早い段階から病院ロケはNGに…芸能マネが語る「新型コロナで大混乱のドラマ業界」
どうも、“X”という小さな芸能プロダクションでタレントのマネージャーをしている芸能吉之助と申します。
これから4月クールの春ドラマがスタートだ……というところでのこのコロナ禍。フジテレビは、この9日に放送開始予定だった石原さとみちゃん主演の“木10ドラマ”『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』の放送延期を発表、TBSもこれに先行して、話題のドラマ『半沢直樹』(主演:堺雅人)等の放送延期を決定しており、今後もこうした動きは続くと見られています。
一方この3月にそれぞれ最終回を迎えた1月クールのドラマは、新型コロナウイルスの影響で在宅率が上がったためか、後半にかけて視聴率が急上昇したものが多かったですね。
竹内涼真くんの熱い演技が光った『テセウスの船』(TBS系)は、初回11.1%→最終回(3/22放送)19.6%、佐藤健くんが世の女子をキュンキュンさせまくった『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)は初回9.9%→最終回(3/17放送)15.4%と、どちらも視聴率爆アゲ!(視聴率はいずれもビデオリサーチ調べ、関東地区/以下すべて同)
内容が面白かったのはもちろんですが、コロナ不安が広がっている世間の空気が、家の中で楽しめるもの=テレビに対しての熱中度を上げていったという側面は大いにあるでしょうね。この自粛ムードの中、家で心おきなく楽しめるドラマの放送を唯一の楽しみにしていた方も多かったのではないでしょうか。
早い段階から「病院ロケ」はNGに
実は少し前までは、ドラマ界での新型コロナの悪影響ってそんなにないように感じられていたんです。音楽や演劇と違ってドラマの撮影においては、不特定多数の一般人が一カ所に集結するって基本的にないですからね。
もし強いて挙げるとすれば、病院でのロケ撮影が結構早い段階でできなくなっていたことでしょうか。日本国内ではまだここまでの大事にはなっていなかった2月から3月上旬くらいの時点ですでに、感染拡大防止のためということで、ロケ撮影をNGとする病院が増えていたんです。医療系ドラマに限らず病院というのは、さまざまなシーンの撮影において非常に重要なロケーションですから、関東近郊にはいくつか、平常時であればロケ撮影に協力してくれる病院というのがあるんです。しかしそういった病院での撮影が続々とNGになり、いくつかのドラマではやむなく、どうしてもリアリティは減ってしまいますが、スタジオを使ったりセットを組んだりしてしのいでいる……という情報は、ぼくの耳にも入ってきていました。
しかしとうとう、ヒーロー戦隊ドラマ『魔進戦隊キラメイジャー』(テレビ朝日系)で主役を演じている小宮璃央くん、そして著名脚本家の宮藤官九郎さんなど、新型コロナ感染を発表する芸能人が現れ、一気に芸能界にも不安が広がりましたよね。
そうしたコロナショックの直撃を受けているドラマのひとつが、3月30日(月)にスタートしたばかりのNHK連続テレビ小説『エール』(NHK総合)ではないでしょうか。
志村けんの遺作となってしまった朝ドラ『エール』
『エール』は、夏の甲子園大会歌「栄冠は君に輝く」や1964年東京五輪大会の開会式で使用された「オリンピック・マーチ」などで知られる、昭和を代表する作曲家・古関裕而とその妻をモデルにした作品で、主人公を窪田正孝くん、妻役を二階堂ふみちゃんが演じています。
演技力に定評のある若い2人をメインに、名曲盛りだくさんの明るい雰囲気のドラマになりそうな感じなのですが、その撮影現場のほうは現在、暗く重々しい雰囲気に包まれているようです。3月30日、日本中に衝撃と深い悲しみをもたらした、新型コロナによる志村けんさんの訃報(実際のご逝去は29日午後とのこと)。朝ドラ初出演となる志村さんは、主人公が尊敬する日本音楽会の重鎮という、作曲家・山田耕筰がモデルとなっている役を演じることになっており、3月6日までは撮影にも参加されていたそうです。
『エール』が志村さんの遺作となったこともあり、Twitterなどには「志村けんさんの出演シーンは、代役で撮り直さずそのまま放送してほしい」という声が多数。その後、NHK『エール』公式Twitterなどで、収録済みのシーンについはそのまま放送する方針が発表されました。
さらに4月1日には、NHKが新型コロナ感染拡大予防のため、『エール』と大河ドラマ『麒麟がくる』の収録を当面見合わせることを発表。今のところ放送に影響はないとのことですが、『エール』は、当初脚本家として執筆予定だった林宏司さんが途中降板したこともあり、もともと撮影が遅れ気味だったそうなので、今後の放送がどうなるかはちょっと読めませんね……。
朝ドラを降板した脚本家とNHKとの間の“齟齬”
昨年11月に発表された、脚本の林さんが降板した件については、いくつかのメディアによってその内幕が報じられた通り、物語の方向性などでNHK制作陣との間に齟齬が生じたということらしいです。林さんは『ハゲタカ』(2007年、NHK総合)や『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』(2008年、フジテレビ系)など数多くの人気ドラマを手がけ、今年1月クールの天海祐希さん主演『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』(日本テレビ系)でも脚本を担当されていました。
NHKって、もともと脚本家をものすごく大事にする局なんですよ。だから、何か意見の対立があったとしても、それは作品をよくするための議論であって、脚本家の先生をぞんざいに扱うなんてことは基本的には考えられません。ということは、双方とも譲れないような決定的な何かがあったんでしょうね……。
三池崇史監督が予言した窪田正孝の「10年後」
しかし、今回の『エール』を見ていてあらためて思ったのですが、窪田正孝くんの仕事選びって本当に面白い!
今年に入ってから『ファンシー』(2月7日公開)、三池崇史監督の『初恋』(2月28日公開)と出演映画が2本立て続けに公開されましたが、そのどちらもかなりブッ飛んだ作品なんですよね。
『ファンシー』は、マンガ家・山本直樹氏のマンガが原作で、永瀬正敏さん演じる彫師の郵便局員と、窪田くん演じる詩人のペンギンの奇妙な友情と三角関係を描いた作品……なんですが、すごく、エロスでバイオレンスでマニアック! 万人にオススメできるメジャーな感じではないけど、面白かった。
『初恋』は、窪田くんの出世作となった『ケータイ捜査官7』(2008年、テレビ東京系)に彼を抜擢した三池崇史監督の作品。三池監督は、『ケータイ捜査官7』のときに「10年後に窪田を選んだ理由がわかる」という発言をしていたんですよね。この10数年で着実に力を積み、押しも押されもせぬ人気俳優に成長した窪田くんと三池監督が再びタッグを組んだのだと思うと、それだけでなんだか胸がアツいですよね。
歌舞伎町を舞台に、ヤクザの抗争に巻き込まれた余命わずかなボクサーというのが窪田くんの役どころで、こちらもかなり過激な内容。ベッキーのキレっぷりや染谷将太くんの濃いキャラなど、他の出演者の演技も話題になっており、カンヌ国際映画祭でも注目を浴びていました。
窪田正孝、出演作品の“選球眼”
こういうチャレンジングな作品と、朝ドラのようなメジャーに向けた仕事をしっかりと両立しているのが、窪田くんのすごいところ。
きっと、彼についている事務所(スターダストプロモーション)のマネージャーさんのセンスがすごくいいんだと思いますね。ちなみに、1月クールの『テセウスの船』で大量殺人を企てる小学生役を怪演して大注目された柴崎楓雅くんもスターダスト所属。スターダストは、演技力のある子を見出して育てるのがホント上手いんだよな〜!
出演する作品選びには窪田くんの意向もだいぶ入っている気がするし、どういう基準で選んでいるのか、機会があればぜひ本人に聞いてみたいですね。芸能マネージャーとしては、そのあたりが大変気になります。
トラブル続きで嵐の船出となった『エール』ですが、窪田くんならきっとタイトル通り、日本を勇気づけるドラマを作り上げてくれるはず。期待を込めて応援しています!
(構成=白井月子)