一方、大手行とは対照的に顔色がさえないのが、人口減少など地域経済の縮小にあえぐ地域銀行(地方銀行・第二地方銀行)である。決算内容は大手銀行と同じく債券売買益や引当金の戻り益が寄与し、相応の数字を計上すると見込まれているが、海外部門の収益は乏しく、利ざやの縮小に伴い本業の儲けはジリ貧の銀行も少なくない。
そうした地域銀行にあって、比較的規模の大きい上場地域銀行が6月の株主総会を控え、気をもんでいるのがROE(自己資本利益率)の低さだ。
「日本生命保険は、ROE5%を基準に経営判断するんです」
ある地銀幹部は、ため息交じりにこうつぶやく。日本生命は株式を保有する投資先企業の議決権行使に関する新基準として、継続的にROEが5%を下回る場合、株主総会の議案を厳しく精査して対話を通じて改善を求める方針である。改善が見られない場合はトップの選任に反対したり、株式の売却も検討するという。
これまで安定株主の代表格とみられ、時価9兆円の株式を保有し、上場企業の2割で10位以内の大株主である日本生命がROE重視の姿勢を鮮明にしたことに、地域銀行の経営陣は戸惑いを隠せないでいる。
株式大量売却の可能性も
また、ROE重視の圧力は海外からも押し寄せている。米国の大手議決権行使助言会社ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)が公表した日本向け議決権行使助言基準(15年版)では、過去5年間のROEの平均値が5%を下回る企業について、株主に経営トップの取締役選任議案に反対するよう勧告している。
こうした機関投資家等の株主がROE重視の姿勢に転じた背景には、金融庁と東京証券取引所が6月から導入するコーポレートガバナンス・コードの影響がある。同コードでは政策保有株式(経営参加や系列化、営業関係強化などを目的として保有する株式)について「取締役会でリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しをしっかりと検証し、それを反映した保有の狙い、合理性について具体的な説明を行うべき」と明記されている。
裏を返せば、保有株式について合理的な説明ができないものは売却されかねないというわけだ。その合理的な説明の最大の要因がROEであり、株主資本がどれだけ収益に結びついているか、投資効率が問われる。
「上場地域銀行84行のうち、15年3月期決算ベースで50行以上がROE5%を下回るとの試算もあり、戦々恐々としている」(ある地域銀行幹部)という。特に外国人持ち株比率の高い地域銀行の経営陣は、株主総会を前に眠れない夜が続きそうだ。
(文=編集部)