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物価高+増税で“我慢の夏”に…夏休みも旅行や買い物を控える傾向

文=Business Journal編集部
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「Getty Images」より

 物価は「値上げの夏」、家計は「倹約の夏」、ゆえに楽しみは「我慢の夏」――もはや酷暑は天候だけの問題ではなく、家計にとっても、この夏はいかにも「酷」である。

 6月下旬、ジャストシステムのアンケートモニター調査において、子供を持つ20歳から60歳台までの夫婦など1000人にアンケート調査を行ったところ、この夏、円安・物価高・ステルス増税を受けて、家計のやりくりについて「気を遣う」が48.2%、「どちらかといえば気を遣う」が37.1%、気を遣う人は合わせて85.3%にも及んだ。

 子供を持つ家庭のおよそ9割がレジャーを控えるか、あるいは手近で安価な「安近短」で割り切る以外にない。30年以上も前に、カード会社が「カードを使って海外旅行をしよう」と、暗に借金生活を煽り立てるテレビCMを盛んに流していたが、いまどき、そんな罠に誘導される人はほとんどいまい。アンケート調査には、身の丈に合わせるという道理が反映されている。

 レジャーの例として、「旅行」を取り上げよう。仮に家族4人(両親と子供2人)が4泊6日のハワイ旅行に行けば、費用はいくら発生するのか。旅行サービスプロバイダー「トリップドットコム」の公式サイトに、2024年5月9日付け執筆の情報が掲載されている。

 この情報によると、家族4人で行く4泊6日のハワイ旅行の費用は、およそ80万円。内訳は、航空券が40万円以上、ESTA代(電子渡航認証システム)が84ドル(1ドル160円で換算すると1万3440円)、ホテル代が1室3万5000円×4泊、食事代・カフェ代4万円×6日、交通費が6000円×4日、Wi-Fi代が6000円 お土産が5000円以上、海外保険が2000円×6日である。80万円という金額は、一部の富裕層にとっては「まあ、そんなもんだろう」と看過できる水準かもしれないが、たとえ上場企業の社員でも、逡巡せざるを得ないのではないか。

 労務行政研究所が東証プライム上場企業(回答114社)を対象に、2024年夏期賞与の妥結額を調査した。その結果は、全産業平均で84万6021円。対前年同期比で4.6%の増加で、1970年の調査開始以来、初めて80万円を上回ったが、家族4人でハワイに旅行すればまるまる費消されてしまう。

 中小・零細企業の社員にいたっては、それどころではない。クラウド業務系システム開発のフリーウェイジャパン(東京都中央区)が中小・零細企業を対象に実施した調査(回答は個人事業主を含む259人)によると、24年の夏期賞与支給額は平均35万円、ボリュームゾーンは10~20万円未満だった。冬の賞与と合わせても家族4人のハワイ旅行費用を捻出できない。

 冒頭に紹介したジャストシステムの調査では、夏休みに我慢する予定のものは上位から「国内旅行(35.5%の人が該当すると回答)」「ファッションアイテム(34.7%)」「外食(33.2%)」「テーマパーク訪問(25.1%)」と続いた。もはや海外旅行は視野に入っていないようで、庶民のレジャーから遠のいてしまった。苦渋のコメントも目立つ。「夏休みの予定など立てていない。家で過ごす」「常日頃我慢」「常に節約」「ほとんど我慢している」など活動を自粛して、文字通り「休み」を強いられそうだ。

 7月初旬の週末、倹約の夏を象徴するような光景に遭遇した。午後6時過ぎに入店した都内の「サイゼリヤ」は満席で、5組が入り口で待っていた。およそ15分後に席に案内されたが、店内を見渡すと客層は老若男女におよび、各席が「サイゼリヤ呑み」で賑わっていた。ファミリー客もいる。それぞれに倹約しているのだろう。

 席に着いた壮年2人がオーダーしたのは、「白ワイン・デカンタ(500ml)」(税込み400円)×3、「モツァレラトマト」(430円)、「エスカルゴのオーブン焼き」(400円)、「ムール貝ガーリック焼き」(400円)、「辛味チキン」(300円)、「ラムの串焼きWサイズ(4本)」(800円)、「柔らか青豆の温サラダ」(200円)×2、「アスパラガスの温サラダ」(300円)×2、「マルゲリータピザ」(400円)。

 お開きにした途端、「今日は食べ過ぎたな」と互いに苦笑したが、支払いは4930円。1人当たり2465円だった。食べ過ぎずに料理をもう2品減らしておけば2000円前後で済む計算だ。精算を済ませると「この店はコスパがいいね」「またサイゼリヤ呑みをしようや」。この倹約手段に我が意を得たりと合点して、2人は駅に向かったのだった。2人にとって、これもたまの息抜きにすぎない。外食の頻度を減らした上で、なお倹約できる店を選んでいるのだ。

 物価高・国民負担増が続く中、夏休みも外出を控え、ひたすら倹約に励むファミリーの姿が浮かび上がってくる。内にこもり解放感を満喫できなれば、些細なことにイラついて家庭内に不穏な空気も流れかねない。「物価が高すぎて子どもたちの夏休みの予定が立てられず焦っています。妻も子供の世話でストレスがたまり、夫婦喧嘩も増えそうです」と語るのは小学生の子供2人を持つ高橋さん(仮名・東京在住)。さらに「本当は旅行に連れて行ってあげたいのですが、ホテルもだいぶ高くなり手をだせません。今年は近くの公園で遊ばせておくしかありません……」とうつむく。

 止まらない物価高は、いつまで家庭に我慢を強いるのだろうか。我慢の先に、どんな行動変容が起きるのだろうか。

(文=Business Journal編集部)

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