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松崎のり子「誰が貯めに金は成る」

今さら聞けない「Go To」補助リスト…そもそも“全国でにぎわいを創出”して大丈夫なのか?

文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 2020年の「特別な夏」が過ぎていこうとしている。本来なら最も消費意欲が盛り上がる期間だが、帰省や旅行は自粛ムードが漂い、巣ごもりの反動リベンジ消費やリモートワーク特需もヤマを越えて一服といったところのようだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大に終わりが見えない状況では、積極的に出歩いてお金を落とそうというわけにもいかない。そんな中でも粛々と進んでいくのが、政府の「Go To キャンペーン」事業だ。

 混乱を振りまきつつ前倒しでスタートした「Go To トラベル」に続き、今後も「Go To Eat」「Go To Event」「Go To 商店街」の各キャンペーンが控えている。早ければ8月末の開始を見込んでいたようだが、このまま9月にずれ込みそうだ。うまく運用されるのかはさておいて、消費者である私たちにどんな恩恵があるのかをまとめよう。

「Go To トラベル」は厳しい滑り出しに

 そもそも、Go To キャンペーン事業の主旨はこうだ。

「新型コロナウイルスの感染拡大は、観光需要の低迷や、外出の自粛等の影響により、地域の多様な産業に対し甚大な被害を与えている。このため、新型コロナウイルス感染症の流行収束後には、日本国内における人の流れと街のにぎわいを創り出し、地域を再活性化するための需要喚起が必要」

「今回の感染症の流行収束後において、甚大な影響を受けている観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテイメント業などを対象とし、期間を限定した官民一体型の需要喚起キャンペーンを講じる」(国土交通省資料より)

 さらに「(…雇用の維持と事業の継続を最優先に取り組むとともに、)」との一文が添えられており、経済の落ち込みと失業者の大量発生を回避するためにも、政府がお金をばらまくしかない。そのために第一次補正予算で1兆6794億円が計上され、取った以上はしっかりと使わなくてはいけないのだろう。

 とはいえ、先陣を切った「トラベル」がその目的を叶えているかは、今のところ微妙だ。民間が発表しているアンケート結果では、「あなたはGoToキャンペーンを利用して旅行に行きたいと思っていますか」という設問に対し、半数を超える50.7%が「旅行に行きたいと思わない」と回答しているという(株式会社ブランド総合研究所調べ「GoToトラベルキャンペーンに関する意識&ニーズ調査」より)。

 別の調査でも、キャンペーン利用意向に対して、「今後利用するかは未定」が、関東・関西エリアの人どちらも5割を超えている(アスマーク調べ「Go To Travelキャンペーンに関する調査 東西比較」より)。滑り出しは厳しい。

「Go To Eat」は食事券とポイントの2本立て

 Go To トラベルでは、国内旅行を対象に宿泊・日帰り旅行代金の2分の1相当額が補助されることになっている。正確には、補助のうち7割は旅行代金の割引に、残り3割は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与される(クーポンのシステムは7月スタートに間に合わず、9月開始とされている)。なお、1人1泊あたり2万円が、日帰り旅行の場合は1万円が上限だ。

 では、今後スタートする他のGo To キャンペーンはどうなっているのか。順番に、政府の資料を見ていこう。

 まずは「Go To Eat」。目的は「感染予防対策に取り組みながら頑張っている飲食店を応援し、食材を供給する農林漁業者を応援するもの」で、農林水産省の管轄だ。内容は、(1)登録飲食店で使えるプレミアム付食事券(2)オンライン飲食予約サイト経由で飲食店を予約・来店した消費者に対し、次回以降に使用できるポイントを付与、の2本立て。

(1)の食事券は25%のプレミアムが上乗せで、たとえば1万2500円分使える券を1万円で購入できる(1回につき2万円まで購入可能)。これは都道府県など地域ごとに登録した飲食店で使え、テイクアウトやデリバリーでも利用可能。ただし、お釣りは出ない。地域振興券のようなイメージだろう。

(2)の来店ポイントは、昼食時間帯は500円分、夕食時間帯(15時~)は1000円分のポイントを付与するとあり、付与の上限は1回の予約あたり10人分(最大1万円分のポイント)という。

 つまり、飲食代に関係なく、来店ごとのポイント付与らしい。ただ、原則は「飲食店を予約・来店し、店内で食事をしていただいた場合に、ポイント付与することとしており、テイクアウト、デリバリー、ケータリングは、ポイント付与の対象外となります」(キャンペーン事業に関するQ&Aより)という。むろん、感染対策をしっかりしている店が対象なのだろうが、コロナ下にあって「来店が原則です」というのも、やはりズレている印象だが。

“密”の原因になりそうな「イベント&商店街」

 続いて「Go To Event」。こちらの管轄は経済産業省となる。

 イベント・エンタメ関連のチケット等を購入する際に、(1)チケット代の2割相当額の割引(2)チケット代はそのままで、その2割相当のクーポンやポイントを上乗せで付与し、物販や別のチケット購入に充ててもらう、となっている。

 購入するチケットは、オンラインでも店舗でもイベント会場でも可。しかし、対象となるイベント範囲がまた広い。「コロナの影響を受けた文化芸術やスポーツ等」とあるが、文化芸術の例として音楽コンサート、伝統芸能、演劇、美術・博物館、映画館、それに遊園地までも含む。さらに、無観客のオンライン配信などもカバーするらしい。

 しかし、チケット業者や対象となるイベント選定など、始動までの道のりは長そうだ。筆者は野球ファンだが、果たして今シーズン終了までに間に合うのか。そもそも感染拡大のあおりを受けて、球場入場者を5000人までに絞っている状況なのだが、政府が人の移動をすすめていいのかと揶揄された「トラベル」の二の舞になるのではと心配だ。

 最後は「Go To 商店街」。こちらは経済産業省の外局にあたる中小企業庁が管轄する。

 しかし、この「商店街」の目的が皮肉だ。「…立地や集客機能に優れた商店街において、人と街のにぎわいを作り出し、商店街等のにぎわい回復を図ることを目的とする」というのだ。

 そのため、この事業のお金の投じ方としては消費者に直接的なメリットではなく、商店街イベントやプロモーションにお金を出そうというもの。地域産品配布等による集客や、食べ歩き・飲み歩きツアーの開発なども想定されている。秋冬にかけて全国でにぎわいを創出して、果たして大丈夫なのか……。

 目的は理解できるが、すべてにおいて無理があると感じてしまうのが、このGo To キャンペーンだ。どんどん飲食店に行こう、イベントに参加しよう、商店街に繰り出そう――それは、「人を一カ所に集めよう」に他ならない。

 話を戻せば、そもそも当キャンペーンの前提が「新型コロナウイルス感染症の流行収束後」で、キャンペーン予算が成立した4月には「きっと夏には収束しているだろう」との楽観ムードがあったため、皮肉にも感染拡大中に“国内における人の流れと街のにぎわいを創り出す”ための施策になってしまっている。コロナ対策をしましょうと言いつつ、「密」の原因をつくりかねない、まさに「トラベル」同様に大矛盾キャンペーンに見えはしまいか。

 とはいえ、予算も取ってしまったし、飲食もイベントも地場商店街も傷んでいるし、やるっきゃないのだろうが、やはり大前提の「コロナ収束後」を守らないと、どうにもちぐはぐなことになりそうだ。それでも予定通りやるのであれば、個人の努力・忍耐力・精神力頼み以外に、どうすれば我々がGo Toに参加する気になれるのか、やはりそこを事業のスタート地点にしてほしいと切に望む。

※記事内の「Go To キャンペーン」の内容は現在公開されている資料によるもので、実施にあたり変更される可能性があります。

(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。
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