JERA、千葉火力に40万kWのAIデータセンター…系統接続の長期化に「直接給電」で挑む

●この記事のポイント
JERAは米デル・テクノロジーズ、英RHAELMと組み、千葉火力発電所の隣接地に最大40万kW、投資額2.3兆円超のAIデータセンターを整備し、2028年の稼働を目指す。送電網への接続待ちが長引くなか、発電所から直接電力を供給して立ち上げを早める狙いだ。本稿では、火力の価値の見直しやハワイのLNG計画との関係に加え、災害時の集中リスクと脱炭素の課題を検証する。
発電国内最大手のJERAは10月1日、米デル・テクノロジーズ、英RHAELM(レルム)の2社と覚書を結び、千葉火力発電所(千葉市中央区)の隣接地に最大40万kW規模のAIデータセンター(DC)を整備すると発表した。投資総額は用地、電力設備、建屋、AI計算基盤を合わせて150億ドル(約2.3兆円)以上。2028年から段階的に稼働させ、29年の本格運転を目指す。米投資会社アポロ・グローバル・マネジメントも、レルムの資金調達パートナーとして参画する予定だ。
2兆円を超える金額に目が行きがちだが、この発表でまず押さえておきたいのは場所の選び方である。なぜ発電所の隣なのか。理由をたどると、日本のDC整備が抱える「電気はあっても届かない」という問題に行き着く。
●目次
足りないのは発電所ではなく「送る線」
DC業界で「電力が確保できない」と言うとき、その多くは発電量の不足ではなく、送電線や変電所の容量不足を指している。大規模DCは特別高圧で受電するため、近くの変電所に余裕がなければ、変電所の新設や送電線の張り替えといった上位系統の工事が必要になる。
国内最大のDC集積地である千葉県印西・白井エリアでは、資源エネルギー庁が2025年の審議会に示した資料によると、連系待ちの大規模需要が約40件、申込容量の合計は約250万kWに達していた。今後必要な系統工事の総額は2000億円を超える見込みだという。
東京電力パワーグリッドは2024年6月、印西市に24年ぶりとなる超高圧変電所を新設した。通常より約2倍の速さで進めた工事だったが、それでも需要には追いつかず、同社が新たに確保した別の変電所用地の稼働見込みは2033年とされる。用地取得から完成まで10年前後を要する変電所は珍しくない。「2〜3年で稼働させたい」というDC事業者の時間軸とは、そもそも噛み合わないのだ。
JERAも会見で、大規模AIインフラ開発の課題の筆頭に「大電力系統への接続や新たな電源の確保に長い時間を要すること」を挙げた。需要側の伸びは速い。電力広域的運営推進機関(OCCTO)の想定では、34年度の全国最大需要電力は24年度比4.4%増の約1億6459万kW。人口が減るなかで需要が増加に転じる主因は、DCと半導体工場の新増設である。
発電所の隣に置くという選択
JERAの答えは、DCを発電所の隣接地に建て、電力を直接供給する構成だ。報道によれば、JERAが用地を提供し、15〜25年にわたって電力を供給する。レルムが建設から運営、資金調達までを担い、デルはラック単位で短期間に導入できるAIサーバー群を供給する。レルムのブラッド・ルイスCEOは、系統接続を前提とした通常のスケジュールより何年も早く40万kW級の施設を立ち上げられると述べている。
発電所の敷地には、DCが必要とするものが最初から揃っている。千葉火力は敷地約76万平方メートル。LNGを燃料とする発電機11基、最大出力は合計438万kWに及ぶ。高圧の送変電設備があり、臨海部で冷却に使える水へのアクセスもある。40万kWは発電所出力の1割弱にあたる計算だ。
一般論として、発電所の構内や自営線で直接受電すれば、一般送配電網を使う際の託送料金や送電ロスを抑えられる。ただし、今回の契約形態や料金体系の詳細は公表されていない。どの程度のコスト優位が生まれるかは、現時点では判断できない。
「いまDCの立地で最も重視されるのは、土地代でも通信環境でもなく『いつ電気が来るか』です。首都圏で40万kWを2〜3年で受電できる場所は、ほとんど見当たりません。その意味で発電所の隣接地は理にかなっています。一方、利用者が気にするのは単一拠点の冗長性です。系統側のバックアップをどう確保するかは、契約上の焦点になるでしょう」(エネルギー政策研究家・佐伯俊也氏)
火力発電所の価値をどう見直すか
千葉火力は2000年に運転を始めた1・2号系列と、14年に全面稼働した3号系列からなる高効率のLNG火力で、いわゆる老朽石炭火力とは事情が異なる。それでも、再生可能エネルギーの拡大によって火力の稼働率は下がる傾向にあり、設備を維持する固定費をどう回収するかは電力各社に共通の課題だ。JERA自身も、非効率な石炭火力を30年度までに停廃止する方針を掲げている。
他方、OCCTOは26年度供給計画の取りまとめで、既設火力を休廃止せずに供給力として維持する方策に言及した。天候に左右されない火力の供給力・調整力を見直す議論は、すでに始まっている。
こうした文脈で見ると、DCとの長期契約は、発電所にとって長く安定した需要先を得ることを意味する。卸市場で電気を売るだけでなく、土地と電力とインフラを組み合わせて長期で提供する。収益モデルの幅を広げる試みと読むこともできる。
JERAとレルムは今後、国内26カ所の火力発電所から候補地を絞り込み、30年代に合計数百万kW規模を目指す。政府も25年3月に総務省と経済産業省が「ワット・ビット連携官民懇談会」を設置し、既存の電力インフラを活用できる場所へのDC立地を、足元の需要への対応策として位置づけてきた。今回の構想は、その方向性と重なる。
「火力発電所は稼働率が下がっても、維持の固定費はかかり続けます。隣に長期で電力を引き取る需要家がいれば、収益の見通しは格段に立てやすくなる。ただ、LNG火力と長期で結びつくことをDC利用者がどう評価するかは分かれるところです。脱炭素燃料への移行計画をどこまで具体化できるかが、他の発電所へ広げる際の条件になるはずです」(同)
ハワイ案件との位置関係
JERAの海外展開では、米ハワイ州オアフ島の案件も動いている。ただし既存発電所の買収ではなく、新設の計画だ。米子会社JERAアメリカズは、オアフ島西部カラエロア沖の洋上LNG受け入れ設備と、50万kW級のガス火力発電所を組み合わせた約20億ドル(約3000億円)規模の構想を州に提案。26年7月には州公益事業委員会(PUC)に対し、新たな規制対象の発電会社「GenCo」設立に向けた意向通知を提出した。正式な申請は27年1〜3月期を予定している。
オアフ島では発電の約7割を石油火力が占め、州知事は電気料金の引き下げにつながるとして構想を支持する。一方で、地元電力会社のハワイアン・エレクトリックや環境団体からは懸念の声も上がっており、実現するかどうかはPUCの審査次第だ。
千葉とハワイは、事業として直接つながっているわけではない。共通しているのは、年約3500万トンを扱うLNGの調達・トレーディング力を起点に、発電設備と長期の電力供給をセットで提案する手法である。JERAは今回の協業を「Molecule to Token(燃料の分子から、AIが生み出すトークンまで)」と表現した。燃料から需要家までを一体で設計する発想は、両案件に通じている。
一体型モデルの死角
課題も整理しておきたい。
まず、集中リスクだ。発電所とDCが同じ場所にあれば、大規模地震や津波、高潮で両方が同時に止まりうる。千葉市の臨海部は東京湾に面しており、19年の台風15号では千葉県内で大規模な停電が長期化した。系統との接続を非常用としてどう確保し、どこまで冗長性を持たせるかは、利用者の信頼性評価を左右する。
次に、脱炭素との時間軸のずれである。LNG火力の電力でDCを長期間動かす契約は、カーボンフリー電力を掲げる大手IT企業の目標と緊張関係を生む可能性がある。JERAは水素・アンモニアの活用に向けたロードマップを持つが、ガス火力での本格実用化の時期やコストはまだ見通せていない。
そして、今回はあくまで覚書の段階だという点だ。最終的な投資判断はこれからであり、GPUの世代交代の速さを考えれば、28年の稼働時点で求められる計算基盤の姿が変わっている可能性もある。
送電網の増強は必要で、国も送配電会社も前倒しを急いでいる。ただ、完成までの10年近くを待てないなら、電気がある場所にDCを持っていくほかない。JERAの構想は、ある意味で当たり前に近いこの発想を、2兆円規模で具体化したものだ。
千葉での立ち上げが計画どおりに進むのか。そして他の発電所へ広がっていくのか。その進み具合は、日本のAIインフラ整備の速度を測る一つの物差しになる。評価を下せるのは、28年の稼働開始以降だろう。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=佐伯俊也/エネルギー政策研究家)
【主な参照データ・出典】
クラウドWatch:JERA・Dell・RHAELMの3社、発電所直結AIデータセンター整備で覚書を締結
共同通信(秋田魁新報):千葉に国内最大級データセンター
The Next Web:Japan AI data centre push with Dell and JERA
資源エネルギー庁:電力ネットワークの次世代化について(2025年10月)
OCCTO:2026年度供給計画の取りまとめ
東京電力:千葉火力発電所の概要
総務省・経産省:ワット・ビット連携官民懇談会WG資料
Hawaii News Now:JERA files intent to build $2B LNG power plant on Oahu
Hawaii Public Radio:JERA wants to form its own utility in Hawaiʻi
Hawaiian Electric Industries 10-Q(SEC)











