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松崎のり子「誰が貯めに金は成る」

Go To トラベルや10万円給付金は課税対象?今年の年末調整の注意点…税金が軽くなる人も

文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 年末調整の季節がやってきた。しかも、今年はいろいろと変更点があり、給与をもらって働く人にはややこしい手続きとなりそうなのだ。

 そもそも年末調整とは、「だいたいこのくらいだろうと想定して天引きしていた税金を、正しい税額に調整し直す」ために行われる。給与明細から毎月引かれている所得税は概算、かつ個人の状況をすべて反映していないため、払いすぎの状態にあることが多い。

 税金の金額は2020年1月から12月までの所得に応じて決まるのだが、その人ごとに「所得控除(所得金額から差し引かれる金額)」は異なる。たとえば、生命(医療)保険に入っている人が受けられる「生命保険料控除」や、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用している人が受けられる「小規模企業共済等掛金控除」なども金額がバラバラだ。それらを差し引いた上で、最終的な「課税所得」が算出されて正確な税額が決まり、それに照らして払いすぎの場合は戻ってくる。

 だから、年末調整の書類にもれなく記載することが大事なわけだ。特に、今年はコロナ禍で収入自体が昨年より下がった人もいるだろう。例年より調整で戻ってくる額が大きい可能性もある。あまりうれしい事態ではないが。

 そして、今回の年末調整は、2018年の所得税改正で決まった変更が実施される。まず、誰でも一律で控除される「基礎控除」がこれまでの38万円から48万円に10万円上がる(合計所得2400万円以下の場合)。その代わり、会社員が引くことができた「給与所得控除」は10万円減る(年収850万円以下の場合)。そのため、このラインに収まる会社員はプラスマイナスゼロで増減なしだが、年収が850万円を超える高所得者の控除は小さくなり、税負担は増す。

 逆に、自営業やフリーランスで働く人は、基礎控除が増えた分、税金が軽くなる可能性があるわけだ。これは、働き方の多様化に応じた改革とされている。

年末調整の用紙にもデジタル化の波が

 この改革の影響で、今年の年末調整の用紙は昨年とは様変わりするようだ。小さな欄にぎっしり専門用語が詰まった、あの用紙を見るだけで頭痛がするという人も多いだろう。それに配慮したのか、それとも政府が推し進めるデジタル化の一環か、国税庁は「年末調整手続きの電子化への取り組み」を進めるという。たとえば、こうだ。

1 従業員が、保険会社等から控除証明書等を電子データで受領

2 従業員が、国税庁ホームページ等からダウンロードした年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(国税庁が無償で提供する)に、住所・氏名等の基礎項目を入力し、1で受領した電子データをインポート(自動入力、控除額の自動計算)して年末調整申告書の電子データを作成

3 従業員が、2の年末調整申告書データ及び1の控除証明書等データを勤務先に提供

4 勤務先が、3で提供された電子データを給与システム等にインポートして年税額を計算

 この導入により、勤務先の作業負担が減り、書類保管コストも削減できるという。確かに、書類にちまちま記入するよりも、画面の通りに入力していく方が気が楽という人もいるだろう。

 しかし、マニュアルを読んだところ、けっこう膨大な項目に入力する手間はある。「PCは苦手でなるべく触りたくない」世代や業種の人にとっては、それはそれで気が重い。紙かデジタルか、勤務先がどちらを選ぶかをじっと待つしかない。

コロナ禍で受け取った給付金には税金がかかる?

 今年は、例年にないお金と税金の問題もある。コロナ対策で多くの給付が行われたからだ。たとえば、国民全員に配られた特別定額給付金10万円や、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金など、実に多種多様だ。これらを受け取っていると、所得として課税の対象になるのだろうか?

 答えを言えば、この両方は非課税だ。他にも、子育て世帯への臨時特別給付金、学生支援緊急給付金、低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金、新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金などが、非課税扱いとなっている。逆に、課税されるものもある。事業所得者向けの持続化給付金、家賃支援給付金等は事業所得等に区分されるので、経費を差し引いた金額が課税対象になる。

 実は、こんなものまであった。Go To トラベルで旅行した際の国の補助額は、なんと課税対象だという。以下は「Go To トラベル事業 Q&A 集」より抜粋。

「Q Go To トラベル事業を利用して旅行した場合、国による支援額(旅行代金の2分の1相当額)は課税対象になるのか。

A Go To トラベル事業は国内旅行を対象に、旅行業者等を通じて、宿泊・日帰り旅行代金の2分の1相当額の給付を旅行者に対して行うものであり、この給付は税務上、旅行者個人の一時所得として所得税の課税対象となります」

 えっ、そんなの聞いてないよ! とあわてる人が多そうだ。しかし、ご安心を。まだ続きがある。

「ただし、課税対象になるとはいえ、一時所得については、所得金額の計算上、50万円の特別控除が適用されることから、他の一時所得(懸賞や福引きの賞金品や競馬や競輪の払戻金等)とされる金額と Go To トラベル事業による給付額との合計額が年間50万円を超えない限り、旅行者個人の課税所得は生じません」

 一時所得とは事業や給与以外に得た所得を指し、これには50万円の特別控除が適用されるため、他の一時所得との合計額が50万円を超えない限り、課税対象にならない。万馬券で相当の金額が儲かったという人は計算した方がよろしいが、Go To トラベルだけなら一泊4万円の旅行に25回以上行った人だけが心配すればいいことになる。

 また、一般的な給与所得者は、給与以外の所得金額が年間20万円を超えない場合は確定申告をする必要がない。一時所得の金額から50万円を引いた残り金額の2分の1が課税対象になるわけだが、その計算上では他の一時所得との合計額が年間90万円を超えない限り(90万円-50万円×1/2)、気にしなくてよさそうだ(持続化給付金を受け取った人は別だが……)。

 そもそもコロナ禍で冬のボーナスが減りそうという時代に、一時所得が90万円なんて人がゴロゴロいるはずはない。庶民は面倒くさがらずコツコツと年末調整を行い、1円でも税金を取り戻すよう励むのが正解だろう。

(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

松崎のり子/消費経済ジャーナリスト

消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。
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