの5年間に9億円以上の研究開発費を投入した」(14年4月9日付読売新聞より)としても、消費者庁は「それが一企業の実証だけでは不十分だ」と言っているのである。
一見、消費者のために不当表示を相次いで摘発しているかのように思ってしまうが、実は企業のために「早めの摘発と警告をしている」のだ。消費者庁の存在価値は、課徴金制度が導入されてから、どのくらい摘発できるかにかかっている。本当に消費者のための消費者庁に変わることができるのか、しばらくは見守っていきたい。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)
注1:14年3月、1事案(二酸化塩素を利用した空間除菌を標ぼうするグッズ)で17社に措置命令が下されたが、その場合、措置件数は17件になる
注2:13年12月、「寝ている間に勝手にダイエット」と表示していたサプリメント「夜スリムトマ美チャン」は、2年間で約50億円の売り上げがあったとされている