政府・日銀が11日夜の外国為替市場で、円買い・ドル売り介入を実施したとの観測が12日の市場で広がった。11日夜には、6月の米消費者物価指数(CPI)発表をきっかけに米国の利下げ期待が高まり、円相場が1ドル=161円台から157円台へ30分余りで4円ほど急騰。実施を直ちに公表しない覆面方式で、円の買い戻しを後押しした「不意の追い打ち介入」との見方が出ている。
介入の実務を指揮する財務省の神田真人財務官は11日夜、介入の有無について「何もコメントする立場ではない」と記者団に述べた。年初から対ドルで約20円の円安が進んだことには「かなり急速な変動があり、国民生活に影響を与えているのではないか」と指摘した。
円相場が6月下旬に160円を再び下回ってから約2週間。7月3日には161円90銭台まで下落し、約37年半ぶりの安値水準を更新したが、この間に通貨当局から明確な口先介入はなかった。このため、市場の一部では165円が当局の防衛ラインとして意識され始めていた。
円安・ドル高の背景にある日米金利差の行方は、米利下げの開始時期が左右する。11日夜発表の6月の米CPIはインフレ率の鈍化を示す内容で、市場では「潮目が変わった」(エコノミスト)との受け止め方が広がった。CPI発表後、米金利先物市場では9月の利下げ予想が9割を突破。投機筋が売り持ちに傾けていた円の買い戻しに動く中、「不意の追い打ち介入が実施された可能性が高い」(みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジスト)とみられる。
ただ、今回介入が行われていたとしても、円安の進行を食い止める効果がいつまで持続するかは不透明だ。4月下旬に160円台に突入したタイミングで実施されたとみられる前回の介入効果は2カ月でなくなった。
バークレイズ証券の門田真一郎・為替債券調査部長は「新しい少額投資非課税制度(NISA)開始による海外資産投資の増加や、海外巨大IT企業への支払い増によるデジタル赤字の拡大などにより、年内は円安圧力が続く」と予想する。 (了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/07/12-20:18)