“コロナショック”が依然として猛威を振るうなか、緊急事態宣言は全国に拡大。4月からスタートする予定だった新ドラマが続々と放送延期を余儀なくされていることは既報の通りだ。
当初は7月から東京オリンピックが始まる予定だったこともあり、「視聴率がオリンピックに全部持っていかれるため、各局7月期のドラマは捨てるつもりでいる。そのぶん、4月期のドラマには予算や人員含め、今年で最も力が入っている」(ドラマ関係者)とまでいわれ、“2020年最注目のクール”になるはずだったという4月期ドラマ。現時点ではまったく予断を許さない状況となってしまったわけだが、あるテレビ誌の記者はこの難局を次のように分析する。
「本来なら、この4月期スタートのドラマで視聴率をしっかり取って、7月期のドラマは実験的な作品などを試す枠にしたかったはず。そのため、4月期はより視聴者を取り込みやすい続編モノが多数ラインナップ。視聴率レースとしては7年ぶりに復活する『半沢直樹』(TBS系)の圧勝だと思いますが、いまオンエアしても前作ほど視聴率が取れるかどうか。というのも、ドラマのなかの半沢がどれだけ窮地に追い込まれたとしても、今や日本はおろか世界中が窮地に追い込まれているわけですから、視聴者にはたいして響かないと思うんですよね。『倍返し』じゃきかないぐらいの疲弊感が国民にはあるわけですから。
今は撮影休止中ですが、もしGW明けまで撮影休止が延びるとなると、もしかして4月クール自体の放送をがとりやめになるかもしれません。仮に5月からスタートできたとしても、6月末までに最終回を迎えることは非常に難しく、全話を縮小せざるを得ない。『半沢直樹』は平時に放送したら確実に高視聴率を叩き出すはずなので、テレビ局側からすると縮小させるのも避けたいはず。オリンピックも1年延期になったことですし、いっそのこと7月期スタートのドラマとして仕切りなおしたいというのが正直なところでしょうね。ただ、スポンサーや7月に待機しているドラマなどとの兼ね合いを考えると、あまり現実的ではないですが……」
木村拓哉みずから撮影中止を提案か
『半沢直樹』と同様に注目を集めているのが、木村拓哉主演の『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)。こちらも前作の評判が上々なため、2年ぶりの復活となったわけだが、同じく初回放送の延期が発表済みだ。ある制作会社ディレクターは次のように語る。
「テレビ朝日は、看板番組である『報道ステーション』でメインキャスターを務める富川悠太アナの新型コロナ感染が発覚したあと番組スタッフへの感染も判明、本社ビルの全館消毒が決定され、現場社員に対してもオフィスへの立ち入り禁止を強いることに。局内の雰囲気としては、『ドラマの撮影再開などあり得ない』といった感じです。
また、木村さんはスタッフの健康被害を憂慮し、どこにも先駆けて撮影中止を提案したといいます。『BG~身辺警護人~』はボディガードものですし、要人や敵と密接、密着せざるを得ないバトルシーンも相当多い。ドラマの撮影現場では、ストーリーにかかわらず“3密”状態が生じるのは普段から避けられないわけですが、同作はそのなかでも密着度の強い物語であり、さすがの木村さんも危機感を募らせているのでしょう。
それに加えて、外ロケが基本できないのもかなり痛い。『半沢直樹』は会社が舞台のためまだセットでいけるところが多いですが、『BG~身辺警護人~』の場合、要人のボディガードのシーンなどは確実に外ロケですし、相当数のエキストラも必要。となると、まず緊急事態宣言が解除されるまでは撮影再開は難しいでしょうね」
いっそのこと『いだてん』の再放送を
また、NHKの大河ドラマや朝ドラの現場でも、今回のコロナ禍によってこうむったネガティブな影響は甚大のようだ。ある芸能関係者が言う。
「大河ドラマも朝ドラもとにかく撮影は長丁場になるうえ、出演者やスタッフが民放のドラマと比べても圧倒的に多いため、なかなか撮影を再開することは難しい。また、『天下の“国営放送”の足もとで感染拡大させるわけにはいかない』と上層部は相当ピリピリしているそうです。
しかし、大河ドラマ『麒麟がくる』は本当に呪われてるとしかいえません。10話ほど撮り終えた後に、沢尻エリカさんの薬物事件が発覚し、降板。代役が川口春奈さんに決まったものの、撮り直しのため放送開始が2週間も延期されました。大河は1年間にわたって放送されますが、ただでさえ2話分が少なくなったのに、このまま撮影再開ができないとなると、撮りだめしている分もあっという間に消費してしまう可能性も高い。
であれば、オリンピックが1年延期になったことですし、いっそのこと『いだてん』を大河ドラマ枠で再放送すればいいのに、と個人的には思います。昨年のオンエア時には低視聴率だと叩かれてましたけど、再放送するならそのぶん初見の人も多いわけで、『いだてん』を“再利用”することでオリンピックへの士気も上がるかもしれませんから。で、『麒麟がくる』は来年に持ち越しで、吉沢亮さん主演で2021年から放送予定の『青天を衝け』は、渋沢栄一の半生を描くといった渋すぎる作品でおそらく誰も見ないため、いっそのこと中止でもいいのではないでしょうか……(笑)」
こんな不穏な意見も出るなか、果たして4月期のドラマは無事に放送されることになるのか? すでに走り始めている“呪われた大河ドラマ”の行方も含め、一刻も早くコロナが終息してドラマ業界が通常運転される日が来ることを心待ちにしたい。
(文=藤原三星)
●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>