政府は21日の持ち回り閣議で、2024年の経済財政運営の基本指針「骨太の方針」をほぼ原案通りに決定した。岸田文雄首相は同日、首相官邸で開かれた経済財政諮問会議で「デフレから完全に脱却し、成長型の新しい経済ステージへ移行する千載一遇のチャンスを迎えている」と指摘。賃上げの定着や中堅・中小企業の稼ぐ力の向上を目指す考えを強調した。
政府は骨太方針で、「今後3年程度で必要な制度改革を含め集中的な取り組みを講じる」ことにより、社会保障などを持続させるのに必要とされる実質GDP(国内総生産)1%超の成長を安定的に確保する考えを示した。その上で、2%の物価安定目標が持続的に実現できれば、40年ごろに「名目GDP1000兆円が視野に入る」としている。
政府は毎年6月ごろ骨太方針を策定し、政権の重要課題や翌年度予算編成の方向性を示している。首相は「予算編成や制度改正で具体化し、速やかに実行する。多くの世代、次の世代が未来に希望を持てる経済社会を実現する」と話した。
今年の方針では足元の経済状況について、好調な春闘の結果や活発な企業の設備投資を踏まえ、「成長型経済を実現させる歴史的チャンス」と分析。人口減が本格化する30年度までの取り組み方針を「経済・財政新生計画」として示した。
具体的な政策では、賃上げ定着に向けた全世代のリスキリング(学び直し)の推進▽中小企業の価格転嫁や省力化投資の支援▽次世代半導体の量産に向けた法整備の検討▽一般道での自動運転の通年運行を25年度に全都道府県で計画・実施―などを盛り込んだ。
国と地方の基礎的財政収支(PB)については、25年度に黒字化を目指す目標を3年ぶりに明示し、その後も「後戻りさせない」と強調した。ただ、「これらの目標でマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」とも明記し、自民党の財政再建派、積極財政派の双方に配慮した。
政府は21日、成長戦略を示す「新しい資本主義」実行計画の改定も決定した。本人のスキルなどに応じて配置を決める「ジョブ型人事」の導入推進や、ゲームやアニメなどコンテンツ産業の海外展開促進などに向けた方策を盛り込み、骨太方針にも反映させた。
◇「骨太の方針」のポイント
▽デフレから完全脱却し成長型の新しい経済ステージへ移行
▽経済・財政・社会保障の持続へ2030年代以降、実質GDP成長率1%超を安定的に確保
▽こうした経済では40年ごろ名目GDP1000兆円が視野に
▽経済構造変革へ30年度までの取り組みを「経済・財政新生計画」として提示
▽国と地方の基礎的財政収支の25年度黒字化目標を3年ぶりに明示。その後も「後戻りさせない」
(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/06/21-18:52)