創立50周年を迎えた老舗の芸能事務所、オスカープロモーション(以下、オスカー)が窮地に立たされている。
所属タレントは無名のモデルなども含めると6500人を誇り、その大所帯を“ザッツ・ワンマン社長”である古賀誠一氏が一代で築き上げて切り盛りしていたことは、業界人なら知らない者はいないはず。しかし、創立50周年を迎えた今年3月26日に古賀氏は会長になり、石川薫副社長が社長に就くことが発表された。そして、「古賀さんが社長でなくなるなら、オスカーを辞めます」と言ってはばからなかった看板女優の米倉涼子が同月をもって退所。昨年末には女優の忽那汐里がひっそりと事務所を辞めており、3月にも、タレントの岡田結実や韓国出身の人気モデル・ヨンアらが続々と退所している。
いったいオスカーに何が起こっているのか? ある芸能関係者は次のように語る。
「ある意味では古賀元社長のカリスマ性で存続していた事務所だったので、米倉さんの退所で事務所としては抜本的な改革を余儀なくされているようです。というのも、古賀さんの娘婿である堀和顕専務がパワハラまがいの言葉を交えての強い姿勢でコスト削減などの社内改革をかねてから推し進めており、古賀さんもそれを黙認していたため、それに嫌気がさした社員たちがここ3年で3割近くも辞めています。いま、業界内では“オスカーなら誰でも雇ってもらえる”と噂されるほど、人が足りていないようですよ。
古賀さんももう80歳。いつまでもワンマン社長でいるわけにもいかず会長職へと勇退したということらしいのですが、それと同時に『近い将来、堀専務を社長にする』という強い意向があったともいわれてます。しかし、堀専務を支持する声は非常に少なく、看板女優の米倉さんの退所を止めらなかったということで、社内で一層強い反発心が芽生えるのは、当然といえば当然ですよね」
上戸彩まで辞めればいよいよオスカー崩壊の危機
スタッフが3割も辞めてしまったとなると、タレントのマネジメント現場や社内実務等の場面で多くの不具合が生じていることは想像に難くない。ある週刊誌の記者はこう明かす。
「昨年来の騒動でキャリアの長い中堅社員がかなりの人数辞めてしまったらしく、受けた仕事を回すだけならまだしも、新規で仕事を取ってこれるような人間が少なくなったので先行きが不安だ、という声を聞きますね。そもそも新型コロナの影響で芸能界はこれからしばらく縮小傾向が続くことが目に見えている。ここから持ち直せるのか、あるいはこのまま沈んでいってしまうのか、今後数年、オスカーは踏ん張りどころかもしれませんね」
この週刊誌記者が語る通り、オスカーのこうした“お家騒動”は、芸能メディアでも盛んに報道されてきた。となれば、芸能事務所にとって“大口顧客”のひとつであるテレビ局との関係にもほころびが見える可能性もあるのだろうか?
「もともとオスカーとの関係が深いのは、テレビ朝日。同局は、『国民的美少女コンテスト』を毎回放送したり、オスカーが強く押すアイドルグループの番組を手がけたりと、長く蜜月関係が続いていました。その延長線上に、米倉涼子の当たり役である『ドクターX~外科医・大門未知子~』があったわけですが、仮に米倉さんの退所でこの人気シリーズがこのまま終わってしまうとなると、テレ朝とオスカーの関係は一気に希薄になってしまうのではないかという声もあります。
とはいえ実際のところ、米倉さんよりもCM出演が多い上戸彩さんのほうが、事務所的には稼ぎ頭なのですが、彼女も古賀さんの寵愛を受けてきた人。いまや、いつ退所してもおかしくありません。
いま、オスカーで勢いがあるのは女優の小芝風花やタレントの藤田ニコルと堀田茜、そしてブレイク直前ともいわれているのが元TBSアナウンサーの宇垣美里ですが、もしも彼女らまでが退所の道を選んでしまうと、事務所存続の危機になることは明白。いま、もはや“少数精鋭”となりつつあるオスカーに残ったスタッフたちが、彼女たちのご機嫌を取ろうと必死に動き回っているそうです。
ただ、古賀さんのワンマン社長時代は、『タレントが売れるとすぐ“社長預かり”という扱いになり、現場のマネージャーは一切の権限を失い何をするにも“社長に聞いてみないと……”という状態になって面倒だ』『米倉涼子や上戸彩に出演オファーをすると、必ず大量の“バーター案件”を要求してくる』など、オスカーの“老舗ならではの強硬策”に嫌気がさしていたメディアの人間も多い。今回の一件は、事務所として生まれ変わるチャンスかもしれません」(同週刊誌記者)
果たして「新生オスカープロモーション」は、この現下の苦難を乗り越え、新たな時代を築くことができるのか? 芸能界を動かし続けた老舗ならではの、その手腕に期待したい。
(文=藤原三星)