(2024年10月23~24日、米国・ワシントンDC)
1.我々、G20財務大臣・中央銀行総裁は、IMF・世銀年次総会期間の2024年10月23~24日に、ワシントンD.C.で会合した。この会合は、G20財務トラックの25周年にあたる。2024年のG20におけるブラジル議長国により確立された3つの包括的な優先事項、すなわち、(1)社会的包摂と飢餓と貧困との闘い、(2)エネルギー移行と持続可能な開発、(3)グローバルなガバナンス・機関の改革の成果を総括する目的で、我々は、国際開発金融機関(MDBs)、金融セクターの課題と金融包摂、世界経済とG20財務トラックの25年について意見を交換した。
2.国際経済協力の継続的な進展やG20財務トラックの進化するレガシーにもかかわらず、いくつかの課題が依然として、持続可能な開発のための2030アジェンダの実施や持続可能な開発目標(SDGs)の達成を妨げている。貧困、飢餓、栄養不良と感染症、国内および国境を越えた不平等、人口構成の転換、技術や質の高い教育への不十分なアクセス、戦争や激化する紛争、エネルギーと食料不安、社会支出と投資をカバーするための多額の資金ギャップ、高い債務負担、新興・発展途上国(EMDEs)への低調な長期的資金フロー、低い生産性の伸び、生物多様性の大規模な損失、そして気候変動は、依然として懸念すべき重要なトピックである。それゆえ、我々は2030アジェンダとそのSDGsへのコミットメントを再確認する。我々は今後も協力し合い、地球規模の課題に取り組み、グローバリゼーションをすべての人々のために役立つものとする。
3.これらの課題を念頭に、我々は、現代の主要な課題に取り組むためにシェルパと財務トラックを集結させた、気候変動に対する世界的な資金動員のためのタスクフォースと、飢餓と貧困に対するグローバル・アライアンスの取組を評価する。我々は、各国や金融機関、シンクタンクがコミットメント表明書を提出してグローバル・アライアンスに参加することを慫慂する。シェルパ・トラックと連携して、我々は引き続き、持続可能な開発の文脈において、飢餓と貧困の根絶と気候変動への取組の努力を支援していく。
世界経済見通し
4.我々は、世界経済のソフトランディングについて良い見通しをもっている一方で、複数の課題が残っている。我々は、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長(SSBIG)を促進し続け、物価や金融の安定を維持し、財政の持続可能性を支え、負のスピルオーバーを軽減する。我々の財政政策は、財政の持続可能性を守り、バッファーを再建し、成長を促すものであり続け、生産性を向上させる改革に対する官民投資を促進する。我々は、経済活動は世界の多くの地域で予想されていたよりも強靭であるという事実に安堵している。しかし、成長は国々の間で不均衡が大きく、それが経済面での差異を広げるリスクに貢献している。我々は、中長期的な世界の成長見通しが過去の平均を下回ることを懸念している。よく調整された金融政策と供給ショックの巻き戻しに起因して、インフレは高い水準から低下してきている。ディスインフレは国ごとのばらつきを伴いつつも、継続している。中央銀行は、それぞれのマンデートに沿って、物価の安定を達成することに強くコミットしてきており、引き続き、データを踏まえながら政策を調整する。中央銀行の独立性は、それらの目標を達成するために極めて重要である。我々は、構造改革を通して、国々の間の成長格差を減らすべく努力し続ける。我々は、2021年4月の為替相場についてのコミットメントを再確認する。
5.世界経済は強靱さを保つ一方で、高い不確実性の中でいくつかの下振れリスクが高まっている。下振れリスクには、戦争と激化する紛争、経済的分断、一次産品価格の過度な急騰、予想よりも持続的なインフレ、一層頻繁となっている異常気象を含む気候変動の影響、劇的な金融市場の変動、公的及び民間部門における過剰債務、いくつかの国の民間部門における限られた財務バッファー、予想よりも低い生産性の伸び、人工知能(AI)を含む新たな技術から生じ得る悪影響が含まれる。新たなショックを吸収するバッファーと政策の余地が限られることは、特にEMDEsにおいて成長見通しを更に妨げうる。上振れリスクには、強化された世界的な協調、貿易と投資の成長におけるより強い回復、主要一次産品のより均衡した供給、安全で責任あるAIの開発と導入を含む技術革新による生産性の向上が含まれる。
6.我々は、保護主義に抵抗することにコミットし、世界貿易機関(WTO)を中核とする、ルールに基づく、無差別的で、公正で、開かれた、包摂的で、公平で、持続可能かつ透明性のある多角的貿易体制を支持するための協調努力を奨励し、加盟国による同機関の改革に向けた取組を引き続き支持する。
不平等との闘い及び気候変動への取組
7.我々は、不平等に対処することがSSBIGを達成するために重要であるとの理解を再確認する。「不平等の圧力に対処するための政策措置及び提言のメニューに関するG20ノート」で強調されたように、不平等の力学のあらゆる有意義な評価には、正確で、適時の、透明性の高いデータが不可欠である。適切に、メンバー国の判断に基づいて、不平等の多面性を考慮しながら、今後数年間、データの質向上を促し、不平等の幅広いマッピングを提供するために、不平等データ測定の代替的なアプローチに関する議論を進める機会がある。
8.我々はまた、気候変動への対処はSSBIGの達成に極めて重要と認識し、経済面でも分配面でも、不作為がもたらすコストは作為がもたらすコストを上回ることを再確認する。我々は、各国固有の、秩序立ち、負担可能な公正な移行の確保が重要であると認識する。この点に関し、我々は、気候変動と移行政策が全ての社会に時間をかけて与える不均一な影響に焦点を当てた、「気候変動と移行政策のマクロ経済・分配面への影響に関するG20ノート」に留意する。国内及び国家間の異なる所得層や個人の、脆弱性やエクスポージャーにより、分配面への影響は大幅に異なる可能性が高い。社会における最貧家計は、政府の支援なしには、これらのショックの管理は最も難しいと感じる傾向がある。我々は、ショックに対する経済の強靭性を高め福祉を改善するための構造的・分野横断的な施策とともに、脆弱層のために、的を絞って慎重に設計された公共支援策の必要性を強調した。我々はさらに、途上国のニーズと優先事項を考慮に入れつつ、自発的かつ相互に同意された条件での技術開発及び移転、能力構築及び資金提供は、途上国の支援に決定的に重要と認識する。我々はまた、気候および移行リスクへの対応に関する知見共有と能力強化と併せて、経済モデルにおける分散分析とリスクのカバー範囲の改善において、国際協力の明確な機会があることを認識する。
9.我々は、各国に固有の状況に応じて、山積する国内及び世界的な課題に対処するための財政的余力の創出を含む、国内資金動員を改善するための戦略に関する財務トラックにおける議論に留意する。歳入及び歳出の両面で、様々な選択肢が考慮されてきた。我々は、引き続きこれらの問題を検討し、さらなる対話と協力の必要性を認識する。
持続可能な開発金融の強化に向けた協調行動
10.我々は、G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップに基づいた、2024年の「G20サステナブル・ファイナンス報告書」を支持する。我々は、組織のマンデートと整合的な気候変動、環境の悪化及び生物多様性の損失との世界的な闘いを支援するため、包摂的かつ持続可能な開発を進める金融ソリューションの推進に対する我々の取組を加速することに引き続きコミットする。我々は、自主性に留意しそれぞれのマンデートを尊重しつつ、独立ハイレベル専門家グループによって策定された気候・環境関連基金に対する独立レビューに基づく提言の効果的な実行のモニタリングが、次の複数のG20議長国にわたって気候・環境関連基金と協働しながら実行されることに期待する。我々は、金融機関及びその他の企業の移行計画に関する任意で拘束力がないハイレベル原則、及びセクター固有の考慮を含み、特に排出削減が困難なセクターに適用可能な、公正な移行に関する勧告を歓迎する。我々はまた、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)によって策定された基準といったサステナビリティ報告基準に関する、中小企業(SME)やEMDEsにおける実施を含む、実施の課題に対処する勧告を歓迎する。これらの勧告は、信頼性のある、比較可能で、相互運用性のあるサステナビリティ報告開示基準を促進し、そうした開示基準は柔軟で、各国固有の状況を考慮する。自然に基づく解決策(NbS)のための資金調達の規模拡大の課題に対処するための勧告と、NbS資金調達へ向けたG20ツールボックスは、重要なステップである。我々は引き続き自発的で柔軟性のあるG20サステナブル・ファイナンス・ロードマップの実施を加速させていくとともに、G20メンバーによってとられた行動を捕捉しモニターすることに資する同進捗報告書を歓迎する。
11.保健への投資は、生産性の向上を通じた格差の是正や社会の発展の促進及び持続可能かつ包括的な成長に不可欠である。我々は、G20/世界保健機関による「健康の社会的決定要因に関するポリシー・ノート」、G20/世界保健機関/世界銀行による「パンデミックに対する保健・社会・経済の脆弱性及びリスクに関する枠組み(FEVR)に関するグローバル・レポート」を支持し、G20/世界銀行/世界保健機関による「パンデミック対応資金のためのオペレーショナル・プレイブック」に関する進展を歓迎し、「保健分野の債務スワップに関するG20議長国ノート」に留意する。これらの成果物は、財務・保健間の重要な関連性を再確認し、保健関連のSDGsとパンデミックへの予防、備え、対応(PPR)への投資拡大に関する協調を促進し、議論を進める上で、財務・保健合同タスクフォース(JFHTF)の役割が極めて重要であることを強調する。我々は、JFHTFがこれらの取組を推進し、保健およびPPRへの投資拡大のモメンタムを強固なまま維持することを期待する。我々はまた、エムポックスへの対応に関するG20財務・保健大臣共同声明にも反映されているとおり、アフリカ疾病予防管理センター(CDC)と世界保健機関(WHO)が主導する、エムポックスの流行に対応する国々への支援のための明確で協調的な国際的な対応を支援していくことを決意している。我々は、WHOの投資ラウンドおよびリオデジャネイロで10月31日に開催されるパンデミック基金のプレッジング・イベントに期待する。我々はパンデミック基金について、EMDEsのパンデミックPPR能力の強化のための資金を増強するため、特にドナー層の自発的な拡大を通じて、支援の拡大を求めることを再確認する。
12.我々は、SDGsに沿って、インフラ投資が貧困との闘いの鍵であり、経済の生産性や市民の生活の質を向上させ、繁栄、機会、社会的包摂につながることを認識する。さらに、我々は、質の高い、強靱で持続可能なインフラ投資が、商品やサービスの低廉性及びアクセス可能性の向上、特に最も貧しく最も脆弱な層の保護において、有益であることを認識している。この目的のために、我々は「インフラと貧困削減に関するG20・世界銀行・米州開発銀行報告書-効果的なアクセスを実現するための革新的政策―」を支持する。我々は、為替リスクが新興市場および開発途上国におけるインフラプロジェクトへの民間資金の動員を妨げる複数のリスクの一つであることを認識しており、したがって、G20/国際通貨基金/グローバル・インフラストラクチャー・ファシリティによる「EMDEsにおけるインフラプロジェクトにおける為替リスクへの対処報告書」を支持する。我々は、国家間、地域間の相乗効果を高め、貿易を促進し、グローバル経済における当事者のより良い立場を可能にするため、いくつかの法域の国内の状況を考慮しつつ、国境を越えたインフラの重要性を強調する。この観点から、我々は、G20/アジアインフラ投資銀行/米州開発銀行/欧州復興開発銀行による「国境を越えたインフラ整備に関する報告書―概念枠組と事例研究―」を支持する。
13.我々は、とりわけ、市場の変動、タイトな金融環境、債務脆弱性が、資金調達コストが増す中で、短期的に公的予算の圧迫を増しうると認識する。我々は開発金融における課題への各国固有の解決策は、成長、国内資金動員、能力構築、民間資金フロー、的を絞った譲許的資金を支援するための政策措置の組み合わせに基づきうると考える。この文脈において、我々は、短期的な流動性課題に直面する一方、債務は持続可能である脆弱国に対する支援に取り組むことを国際社会に求める。我々はIMFと世界銀行の支援のもと、これらの国を助けるための実践的なオプションを検討している。
より良く、より大きく、より効果的な国際開発金融機関(MDBs)
14.我々は、伯議長下の主要な成果物として、ニューデリーにおけるG20首脳のマンデートを基礎とし、低・中所得国の開発ニーズへの対処に引き続き焦点を当てながら、21世紀の地球規模課題に一つのシステムとして対処するための、MDBsの中期的で包括的なビジョンを設定する、「より良く、より大きく、より効果的な国際開発金融機関(MDBs)に向けたG20MDBロードマップ」を支持する。各MDBsのマンデートやガバナンス構造を尊重しつつ、我々は、MDBsに対して、関連するステークホルダーと協働し、「G20MDBロードマップ」を実行することを求める。
15.この「ロードマップ」は、持続可能な開発目標(SDGs)に向け進捗を加速させつつ、広範な地球規模及び地域的な課題への対応においてその効果を最大化するためのよりよい準備を整えるよう、ビジョン、インセンティブ構造、運営アプローチ、財務能力を進化させるためのMDBsへの包括的な提言及び行動を示すものである。「ロードマップ」を実行するために、我々は、MDBs総裁及び各MDBsに対し、定期的な監視・報告プロセスに関して国際金融アーキテクチャ(IFA)作業部会に引き続き関与していくことを促す。我々はまた、MDBsに対して、一つのシステムとして引き続き作業すること、‐そして政府、各国・地域の開発銀行、民間セクターと提携することを求める。
16.我々は、各機関のマンデートを尊重しつつ、各国の持続可能な開発目標の達成を支援するともに地球規模及び地域的課題に対処するため、MDBのリソースと戦略の整合性のレビューにかかる一般的な原則を模索することをコミットする。これらの定期的なレビューは、各MDBの理事会が、追加的な資本が必要かどうか、またいつ必要かを考慮する上で、確固たる基礎となるものである。我々は、MDBsに対して、バランスシートへのリスクを管理し、長期的な財務持続可能性、強固な信用格付け、及び優先的に弁済を受ける地位を保護しつつ、新規のもしくは既存の課題への対処に貢献するため、適用可能な場合は、あらゆる手段を講じてMDBsの財務能力を引き続き強化することを求める。我々は、より多くのMDBsが自己資本の十分性に関する枠組(CAF)の独立レビューの実施を報告したことを評価し、これまでの進捗はCAFのアジェンダがそれらの機関の中に深く統合されていることを示している。我々は、CAF措置が、これらの措置を更に実施することにより、依然として、今後10年間で追加融資の資金余力を引き出す可能性があることに留意する。我々は、MDBsに対して、開発効果を最大化するために、明確かつ野心的な目標を設定し、可能とする状況を支援し、民間投資、革新的なリスク配分手段、新たなパートナーシップへの潜在的な政策及び規制障壁に対処することを通じて、国内資金動員を加速させ、民間資金動員を強化することを慫慂する。これは、全ての適切なCAF提言の実施とともに、潜在的な増資のレバレッジ効果を最大化するものである。各MDBの理事会は、地球規模の課題と開発のニーズへの対処に向けた努力を支援するため、CAF措置に加えて増資が必要かどうか、またいつ必要かを決定する上で、最も適切な立場にある。
17.我々は世界銀行グループの改革ロードマップの実施と他のMDBsが取り組んでいる改革を歓迎する。我々は、リマ投票権原則に沿った国際復興開発銀行(IBRD)の2025年の投票権見直しに期待する。我々は、限られた譲許的資金を配分するための明確な枠組みに沿った形で地球規模の課題への対処に支援を必要とする低中所得国を支援するとともに、最貧国への強力な支援を提供するために、世界銀行の能力を押し上げるための更なる資金余力と譲許的資金を共同で動員するという、ニューデリーにおける我々の首脳によるコミットメントを再確認する。我々はドナー国層の拡大を含む、強固で効果的なIDA21増資を達成することを目指す。我々は来年のアフリカ開発基金第17次増資の成功を期待する。
グローバル金融セーフティ・ネット、資本フロー及び債務問題
18.我々は、グローバル金融セーフティ・ネットの中心にあり、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、第16次クォータ一般見直しにて合意されたクォータ増資、ならびに、新規借入取極(NAB)に関連した調整についての国内承認を既に得ている、あるいは今年11月中旬までに得るべく取り組んでいる。我々は、最も貧しい加盟国のクォータシェアを守りつつ、加盟国の世界経済に占める相対的な地位をより良く反映させるための、クォータシェアの調整の緊急性と重要性を認識する。我々は、第17次クォータ一般見直しの下で、新たなクォータ計算式を通じたものを含め、更なるクォータシェアの調整に向けた指針としての可能な複数のアプローチを2025年6月までに策定するためのIMF理事会における進行中の取組を歓迎する。我々は、9月の国際金融アーキテクチャ(IFA)作業部会会合中に行われた、過去のIMFのクォータシェア調整から得られた教訓に関する議論に留意する。我々はIMF理事会におけるモメンタム形成を助けるために建設的に行動する用意がある。
19.我々は、チャージ・サーチャージの意図されたインセンティブを維持し、また、IMFの財務健全性を保護しつつ、借入国の借入に係る財政コストを軽減させるIMF理事会におけるチャージ・サーチャージ見直しを歓迎する。我々はまた、貧困削減成長トラスト(PRGT)の自立的な持続可能性を確保しつつ、低所得国の国際収支上のニーズへの対処を、その脆弱性に留意しつつ、支援するためのIMFの能力強化を目指した、PRGTの制度及びその資金調達に関する見直し完了を歓迎する。これらの見直しは、適切なステップであり、我々は引き続きIMFが変化する状況に適応するための努力を支援する。我々はIMF加盟国に対して、PRGT及び強靭性・持続可能性トラスト(RST)への未実施のプレッジの完全な実施を奨励する。我々は、強い対外ポジションを有し、特に、まだ貢献していないIMF加盟国に対して、PRGT・RSTへの追加的で自発的な貢献もまた奨励するとともに、MDBsを通じたものを含め、自発的なSDRチャネリングの模索に意欲がある国に、その準備資産としての地位を尊重し、法的に可能な範囲で、引き続き参加を呼びかける。
20.我々は、より効果的で、信頼性があり、説明責任のある正当な機関を実現するために、MDBs及びその他の国際経済及び金融機関の意思決定における途上国の代表性及び発言権を強化する必要性を強調する。この文脈において、我々は、サブサハラ・アフリカの発言権と代表性を強化するための、IMF理事会における25番目の理事の設立を歓迎する。我々は、「国際金融機関のトップポジションにおける代表制に関するG20議長国ノート」に留意し、国際金融機関において地域的な代表性及び女性の代表制を高めるための具体的な措置を引き続き支援する。
21.我々は、持続可能な資金フローの促進や、健全な政策枠組み、とりわけ中央銀行の独立性、の推進等を通じた、国際金融アーキテクチャの更なる強化に向けた我々のコミットメントを再確認する。この文脈において、我々は「EMDEsの資金フローの強靭性の評価と促進に係るG20/OECDノート―推進力と政策インプリケーションに関するエビデンス―」を歓迎する。本ノートは、EMDEsへの資金フローに影響を与える要素や、EMDEsがどのように安定的かつ長期的な海外からの投資フローを誘致・維持することができるかを評価している。我々は、「CBDCを含む国内決済システムの国境を越えた統合のマクロ金融への影響に関するG20議長国ノート―トレンド、利点、リスク―」に留意する。
22.我々は、グローバルな債務脆弱性に対処するため迅速に行動するというコミットメントを再確認する。我々はG20の「共通枠組」(CF)下、及びその他の債務措置の進捗を歓迎する。我々は、ザンビア及びガーナに対して合意された債務措置を歓迎する。我々は、エチオピアに対する進捗を歓迎し、債務措置の迅速なプロセスを求める。我々はスリランカに対して合意された債務措置も歓迎する。我々は、予測可能で、適時に、秩序立ち、かつ連携した方法でCFの実施を強化することを含め、債務脆弱性に対処することに引き続きコミットする。我々は、債務の透明性の向上に向けて作業を継続する全てのステークホルダーによる共同の取組を歓迎し、民間債権者が後に続くことを奨励する。我々は、「共通枠組下の事例から得られた教訓に関するG20ノート」を支持する。我々は、民間セクターと債務国を含む主要なステークホルダー間の共通理解をさらに深めるため、公的債務にかかるグローバル・ラウンドテーブルを引き続き支持し、IMF・世界銀行とその支援における彼らの役割を称賛する。我々は、2024年にG20議長国ブラジルが開催したアフリカ主導の債務、開発並びにインフラに関する対話を歓迎する。G20は、「G20アフリカとのコンパクト」を通じたものを含むアフリカへの継続的な支援を再確認する。
金融セクターの課題及び金融包摂
23.我々は、経済成長を支え、合意された国際基準の、政策協調に支えられた、完全かつ一貫性のある実施に基づく、開かれた、強靱で、包摂的で、安定した金融システムを促進するとのコミットメントを再確認する。我々は、国際金融規制改革の適時の実施に強くコミットし、銀行にとっての強固なプルーデンス基準の重要性及びバーゼルIII枠組みの全ての要素を完全かつ整合的な形で、かつ可能な限り早期に実施するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)の作業、特に2023年の銀行セクターの混乱と流動性リスクに関するフォローアップ作業の進捗報告書を歓迎する。我々はまた、預金者行動や金融システムにおける金利・流動性リスクに関する作業結果を要約した金融安定理事会(FSB)の報告書を歓迎する。我々は、ノンバンク金融仲介(NBFI)において進展しつつある動向を監視し、経済への資金供給におけるその役割を維持しつつ、FSBの政策勧告の実効的な実施を促進することを含め、システミックな観点からNBFIの脆弱性に対処しその強靭性を向上させるための、FSB及び基準設定主体(SSB)の作業を引き続き支持する。我々は、来るFSBの市中協議報告書において、NBFIにおけるレバレッジによる脆弱性に対処するための強固な一連の勧告を期待する。我々は、オープンエンド型ファンドにおける流動性ミスマッチがもたらす脆弱性への対応にかかるFSBの改訂された政策勧告、及びマネー・マーケット・ファンドの強靭性を向上させるための政策勧告の実施を支持する。我々は、金融当局へのサイバー及び実務上のインシデント情報の報告における更なる収れんを促進することを目的とした、提案されたインシデント報告交換のためのフォーマット(FIRE)に関するFSBの市中協議報告書を歓迎する。我々は、一貫性のある、比較可能な気候関連財務情報開示の実現に関するFSBの進捗報告書に期待する。
24.我々は、「クロスボーダー送金の改善に向けたG20ロードマップ」の実施に関するFSBの年次進捗報告書、及びクロスボーダー送金の定量目標の達成に対する進捗のモニタリングに関する、その関連報告書を歓迎する。我々は、安全及び安心を保ちつつ、より迅速で、安価で、透明性のある、アクセス可能なクロスボーダー送金に関するグローバルな目標を達成するための「ロードマップ」の適時かつ実効的な実施へのコミットメントを再確認する。我々はこの方向でFSB、SSBs及び国際機関が行ったイニシアティブを歓迎するとともに、更なる規制上の整合性が「ロードマップ」の成功の鍵であることを強調する。我々は、国境を跨ぐ即時決済システムのインターリンクのガバナンス及びオーバーサイトについての国際決済銀行(BIS)決済・市場インフラ委員会(CPMI)最終報告書や、クロスボーダー送金の改善に向けたアプリケーション・プログラミング・インターフェース(APIs)の調和を促進する勧告についてのBIS・CPMI報告書を歓迎する。我々は、資金や資産の移転を目的としたクロスボーダー決済プラットフォームのマクロ金融への影響に関するIMFのレポートに留意する。我々は、より透明性があり包摂的な決済システムを促進し、システムがより迅速かつ安価になる中で安全及び安心を確保するために、クロスボーダー送金の透明性向上に関する金融活動作業部会(FATF)基準を強化する進行中の作業を支持する。
25.我々は、デジタル・イノベーションがもたらし得るリスクも軽減しつつ、その恩恵を活用することができる。我々は、引き続き警戒し、暗号資産が特にEMDEsにもたらす脆弱性及びリスクを注意深く監視し続ける。我々は、「暗号資産政策実施に関するG20ロードマップ」に関する最初の状況報告書を歓迎するとともに、G20法域外を含む、その実施に向けた、世界銀行、FATF及びそのグローバルネットワーク、並びにSSBsとの協働による、IMF及びFSBの共同の取組を認識する。我々は、暗号資産及び暗号資産交換業者に関するFATF基準のグローバルな実施を加速させ、DeFi、ステーブルコイン及び個人間で行われる取引(P2P取引)を含む、新たな技術及びそれらから生じる関連するリスクの金融の健全性への影響を監視するためのFATFの作業に対する我々の支持を再確認する。
26.我々は、マネー及びその他の資産の文脈の中でのトークン化の意味と、現行の通貨及び金融システムの最善の特性に基づくトークン化の環境をどのように構想するかを検討する、BISとBIS CPMIによる報告書を歓迎する。我々はまた、トークン化の金融安定上の影響に関するFSBの報告書を歓迎し、特定されたリスクに対処するために取り得る次のステップを含む人工知能の金融安定上の影響に関するFSBの報告書に期待する。
27.我々は、サステナブル・ファイナンスの課題への革新的な解決策を検討している、BISイノベーションハブとの共同イニシアティブであるG20TechSprint2024の結論に期待する。我々は、経済及び金融統計に関する当局間グループ(IAG)、FSB、ならびにG20メンバーとの緊密な協働によってIMFにより準備された、G20データギャップイニシアティブの第3フェーズ(DGI―3)における第二進捗報告書を歓迎し、データギャップに対処するため昨年の大幅な進展に留意する。
28.我々は、2023年金融包摂行動計画(FIAP)の実施における、金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)に関する進展を歓迎する。我々は、金融上のウェルビーイングを向上させ、持続可能な開発目標(SDGs)を達成する上での金融包摂の重要な役割を認識する。我々は、任意で拘束力のない、金融上のウェルビーイングに関するG20政策ノートを支持する。我々はまた、「デジタル公共インフラ(DPI)を含むデジタルインフラ、消費者保護、及びその他のFIAPの目的を通じた、最後の1マイルアクセス及び質の包摂の向上のためのG20政策オプション」を支持する。最後に、我々は、MSME金融のための新たなG20GPFI行動計画に関する進展に留意し、その最終版に期待する。
29.我々は、マネーロンダリング・テロ資金供与・拡散金融と闘うためのFATF基準の実施に係るグローバルな取組を強化することの重要性及びグローバルネットワークに亘るFATF基準の実施を監視することにおけるFATFとFATF型地域体を支援するとの我々のコミットメントを再確認する。特に、我々は、犯罪者が犯罪収益を隠匿し、不正な活動に関与できないことを確実にし、犯罪収益の返還を促進するため、法人及び法的取極めの実質的支配者の透明性並びに財産回復及び国際協力に関する改訂されたFATF基準の効果的な実施への我々のコミットメントを再確認する。我々は、リスクベースによるFATF基準の実施の促進により、金融包摂を損ねること無く、金融の健全性を確保するとのFATFのコミットメントを共有する。
国際租税協力
30.累進的な課税は、国内の格差を是正し、財政の持続可能性を強化し、財政健全化を促し、SSBIGを促進し、SDGsの達成を促す重要な手段の一つである。国際租税協力は、国内の状況、ニーズ、優先順位を考慮するとともに、各国が実現可能と考える手段の採用および実施に係る各国の主権を尊重しつつ、ベストプラクティスを奨励し、国内の税務行政能力を向上させ、各国の税制改革を支援し、税の透明性を強化し、国内の所得と富の分配を含む累進的な課税を効果的に実施するための各国の取組を強化するための基礎である。幅広い課税ベースと効果的な執行が累進課税制度の基礎である。我々は、2024年7月25日に承認された、我々の画期的な成果たる「国際租税協力に関するG20リオデジャネイロ閣僚宣言」に沿って、21世紀にふさわしい、より公正で包摂的で安定的かつ効率的な国際課税制度を目指し、引き続き協力するとともに、税の透明性への我々のコミットメントを再確認し、超富裕層の個人を対象に含む効果的な課税その他の課題に関する国際的な対話を促進する。リオデジャネイロ宣言第13段落に沿って、また、課税主権を完全に尊重しつつ、我々は、超富裕層の個人が効果的に課税されることを確保するために、潜在的な協力分野について議論することを期待するとともに、「BEPS包摂的枠組み」が、効果的な累進課税政策の文脈で、これらの課題への取組みを検討することを引き続き奨励する。
31.我々は、SDGsを支援するために国内資金動員(DRM)の改善が重要であることを認識する。我々は、DRMと能力開発を強化するための支援を引き続き提供する。我々の国際租税協力は、不要な努力の重複を避けるよう努めつつ、既存の国際フォーラム間の相乗効果を最大化することで、包摂的かつ効果的であるべきであるとともに、幅広いコンセンサスに達することを目指すべきである。また、我々は、国連における、国際租税協力に関する国連枠組条約とその議定書の策定に関する建設的な議論を引き続き奨励する。
32.OECD/G20「BEPS包摂的枠組み(IF)」は、過去10年にわたり、国際租税協力の可能性を示してきた。我々は、IFにおける二本の柱の解決策に関する進展を歓迎し、IFの2021年10月の声明と、すべての関心を持つ法域による二本の柱の解決策の迅速な実施に対する我々のコミットメントを改めて表明する。可能な限り早期に多数国間条約(MLC)の最終化と署名開放を可能にするため、我々はIF加盟国・地域に、利益Bの枠組みに関する残る論点を解決することにより、第一の柱に関する最終パッケージの交渉を迅速に妥結することを奨励する。我々は、MLCの導入と執行を円滑に進めるため、IFに技術的作業を加速するよう求める。第二の柱に関して、我々は、9月19日の租税条約上の最低課税ルール(STTR)の最初の署名式を、重要なマイルストーンとして歓迎する。我々は、共通アプローチとしてのGloBEルールの進捗を歓迎するとともに、同ルールを実施する国同士の協調を確保するための現在進行中の作業を引き続き支援していく。
拡大する参加とG20財務トラックの25年のレガシーの祝福
33.我々は、G20財務トラックの25周年を祝福するにあたり、公正な世界と持続可能な地球を築くために不可欠な手段である、対話と協調行動への我々のコミットメントを再度表明する。過去四半世紀、我々は世界的な金融危機やパンデミックを含む広範な課題に直面したが、肝心な時に、国際的な対話と政策協力を成功裡に強化してきた。今後に向けて、我々は、引き続き、マクロ政策協調を強化し、持続可能な開発のための2030アジェンダに向けた進捗を支援し、気候変動や飢餓と貧困との闘いといった、喫緊の地球規模課題に対処する。
34.我々は、公正で持続可能な世界を構築する上でのジェンダー平等の分野横断的な重要性を認識する。SDG5と、1995年の北京宣言を含む、G20諸国によって採択された国際条約、協定、及び宣言において確立されたコミットメントに沿って、我々は、女性の経済的なエンパワーメントを進展させる責任を再確認する。
35.我々は、経済・金融の課題に対処する上で市民社会やエンゲージメントグループが果たす建設的な役割を評価し続ける。我々は、リオデジャネイロで開催される2024年G20サミットに期待する。我々は、アフリカ連合の常任メンバーとしての加盟に続く、次の2025年のG20議長国南アフリカを歓迎する。我々は、また、SSBIGを促進し、地球規模課題に対処するための国際経済協力を強化し続けることに対するコミットメントを、決意をもって再確認する。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/10/25-10:11)