年末年始はクリスマスにお正月と宗教的なイベントが続く。このため、経済誌も宗教をテーマに扱うことが増える。
「SAPIO」(小学館/1月号)は『日本の宗教「政治とカネ」』という特集を組んでいる。同特集は「日本人の多くは、葬式は仏教、結婚式はキリスト教、正月は神道に触れながら、宗教そのものに強い関心を抱く機会がない」と前置きしつつ、「だが、一歩踏み込んでみれば、政治やビジネスといった実社会の場で、新宗教をはじめとする宗教団体が驚くほど強い影響力を持っていることがわかる」として、日本社会では宗教が深く根を張っている様子に言及している。
安倍政権が安全保障の最重要課題とする集団的自衛権に対し、創価学会は「反対」、幸福の科学は「決断は当然」という立場であることなどを紹介する記事『緊急アンケート 総選挙と巨大教団』や、2015年春に千葉県内で開校を目指していた「幸福の科学大学」計画が文部科学省に不認可とされた幸福の科学の幹部に、同団体のタカ派的政治思想とネトウヨとの関係に迫った記事『幸福の科学に「ネトウヨ」との“近すぎる距離”を質す』など、タイムリーさに読み応えがある。
中でも記事『幸福の科学に~』では、11月に行われた沖縄県知事選で「自民党などが推していた仲井真弘多陣営の別動隊として幸福実現党員が、対立候補である翁長陣営を批判するビラを配布していました」と、幸福の科学を母体とする幸福実現党の“暗躍”を示唆する地元記者の声を紹介している。
おみくじ、お守りの原価
今回特に読むべきは、初詣に関する記事『知ってはいけない「おみくじ」「お守り」「お墓」の原価をこっそり教えます』だ。「神社でおみくじやお守りを“買う”というのは実は間違い。それらは授与品と呼ばれ、神社からすれば神様の分身なので値段はつけられないからだ。お守りなどを購入する場合、正しくは『○○円納める』といい、その金額は『初穂料』というのが正しい。収穫された稲穂を神にお供えする習慣に由来している」(同記事より)
神様の分身とはいえ、コストはかかる。100円の「おみくじ」は全国に数社ある授与品製造業者が、「大吉」「凶」などの運勢を和紙に印刷し、全国の寺社に卸している。
「1000枚3500円前後が一般的。(略)印刷代や郵送料はそれほどかからない。人件費が6~7割(略)1枚当たり3.5円ほどで、人件費などのコストを省けば原材料原価は1~1.5円。神社では仕入れたおみくじを祈祷してから販売する。つまりそこに“有難さ”が加味されているということか」(同)
合格祈願などの「お守り」は500~1000円が一般的な価格だが、その卸価格はかなり安い。
「卸価格は小サイズで50円から130円ぐらいまで。高級西陣お守りで250~300円。初詣前の年末は書き入れ時なので、寺社は『早割』で少し安く仕入れることができます(略)『絵馬』は一般的な松系木材、無地タイプで50~100円、印刷物が入っても150~200円前後で卸されているという」(同)
しかし、これはまだ安いほうだ。
「増刊週刊FLASH FLASH×FLASH」(光文社/9月22日発売号)の特集『新宗教の知られざる「財産」「権力」』では、幸福の科学の各支部で行われる祈願や研修を紹介している。
「『悪質宇宙人撃退祈願』『強力ダイエット祈願』『わが社高騰祈願』『家庭のコンプレックス発見研修』など、さまざまな種類があります。値段は時間やものによって違い、数千円から数万円になります。祈願や研修ごとに豪華な封筒があり、そこに名前を書いて、奉納料を納めます」(同記事より)
経済誌から幸福の科学まで、神頼みのすべてをカネに換算しようとする今の日本人は、やはり信心が足りないかもしれない。
(文=松井克明/CFP)