【ドバイ時事】アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の気候変動対策を議論する国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、世界の気温上昇を1.5度までに抑える目標の達成に向けた議論が行われている。今回は、進捗(しんちょく)状況を点検する手続き「グローバルストックテイク」を初めて実施。各国の温室効果ガス削減目標の引き上げにつながるかがポイントになる。
―1.5度目標とは。
産業革命前と比べた今世紀後半の世界の気温上昇を抑える目標のことだ。気温上昇を1.5度までに抑えると、異常気象による自然災害や海面上昇などのリスクを軽減できる。2020年以降の温室ガス排出削減に関する国際的な枠組み「パリ協定」で掲げられた。
―グローバルストックテイクとは。
直訳すると「世界全体での棚卸し」で、略語はGST。パリ協定に参加する全ての国は、5年ごとに削減目標を強化して提出し直すことが義務付けられている。GSTとは、その前に世界全体の温室ガス削減目標や実績の状況を科学的に点検する手続きのこと。この手続きを通じ、各国は1.5度目標の達成に行動や支援がどれぐらい不足しているのかを共有する。
―1.5度目標の現状は。
各国が現在、取り組んでいる排出削減だと1.5度目標の達成に程遠いことは、さまざまな研究機関の分析で明らかだ。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が今年3月に公表した報告書は、このままでは気温上昇が30年代前半には1.5度、今世紀末には3度前後に到達すると警告。目標達成には世界全体で19年比で30年までに43%、35年までに60%削減し、50年ごろには実質排出ゼロにする必要があるとしている。
―どのような点検結果になりそうか。
進捗点検は世界全体が対象で、対策が不十分な国を名指しで批判する仕組みにはなっていない。IPCC報告書は「この10年で実施される選択と行動は今後数千年にもわたって影響を及ぼす」と指摘しており、点検の結果、今後10年の行動指針となる強い政治的メッセージを盛り込めるかに注目が集まる。
温室ガスの大量排出源である石炭や石油など化石燃料の「段階的廃止」といった具体策に踏み込むかどうかも焦点だ。
―点検結果の評価は。
COP28の終了後、各国が1.5度目標に沿って実効性のある30年や35年を目標年度とした削減目標を提示すれば、点検は成功したと言える。ただ、削減目標は各国が自主的に決めるため、経済成長に伴い温室ガス排出が増える新興国は目標値の引き上げに慎重になる可能性がある。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/12/04-16:24)