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松崎のり子「誰が貯めに金は成る」

レジ袋有料化、タバコ&第三のビール値上げ…2020年“家計直撃”の出費増の数々、来年は?

文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト
レジ袋有料化、タバコ&第三のビール値上げ…2020年家計直撃の出費増の数々、来年は?の画像1
「gettyimages」より

 新型コロナ禍に揺れた2020年も、もうすぐ終わる。思えば、スタートにあっては東京オリンピック・パラリンピック特需への期待に沸き、当時の安倍政権は歴代最長となるのが確実で、あわや自民党総裁4期目も? との声もあったほどだ。それが、まさか、こんな年末になるとは。

 コロナを恨んでも仕方ないが、振り返ってみると、それに追い打ちをかけるような政策が粛々と、見直されることなく実行されてきたのも事実だ。決まった以上、見直しも後戻りもあり得ないのがこの国の得意芸とはいえ、庶民の生活にはダブルにもトリプルにもダメージとなった。

 年の瀬にはあちこちで「今年を振り返る」企画が行われるが、家計にとってどんなプラスとマイナスがあったのか、今年の振り返りをしてみよう。

キャッシュレス・ポイント還元はあっさり終了

 まず、2019年から実施されていた「キャッシュレス・ポイント還元」事業が6月末で終了した。キャッシュレスで支払った金額の最大5%を還元する施策で、もともとは消費税10%へ引き上げのダメージを緩和するためのもの。しかし、コロナ禍のせいで、この時期の消費の落ち込みは“10%だと買い物しなくなるね”なんてかわいいレベルではなく、もし経済を回したいのなら、なぜ延期しなかったのか。

 特に、人やモノとの接触を避けてオンラインでの買い物が増えたり現金を避ける心理が浸透しつつあったのに、そこでキャッシュレス決済還元をあっさりやめてしまうとは。もし、5%の還元があれば、そのぶん生活費が浮くというのに。

 5000円まで付与してあげるマイナポイント事業が控えているからいいじゃないかと考えたのかもしれないが、マイナンバーカード取得から始まる還元制度より、今手元にあるカードを使える制度を延ばした方が簡単に見えるが。なんなら特別定額給付金の10万円を振り込む代わりに、この制度を流用してポイントで配れば早かったし、有効期限をつければ必ず使ったのではと思う。

レジ袋有料化でなぜか紙袋も有料に

 これまた7月1日から実施と決まっていたのが「レジ袋有料化」だ。それに先立って、大手流通では4月から有料化が始まっていた。この制度も、そもそもはオリンピック・パラリンピックで来日する外国人客に「日本も脱プラに前向きに取り組んでいますよ」アピールをしたくて7月実施と決めたようなもの。オリ・パラが延期になり、外国人は入国すらできず、アピールの必要もなくなったのに、有料化だけは粛々と実行された。

 うっかりエコバッグを忘れると、そこでレジ袋代が発生する。レギュラーサイズなら2~3円だが、大サイズになると5円取られることも。洋服を買っても袋代を取られるのが痛い。食材と違って、通常サイズのエコバッグには入らないからだ。

 本来は対象外のはずの紙袋も、なぜか有料化されている。先日、カバンを買ったとき、それを入れる紙袋を10円で買うかと問われ、さすがに捨てるだけなのにと断った。そのため、もともと持っていたリュックに加えて、新品のカバンを一緒に抱えるはめになったのも情けない。

 負担するのは消費者だ。さらには、これまでゴミ袋としてレジ袋を再利用していた家庭は、改めて捨てるだけの袋を買わなくてはならなくなったのも、何かおかしい。

 おまけに、レジの列が長くなった。店によっては自分でエコバッグに詰めるため、そこで時間がかかり、スムーズに客が流れなくなったからだ。感染対策が叫ばれる今、本当に必要な施策だったのかとしみじみ思う。

タバコ&第三のビールが値上げ

 10月1日から価格が上がったのは嗜好品だ。タバコは1本当たり1円の増税だが、販売減の影響を受けてコストも上昇したとして、日本たばこ産業はほとんどの銘柄で1箱あたり50円値上げした。

 庶民の味方であった第三のビール(新ジャンル)も酒税が上がった。350ml缶あたりの税額は28円から39円へ。逆にビールは下がって、77円から70円となった。これが店頭価格でどうかといえば、350ml×6缶パックの価格を増税前後で比較すると、ビールの場合、A銘柄は1039円から999円に、B銘柄は1038円から978円に。第三のビールはC銘柄が569円から649円へ、D銘柄は568円から648円へ、という上がり方だ(異なる銘柄で比較)。

 スーパーのチラシで定点観測しているが、数字はここから動きがない。第三のビールに関しては酒税が上がった以上に値上がりしているのが見て取れ、がっかりする。そもそも軽減税率の対象外でもあるので、ダブルパンチなのだ。現在は外食が大ダメージを受けており、事業用ビールの需要が減って企業側も厳しいだろうに、一般用まで値上げしては売り上げ減につながらないのか。本当にタイミングが悪いと思う。

2021年は火災&地震保険料が値上げに

 振り返ってみると、このように庶民生活にじわじわ影響を及ぼす実質値上げが行われたのが2020年だ。むろん、10万円の給付金をはじめ、さまざまな救済措置も取られた。高等教育の無償化措置もスタートし、助かっている家庭もあるだろう。こうしたプラスもあったのだが、何せ働く人の給料が今後増えそうにないのはわかっている。ボーナスに至っては、期待できないとのわびしい話ばかりが聞こえてくる。さらに、家中心の生活となり、食費や光熱費・通信費などの生活支出が増加しているのは言うまでもない。

 では、2021年はどうなるのか。まず、値上げが決定しているのが火災保険料地震保険料だ。火災保険は昨今の自然災害の増加を受けたもので、大手保険会社では1月から上がるところが多い。特に近年は、大規模水害により家が流されたり浸水する等の被害が続出しているため、ハザードマップに連動した保険料設定も取り入れられる。つまりは、浸水リスクが高い場所に立つ家は、リスクの低い家に比べて保険料が上がる可能性があるのだ。

 さらに、地震保険料も1月に改訂される。もともと3段階で引き上げることが決まっており、2017年、2019年と続いた改定の3回目となる。全国平均で5.1%の値上げになるが、むろんこちらも都道府県にとって異なる(下がる地域もある)。地震保険は火災保険とセットで入る必要があるため、苦しいかな「ダブル値上げ」になりそうだ。

 そして、2020年にも改定があったタバコは、2021年10月にも増税の予定がある。愛煙家の懐は、ますます寒くなるだろう。

 おっと、そういえば、値上げではなく下がりそうなものもあったではないか。菅義偉首相肝煎りの政策である携帯電話料金の引き下げだ。月額5000円を目安に下げよと、の号令はNTTドコモが従ってくれて実現しそうだ。民間企業に要求するばかりではなく、ついでに消費税の税率もちょっとばかり引き下げてもらえるとうれしいのだが。
(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。
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